安らかな死の演出、これは許されることなのか - チーム・バチスタ4螺鈿迷宮の感想

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チーム・バチスタ4螺鈿迷宮

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安らかな死の演出、これは許されることなのか

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映像
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脚本
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キャスト
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音楽
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演出
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目次

安らかな死に隠された秘密

数々の事件が起こり今ではマスコミの格好の標的とされてしまっている東城医大。経営難も少しずつ回復の兆しは見えてきているが特別愁訴外来、通称・愚痴外来を維持していく余裕がなくなってしまったということで左遷されてしまった田口先生。左遷先は終末医療を専門とする碧翠院、医院長の桜宮巌雄(柳葉敏郎)と妻の華緒(相築あきこ)と娘で姉の小百合(水野美紀)妹のすみれ(栗山千明)の家族で回している病院だった。そこには既に嫌われ者のゴキブリ厚労省こと白鳥圭輔が皮膚科医として居た、何の運命かまたも出会ったコンビは白鳥さんの元に送り付けられた怪文書が本当なのかその真実を追っていく。

2009年から始まった「チームバチスタシリーズ」のテレビドラマシーズン4作品目である今作は、初めて事件の舞台が東城医大ではなく遠く離れた海の見える田舎町。関西テレビ放送開局55周年記念ドラマである今回のテーマは安楽死。バチスタシリーズの中で一番重いテーマとなっている。原作である小説の田口・白鳥シリーズで「螺鈿迷宮」は外伝作品となっており主人公がグッチーではなく天馬大吉になっている。ドラマでも天馬君は出演していますが死んだ桜宮葵(山崎賢人)の友達で医学部を休学し碧翠院でバイトをしているという設定。演じているのは若手俳優の上遠野太洸さん。大まかな設定は小説のままに変更されている箇所は多々あり、このシリーズ4作品目は映画「チームバチスタ ケロべロスの肖像」に繋がるようになっている。

自ら死を選ぶ、それは人間らしく死ぬ為。

今回のテーマとなっている安楽死とは、簡単に言えば人や動物を苦痛なく殺すこと。それはこのまま生かしていてもただ苦痛なだけの状況で痛みなく楽に死なせてあげようという優しさ、治療不可能であったり自らが家族に負担をかけさせまいとしたり人間らしく死ぬ為に自ら選ぶ道でもある。尊厳死という言葉が使われる。その安楽死にも「積極的安楽死」と「消極的安楽死」という二種類がある。前者は医療上の場合患者本人の意思に基づいて致死性の毒物を投与して死に至ること。また意思表示能力を喪失する以前の自筆署名文書などに基づいて投薬すること。後者は救命や回復、維持の為の治療を開始しない、また開始しても後に中止することによって死に至らしめる行為。所謂延命治療をやめるということ。日本の法律では安楽死はまだ認められておらず、積極的安楽死にも四つの条件を満たされなければ刑法上殺人罪となる。四つの条件とは「患者本人に明確な意思表示がある」「死に至る回復不可能の病気・障害で終末期が迫っている」「心身に重大な苦痛がある」「死を回避する手段も、苦痛を緩和する方法も存在しない」この四つ。ドラマ内で白鳥さんは安楽死には反対派であり「安楽死は決して許されるべきものじゃない(第9話)」と言っている。スイスでは1942年には積極的安楽死を認めており、今では安楽死目的に病気でも障害でもない人たちが自殺目的で渡航しているという情報もある。その他アメリカの各州やカナダ・オランダ・ベルギー・ルクセンブルクなどでも積極的安楽死は認められている。私は日本でも安楽死を認めるべきだとこのドラマを観て思った。桜宮巌雄先生は完璧に安らかな死を作り出し死んでいった患者さんたちには大変感謝されたと思う、巌雄先生も「患者を助けたかった」と医者として当たり前とも言うべき理由を述べている。医者として優秀で患者思いの先生だった巌雄先生が最後、全部の秘密を持ったまま妻と葵君と一緒に死を選んだという結果は残念すぎる、でも巌雄先生にとってその最後は尊厳死だったのかもしれない。

コンビの最終章

チームバチスタシリーズでは医療ミステリーも勿論面白さの醍醐味ですが、数々の魅力的キャラクターも私は気に入っています。今作の第一話では北に左遷された速水晃一(西島秀俊)が念願のドクターヘリに乗って登場する。速水先生はチームバチスタシリーズでは特に人気高いキャラクター、速水先生が主要として出演しているのは「ジェネラルルージュの凱旋」こちらはドラマの西島秀俊さんバージョン速水先生と映画の堺雅人さんバージョン速水先生がいますが、個人的にはどちらの速水先生も好き。ドラマシーズン2が放送されていた時と比べれば今では主演を何本も張り、過去には五年も干されていたということも忘れるほど大物俳優となった西島秀俊さんの久々の速水先生は一話だけの登場でも圧巻だった。そしてやっぱり白鳥さん、グッチーのコンビが私は大好きだ。映画へと続く今作のドラマが一応バチスタシリーズの最後。重いテーマとなっていますが今作でも所々に息抜きのように二人の仲の良い掛け合いが観れるシーンは微笑ましい、特に落ち込むグッチーにすき焼きを作り二人で鍋を囲むシーンが好き、グッチーの好みまで覚えている白鳥さんには驚いた。「グッチーは僕の味方だから」と堂々と勝ち誇ったように笑って発言したシーンだけでも”あの”白鳥さんがどれだけグッチーだけには絶大な信頼を寄せているのかが分かる。白鳥圭輔という男は他人の知られたくないことを暴き晒して責め立てるロジカルモンスターだけど実際はその足元は傷つているように見える見せかけの強さを持つ、強いように見えて弱い。逆にグッチーはひ弱で優しいだけが取り柄のように見られ頼りない、でも実際は誰よりも優しさと慈悲を持ち強い心を持つ、弱そうに見えて強い。見た目と中身が比例しない二人、だからこそ二人が揃って初めて難事件の突破口が見えてくる。

出会いは必然か、白鳥さんに利用された一番の被害者であり唯一の理解者であるグッチー、同じくグッチーの一番の理解者であり信頼を置く白鳥さん。この二人がいればどんなミッションでもクリア出来る、完結とは言わずにこれからもこの二人を見続けたいと切に願います。

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今度は終末医療が舞台です。考えさせられますね。緩和ケアなので、痛みを取り除きながら自然な詩を迎えることが皆さんが想像する緩和ケアなのでしょうけど、もし、痛みを緩和できないときどう人として尊厳をもって死を迎えるのが正しい選択なのか。医者として、患者として、家族として。物語の中での田口の考え方、白鳥の役人としての考え方、桜宮家の人たちの過去や葛藤があっての医者としての在り方。患者さんたちの桜宮家の医師特に巌雄への信頼。誰が正しく、誰が正しくないのか全く分かりませんし、きっと全員が正しくて正しくないのかもしれません。実際にホスピスに関わる関係者の人たちには現実とはかけ離れていると思われたり、ドラマだからと思われたりしてしまうところがかなりあるんじゃないかと思います。ホスピスを扱った小説しか読んだことしかありませんが、けっしてきれいごとばかりではなく、死を受け入れることがドラマであがかれている...この感想を読む

4.54.5
  • すずなみすずなみ
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