ふらいんぐうぃっちのレビュー
青森×高校生魔女のほのぼの物語
舞台はふらいんぐうぃっちの作者・石塚千尋さんの故郷である青森県弘前市。主人公は横浜から青森の倉本家にホームステイしてきた、高校1年生の「真琴」。見た目は一見普通の女子高生である真琴だが、実は「魔女」である。何かが起こりそうなこの設定だが、結論からいうと、何も起きない。派手なバトルシーンや色恋沙汰など一切ないため、「○○と○○が因縁の仲で〜」とか「○○と○○は恋人で〜」とか、これといって特筆する設定もない。しかし、それがこの漫画が持っている魅力のうちの一つではないかと私は思う。何も起きない平和な日常の中にもちょっとしたイベントやトラブルがあって、ファンタジーではありつつも、作品の中に没入できる不思議なリアルさがあるのだ。「魔女」という設定はわりとありふれていると思うが、ふらいんぐうぃっちがアニメ化されるほど一躍有名になった理由は、ファンタジーあふれる「魔女」という存在と、現実味あふれる「田舎の日常」を作者が見事に融合させたからではないだろうか。マンガというのは、どうしてもファンタジーか日常に片寄りがちだと思うが、ふらいんぐうぃっちに関していえば、そのバランスが見事に取れていて、「何かありそう」と感じられるのである。
今回は、そんなふらいんぐうぃっちについて語ろうと思う。
登場人物
よく出てくる登場人物のみ、ざっと紹介しようと思う。
木幡真琴・・・この物語の主人公。魔女。高校1年生で、魔女の修行をすべく横浜から青森に引っ越してきた。親戚の倉本家にホームステイ中で、物語はこの倉本家を中心に展開される。容姿はお尻の下まである長髪・黒髪で、前髪パッツンである。魔女であることをクラスメイトの石渡那央にうっかりバラしてしまうぐらいの天然ぶりで、基本的に危機管理能力は低い。ネコの使い魔「チトさん」が相棒。魔女なだけあって、ネコ語が分かる。
木幡茜・・・真琴の姉。色黒で活発。たまにテレポートでよく分からないマニアックな国に放浪していたりする。倉本千夏に師匠と慕われるほど魔女としては優れている。
倉本圭・・・真琴の親戚。容姿は黒髪で、耳が隠れるくらいの長さ。真琴とは同い年で、フツーの漫画なら色恋沙汰に発展しそうだが、そんな気配はみじんもない。寛容で面倒見がいいためか、よくいじられる。愛されキャラ。
倉本千夏・・・圭の妹。小学生で、好奇心旺盛。黒髪で二つ結び。普通の人間だが、木幡茜に弟子入りし、魔女になるためほどよく修行中。何にでも興味を持ち、チャレンジするがとばっちりをくらうことも。
石渡那央・・・真琴の親友。真琴が魔女だということを知ったときはかなり動揺していたが、受け入れてからは目の前で起こる不思議現象をそれが当たり前かのように見るようになった肝っ玉の持ち主。茜からは倉本圭とデキてると思われているため、圭とセットでいじられる。酒屋の娘。ちなみに、父ちゃんからも圭とデキてると思われている模様。容姿は茶髪で肩くらいまでの髪の長さがあり、話ごとに髪型が変わるおしゃれさん。
犬養さん・・・秋田出身の魔女。茶髪のショートボブで秋田美人。あることがきっかけで昼間は犬の獣人になってしまう、逆狼女となる。占いが得意。性格は優しくて穏やか。
ふらいんぐうぃっちの魅力
ふらいんぐうぃっちの魅力の一つに、田舎ならではの自然豊かな風景と、そこに暮らす人々の日常の描写がある。作者の石塚千尋さんはこのふらいんぐうぃっちを描くにあたって、「嘘っぽくならないように現実世界をしっかり描きたい」と言っており、実際漫画に出てくる背景などは青森にある現実の景色なのである。そして、その馴染みのある背景の中にさりげなく魔女や使い魔、さらには精霊や幽霊が出てくるから、何だか本当にありそうだと感じられるのだろう。ちなみに石塚さんはこうも語っている。「“上手い”じゃなく、“売れる”絵を描こう、それをだれにも負けない強みにしようと決めました。」その狙いは見事にヒットし、そのむつこすぎないシンプルなキャラクターの線は見ていて疲れないし、どの年代でも受け入れられる作画であるといえる。
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