ヒロインが嫌 - BLUEの感想

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BLUE

3.003.00
画力
3.50
ストーリー
2.75
キャラクター
2.75
設定
3.00
演出
2.75
感想数
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ヒロインが嫌

3.03.0
画力
3.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
設定
3.0
演出
3.0

目次

豊かな島の雰囲気はいいのにね

自然豊かでアットホームな島。そしてビルに囲まれてるせいなのか、ちょっと冷たい感じのする東京。それぞれの土地で起こる出来事の違い。そしてその感じ方の違いがうまく表現されている。山、海、川は、人間が感じている感情や、余計なことをリセットしてくれるパワーがある。だからこそ、迷った時には行きたくなる。別に都会に住んでいようが田舎に住んでいようがあまり関係なく、自然とその空気や流れる時間を求めてしまう。そういう気持ちは絶対理解できるから、人間は自然に逆らえるものじゃないって考えさせられてしまう。

そういう場所では、なぜか素直になれてしまう。そして、そこに住む人間も素直である気がする。誰かに思いを告げるときも、どす黒い気持ちを吐き出すときにも、何も言わずにどーんと構えていてくれるから、美海だって島に帰ってこようと思えたわけだ。

ところが、やはりどこにいようが人間というやつは難しいもので…幼なじみのヒカリ、菫、陽介、美海でも、時間が経ち、経験したものの違いによっては心が離れてしまう…母親に愛されなかったことは美海のせいじゃないかもしれない。それでも、自分の身を削って助けてくれるほど、人間って優しくない。本当の愛なんてある…?まぁわからなくはない。それでも、せっかく綺麗な青い景色が広がっているのに、自分のことばかりで他人に目のいかない人間では、美しさを正しく受け取れないのだよ。暗い物語の始まりだ…。

ヒーローの苦労が絶えない

美海が好きだという気持ちしかないヒカリ。彼は本当にまっすぐで、美海の苦しんでるところも全部引き受けてくれるという器の広さを持っている。しかし、美海は、余計なことをごちゃごちゃと考えまくり、せっかく付き合い始めたのに別れてしまう…女ってやつは、本当にめんどくさい生き物で、客観的にみればおかしいと感じるのに、それでも女であればこの気持ちがわからなくないという…不思議な生き物である。母親のこと、陽介のこと、菫のこと、そして自分の進みたいと願う進路のこと…すべてが、「美海自身がその相手からどう思われるか」であり、ヒカリのことが抜け落ちているのである。これでは、失っても仕方がない。美海は、男からチヤホヤされなかったことがないので、わからないのではないか…?なんていう黒気持ちすら芽生えるほどだ。

何年間も想い続けて誰ともつき合わなかったヒカリに、どれほどの苦痛を与えたのか。それが見えていないまま、陽介ともなんか怪しくなるし…基本的に、主人公に感情移入できないパターンだと、どうもモヤモヤしてしまう。こんなやつもいるよね、とは思うが、ヒカリの事しか見えていない菫もまた菫で…腹黒い。憎しみに憎しみで返してしまったような女。こいつもまた黒い。…いい女って、いったい何だろうね。

ヒカリみたいに、何かハンデや苦しいことがあったとしても、それでも近くで笑いあえる関係でありたいと、そう願える人と生きていきたいとは思う。そういうふうに大切に関係をつくっていきたい、という気持ちにはさせてくれた。

ずっと狙っていたのか陽介

確かに、陽介はイケメンだった。常に落ち着いていて、何も言わないようだけれど要所でポイントを押さえた言葉をくれて、確実に相手にとって助けてほしいところで助けをくれる。美海と陽介が付き合い、菫をヒカリがつき合えば話は簡単におさまったわけだが、それではやはりヒカリがかわいそうすぎるため、ヒカリにとってのハッピーエンドであったことは本当に良かったと思う。もちろん、陽介だって美海が初恋だったわけで、気持ちがないわけじゃなかったけれど、どちらかというと友だちに対する同情の気持ちも多かっただろうし、大好きな人に幸せであってほしいと願ったからこその行動だったのだろうと思うから、陽介にはもう一度年上の強くたくましい女性を狙ってもらいたい。

