後世に残したい良い漫画
この漫画を読んだきっかけ
私の母は広島出身です。太平洋戦争の時は広島にいなかったので被爆はしていないのですが、私が小さい時から祖母の家に遊びに行くたびに原爆資料館や原爆ドームによく行っていました。
この漫画のアニメ映画が公開されていることや私の大好きなのんちゃんが声優に初挑戦したことは知っていてアニメオタクの人から良い映画だから絶対に観た方が良いと聞いて観に行こうと思っていました。
そんな時に新聞の本の宣伝欄にこの漫画が載っていました。映画のポスターの絵でしたがすずさんがタンポポを持って微笑んでいる絵が何とも可愛くて魅力的だったのですぐに注文をして取り寄せました。
読みやすい
戦争、原爆、と聞くと生々しく読むのがつらいという印象がありますが、この漫画は全然違います。
すずさんが小さい時から物語は始まり、江波に嫁に行って、嫁に行った先での喜び悲しみを淡々と描いています。主婦としての日常がベースにあるので、現代の私でもああわかるわかると共感しながら、すずさんのドジっ子ぶりにクスリと笑いながら物語に引き込まれていきます。
こうの先生の描き方は不思議で当時の広島、江波の風景がよくわかる綿密な絵なのに線が細いからか、くどくなくあっさりとしています。物語も戦下時の一人の主婦の壮大な話なのに読み終わった後は爽やかささえもあります。トーンを極力使わない手法らしいのでそれが功を奏しているのだと思います。
すずさんが小さい時からのエピソードも大人になってからの話に繋がっていて点と点が繋がる発見もありすごくよく考えられた深い話で最初から終わりまでが計算されているかのように感じます。絵も、描写も、ストーリーも素晴らしいです。読み返す度に新しい発見があります。
すずさんが愛らしい
こうの先生は漫画家でもありイラストレーターでもあるそうです。あっさりした絵柄とすずさんの可愛さはそのせいかな?特にドジを踏んだ時のすずさんの表情が可愛いのです。キラキラした目の最近のとんがった顔が多い少女漫画を見慣れていたせいか、こうの先生の絵のタッチは新鮮でした。すずさんはこう思っているのかなあと読者が考る余白があります。どこかほんわかした温かみがあります。男性漫画雑誌に掲載されていたのも頷けます。
ドジでも、戦時中でも、戦後でも、どんな時もいつも一生懸命なすずさんだから応援したくなります。戦争が日常生活を変えていく様子や心と身体にどれだけの傷を負わせるのか等、悲しく考えさせられますが、それでも周りの人と支えあって生きていく人間力、生命力、希望は現代の私達も同じです。
今いる所で私も一生懸命生きていこうと思った作品でした。
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