中華料理にこんなに魅かれるとは - ボクの妻と結婚してください。の感想

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ボクの妻と結婚してください。

4.004.00
文章力
5.00
ストーリー
3.00
キャラクター
2.00
設定
3.00
演出
2.00
感想数
1
読んだ人
1

中華料理にこんなに魅かれるとは

4.04.0
文章力
5.0
ストーリー
3.0
キャラクター
2.0
設定
3.0
演出
2.0

目次

ありえそう、だからこそ

子供の教育に熱心すぎる母親、家庭<仕事の父親
自分に、身近に、お隣のご家族にありそう。そんな設定だからこそ
読み物としてでなく一映像として自然に自分に入ってきました。
勉強をする我が子の机にぴったり張り付いて口を出す母親
場所はリビングでも、子供部屋でも。
仕事が上手くいかなくて安っぽいデスクで頭をかく父親
周りは書類の山。
何なら私の実家も勉強!勉強!と口うるさい母に、
仕事ばかりで深夜まで家にもどらない父の組み合わせでした。
当時はどちらもうとましく思っていたように感じます。
今、結婚して我が身になってみると
子供の将来を想い口うるさく言う気持ちや、
家族を想い深夜まで仕事へ打ち込む気持ち、どちらも分かります。
ありえそう、ありえる、自分に落とし込める
どちらの気持ちも共感できる。そんな狭間で読み進めました。

あー、今夜は旦那と中華料理食べに行こうかな

いつもの中華料理屋で食べる中華。
これがそんなに家族の幸せを象徴する食べ物になるとは
細かい描写に幸せがにじみ出ます。
いつもはほとんど話さないけど
たまには旦那と中華料理でも食べようかな
そんな幸せな気持ちになりました。
『安くて美味しい中華に行ったとしましょう。
一人だとラーメンを注文。
付け加えたとしても餃子かチャーハン、
追加は一品が限界です。
でも、結婚すると2倍注文ができる。
まず、前菜に腸詰めを頼んで、ビールで乾杯。
その後、餃子もいけちゃう。
そして、ラーメンとチャーハンを頼んでも2人で分ければ食べられちゃう。
その後、杏仁豆腐も夢じゃない。
そして、さらに、家族が増えると…』
『家族が増えると、前菜の他に、春巻きやシュウマイにも手が伸ばせる。
それから、チンジャオロースにエビチリ。
野菜が食べたければ、チンゲンサイ炒めも注文できる。
デザートは、メニューを見ながら決をとる。
杏仁豆腐の人、ハーイと娘の声。
マンゴープリンの人、ハーイと息子の声。
一口ちょうだいと一口契約もできる。…』
私はここの場面が一番大好きです。
幸せって無理に言葉にしようとしなくても、映像でなくても
こんなところに現れるものだったのだと感じました。
主人と2人で生きていく人生もいいよねと思っていた私に
家族ってこんなに賑やかで楽しいものなのだと強く感じさせた一節でした。
丁度、このページを読んだ時は新幹線に乗っていましたが
周りのことなんか気にさせずにふふっと笑顔にさせられた瞬間でした。
食べるという人間の三大欲の幸せと家族と過ごすという純粋な幸せが
きれいにかさなったそんな瞬間だったと思います。
この場面が強く心に残る人はごく少数かもしれません。
でも、外食をする、ただそんな普通のことで
人の気持ちを動かすほどの幸せを表現するってすごいことだと思います。

やっぱり、奥さんが一枚上手でしたね

女性のカンって怖いなぁ、笑
女性って強いなぁ、世間のご主人様、奥様は想っている以上にあなたのこと見てますよ
奥さんってなんだかんだご主人のこと考えてる、どんなに憎んでいても
日頃は元気で留守がいいなんて思うけど…
試行錯誤してなんとか余命の間に、奥さんへぴったりの次の旦那様を見つけた!!
これで安心して死ねるぞーーーーーっと心底思ったでしょう。
でも、奥様のほうが一枚、いや二枚も三枚も上手でした
家に帰ってこなくても、仕事ばかりしていても
ご主人のこと、一番よく見ているのは奥様なんだなぁ。
もし自分だったらどうするだろう。
延命措置もせず、自分の次の旦那を探すなんて大きなお世話だって!
それくらい自分でできるわって言ってしまうでしょうし
そんなことしてないで延命措置して一日でも長く生きて欲しい
自分の旦那様でいて欲しいと思うと思います。
あなたが生きてくれさえすれば次の旦那なんていらないのですから。
そんな気持ちを押さえて、敏腕プロデューサーの最期の
プロジェクトを見守れるのか、見届けられるのかと思うと無理のひと言につきます。
奥様はどんな想いだったのだろう。
夫として好きなのはもちろん、敏腕プロデューサーとしての夫を
より愛しているからこそできた行動だと思います。
旦那様の魂胆に気付いていても、気付かぬふりをしてプロジェクトを最後まで見守り
夫を満足の気持ちと共に送り出した奥様に拍手。
再婚する気なんてちっともないけど
最期のご主人のプロジェクトにまんまとのせられたフリをした奥様の姿に
言葉では表せないご主人への愛を感じます。
天国へいった旦那様は自分のプロジェクトのさらに上をいった奥様に
敏腕プロデューサーとして負けた気持ちもあったでしょうが
それと共に、そんな奥様を選んだ自分をちょっと誇らしく想えるそんな幸せな締めくくり。
登場人物が一人亡くなって、欠けたはずの物語
でも最後まで読者の気持ちは欠けずに、むしろみたっていく。
悲しいはずだけど不思議と充実してる、そんな不思議な物語です。
最後まで敏腕プロデューサーとして、夫として生きた父
そんな自由な父をそれ以上の愛で見送った母を持った陽一郎君
きっと真っ直ぐ育つでしょう。
でもお父さんに似てとっぴょうしもないことを思いついては
人を喜ばせる為に一生懸命になれる。
そんな素敵な大人になるのだろうな。

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