ゾンビ映画の元ネタになった元祖ゾンビ小説!『アイ・アム・レジェンド』 - アイ・アム・レジェンドの感想

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アイ・アム・レジェンド

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ゾンビ映画の元ネタになった元祖ゾンビ小説!『アイ・アム・レジェンド』

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
4.0
設定
5.0
演出
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目次

SF小説の名作であり、娯楽小説としても今読んでも無類に面白い

『アイ・アム・レジェンド』は最近ではウィル・スミス主演で映画になったことでも知られているのでタイトルだけは知っている人は多いかもしれません。しかしながら『アイ・アム・レジェンド』の実写化はそれ以前にも2回行われていました(『地球最後の男』、『地球最後の男オメガマン』というタイトルで日本では公開されました)。また、小説も1954年に発売されて以来、日本でも何度も再発されていて、そのためにタイトルが変わっています(『吸血鬼』『地球最後の男』など。『アイ・アム・レジェンド』はウィル・スミス版の映画が公開されたときに再発されたときのタイトルです。オリジナル版の『I am legend』をそのまま日本語にしたタイトルになりました)。こういうことからもいかにこの作品が時代を超えて評価されてきたことがわかります。なぜならばこの作品は普遍性のある深いテーマを持っていながら、同時にホラー、アクション、サスペンスとしても手汗握る面白さを両立しているからです。そしてその面白さは三作作られた実写版のどれよりも飛び抜けて面白いものです。今読んでも全く古びた感じがしない、どころかものすごく新鮮な感じもするのが凄いところです。それからこの作品が今に至るまで様々な映画、コミック、ゲーム、小説などに影響を与えたことは非常に重要です。この作品はポップカルチャー全体に影響を与えたと言っても過言ではありません。

ゾンビ映画の生みの親の生みの親

ゾンビ映画の元祖といえばジョージAロメロ監督が作り上げた『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』ですが(それ以前にも「ゾンビ」が出て来る作品はありましたが、今我々がゾンビと思い浮かべているそれは『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』から始まりました)、しかしジョージAロメロは全くのまっさらな状態から「ゾンビ」を思いついたわけではありません。ロメロはこの『アイ・アム・レジェンド』を読み、そしてものすごく影響を受けたことを公言しています。それもそのはずで『アイ・アム・レジェンド』に登場するウィルスの影響によって凶暴化してしまった人類「吸血鬼」は今読むとゾンビそのものにしか見えないのです。主人公はその中で唯一人生き残ってしまった人間です。「吸血鬼」は太陽の光に弱く夜にしか行動できないので、夜な夜な自宅をシェルターのように強化して「吸血鬼」からの襲撃に備えています。主人公は食料を集めたり、寝ている「吸血鬼」を駆除するために昼間は外に出て捜索をするのですが、捜索しているうちに日が暮れてきて起き出した「吸血鬼」から逃げて家に辿り着かなければならないというサスペンスはゾンビ映画のサスペンスに非常に似ています。また最近の作品で「走るゾンビ」というのが登場していますが、『アイ・アム・レジェンド』の「吸血鬼」は非常に凶暴であり、容赦なく猛ダッシュで襲ってくるのです。また、「ゾンビ」に限らず、人型の理性を失ったモンスターというのはゲームやコミックにもよく登場しますが、(例えばゲーム『フォールアウト』シリーズにおけるフェラルグールなど)そういったものはすべてこの『アイ・アム・レジェンド』という一つの作品の影響を受けていると言ってもいいでしょう(または『アイ・アム・レジェンド』に影響を受けた作品から影響を受けた可能性も考えられますが)。

ネタバレ厳禁。未読の人はすぐ読むように。

この作品のテーマはラストに明らかになります。しかしながらこのラストは絶対に知らずに読んだほうが絶対に驚きますし、知らないほうが面白いです。ネタバレせずにどういうことが起きるかを言うならば価値観の転換が起きるのです。この価値観の転換というのは我々が生きる現実世界でも度々起こっていることで例えばクーデターなどにより政権が交代し、その国の価値観がいっぺんに変わってしまうというのは歴史上少なくないことです。この『アイ・アム・レジェンド』はその価値観の転換を個人の視点からSFとして描いた作品と言えます。またウィル・スミス主演の映画版ではこのラストはひどい改変がなされていて、普通のハリウッド映画的なハッピーエンドのオチになっていたのでウィル・スミス版の映画を見た人も小説版のラストには驚くと思います。そしてこのラストによって初めて『I am legend』というタイトルの意味が分かるようになり(映画版にあたってタイトルが原語版と同じになったのは良いことだと思います)、決してハッピーエンドではないですが震えるような感動があることでしょう。普通のゾンビ映画においてもここまでツイストが効いた作品は少なく、しかもそれが「元祖」であり「古典」であるなんて信じられません。作者のリチャード・マシスンは娯楽要素の強いホラー・SF作品を多く手がけていますが(また『トワイライトゾーン』などのTVシリーズや映画の脚本も多く手がけています)、ハラハラドキドキするような面白さと同時に深いテーマを読者に突きつけてくる類まれな作家なのです。

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