陽介に似合う女性像は、陽介がリードするのでなく、甘えることのできる人物だといいなと個人的には思っている。彼は気苦労が多すぎて、好きになる相手が絶妙に手の届かないところにいる人ばかりのように思う。傷をなめあうような関係ではなくて、癒しあえる関係を築いてほしいと思うし、もっと肩の力を抜いた生活をさせてやりたいものだ。美海みたいにどうしようもなくかわいそうな感じの相手に対する庇護欲なんかじゃなくて、純粋にその人間を好きになって、もうちょっとがむしゃら感が出て、一生懸命に熱くなれるような、そんなサイドストーリーがほしい。

ところでヒカリも陽介も、名前はどちらも太陽っぽいイメージのあるものだが、深い意味はあるだろうか?ヒカリはチャラさと明るさを持たせるためかなと思うが、陽介はダークな雰囲気があるし、対照的な名前でもよかったのでは…?と思う。結局は、美海にとってもどちらともが光であり、自分を輝かせてくれるものであったので、そこを考えるとネーミングは絶妙だったかもしれない。

美海の良さって何

美海のどこがいいか。それはもうかわいいからではないだろうか。

かわいい女が泣いていれば、守ってあげたいと思うのが男。うざ…と思うのは、少し男として理性的すぎる。母親に愛されず、田舎から出てきて東京の学校にはなじめず、途方に暮れていた彼女に愛をくれた学校の先生。でもそれは愛ではなかった。自分だけのものがほしかっただけのイケメン教師野郎だった。

悲しみを抱えてホームグラウンドに戻った美海には、大いなる愛をくれるヒカリがいた。そんなヒカリに甘えすぎるのもどうかと思うが、菫を理由に離れようとするなど、行動は訳がわからない。愛されたいなら、愛すしかないというのに。そしてまた東京へ逃れ、今度は陽介からのアプローチに翻弄された…いや、実際は、翻弄しているのが美海のほうなのである。自分が動くことによって、どんな結果をもたらすか。そこを考える余力がなさすぎて、自分本位の行動になっているのである。さっぱり魅力が伝わらないため、母なる大地のような愛をくれるヒカリとしかうまくいかなそうなのは明白だった。

つまりは、美人ならいろいろと大丈夫なのである。少し謙虚なところがあれば、多少のわがままは許されてしまうのである…得だな。純愛を貫いたのはヒカリであり、美海ではない。すべてはヒカリのおかげであり、美海はあっちこっちとフラフラしたあげく、戻ってきたのである。

最後まで腹落ちしなかった

全面的にヒカリの愛によって物語は終結したが、そこに至るまでの諸々の出来事には、あまり共感できていない。時には言葉を選ぶことも必要だが、付き合い続けていくうえで大事なことは、多少傷つくことはあったとしても、伝え合わなければならないと思うからである。

美海が、終盤に心を入れ替えて、自分と向き合うこと、そして大切な人を傷つけないために行動することを自分の意志で選べたのだとしたら、成長物語だったということで落とし前をつけることもできたが、ここまでただ泣いてりゃ誰かが助けてくれるなんていう甘いことをほざかれると、正直ドン引きである。

良かったところは、とにかく男はかっこよかったこと。自分が大切だと思う人に対してどう行動するべきか、一生懸命考えて選んでいるのがよかったし、本当に希望の途切れるところまで諦めずにいるその姿勢が良かったと思う。

自分の行動が誰かの気持ちに及ぼす影響だったり、自分が本当はどうしたいのかということから逃げないことが、生きていくうえでとても大事だなーと感じる物語であった。

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他のレビュアーの感想・評価

主人公の右往左往が悲しい

島っていいよね島と東京。田舎と都会。ホームとアウェイ。対比としてはいい感じだなーと思います。島っていいですよね~…人は悩むと海を見る。自分が小さいことを思い知らされたり、癒されたり、さざ波の音に嫌なことも楽しいことも流れていく。で、別れ話を切り出すシーンにも、告白をしたいときにも、海ってピッタリなんですよね。なんでこんなに使われるんでしょう?森と海はともだちって言いますけど、森は暗くて影になることが多いし、海は世界がひらけて光の象徴である場合が多い。そう考えると、海って、「何も隠せない場所」って気がしてきます。だから、ポジティブでもネガティブでもどっちでも、正直な気持ちを打ち明けるのに適しているというか。さらに言えば、海はどこかと必ずつながっていて、離れていても近くにある気がしてくる。距離感覚を麻痺させる役割もある気がします。濡れ場にもよく使われるもんね。とまぁ「BLUE」というタイトルか...この感想を読む

3.03.0
  • betrayerbetrayer
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