大人向けのSF作品! 重厚感あるストーリーとその淘汰された魅惑の設定! - コドク・エクスペリメントの感想

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コドク・エクスペリメント

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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大人向けのSF作品! 重厚感あるストーリーとその淘汰された魅惑の設定!

5.05.0
画力
4.5
ストーリー
5.0
キャラクター
3.5
設定
5.0
演出
3.5

目次

まずは見よ!稀代のSF漫画の巨匠・「星野 之宣」の大アクション作品!

この作品は、類まれなるSF作品の巨匠・「星野 之宣」の作品である。

作者を知っていれば、すでにどういった内容かはある程度予想がつくと思う。

当然宇宙と、アクション。そして訴える強いストーリーである。

この作者の作品には、常に人間否定が見え隠れする。

おそらく今の人間の在り方を常に考え、それを漫画として作品に色濃くのせることで、社会に対して反論の声をあげているのだろう。同じ物書きとして、何と羨ましいこと限りない。

そしてこの作品も他に漏れず、そういった内容になっている。

それに屈しないマンガとしての完成度と面白さ。まったくこの人の漫画には驚かされてばかりいる。

緻密で精巧な設定とストーリーに飽きさせない大迫力の漫画力!

自分が初めてこの作品を呼んだのは、父が買ってきた時。小学生の頃であった。

今思うと、なんというものを読ませるのだ!と言いたくもなるほど、この作品は他作に比べて非常に何もかもが厚すぎる。

まず読んでいて、まったく内容が理解できなかった。

SFの基本は全て事前に知っておいてください。と言わんばかりに、この当時の宇宙という概念と現在よりずっと遠い未来という設定を、絵面と雰囲気だけで説明しきっている。

当然、太陽系の星の数も分からない小学生が理解できるはずもなく、こんな本は巡りくる大人になってから読む結果に。

ならなかった。小学生にしてこの作品をきちんと全巻読みふけった。

何故理解も出来ない難解なこの作品を、小学生の自分が読めたのか?

それは、ひとえにこの作品のド迫力にある。

爆発するシーンは、まさに燃え盛る炎と黒煙がメキメキと動くかのようであり、出てくる武器や敵の魅力は、ハリウッドのB級娯楽アクション映画を幼くして観て、アーノルド・シュワルツェネッガーを「シュワちゃん」と呼んでいた自分にとって、まさにその域の迫力を魅せてくれたからだ。

子供心に映画を見て、セリフの意味合いや敵との策略の掛け合いを聞いて、全てを理解できる子供はいない。

しかし、子供は銃や爆発が好きである。

とにかくカッコいいのだから仕方がない。そんな理由で読みふけってしまっていた自分がいた。

描かれるコマ一つ一つの描写と書き込みが素晴らしい。

今でこそ、軽く描かれ、スピード感あるコマ割りの作風が好まれるが、これは相反して一つのコマが非常に重い。とにかく魅せる。

その魅力はまさに、読むハリウッド映画であり、そう表現しても、決して劣らない魅力がある。

物語の面白さが謳う、人間社会へのアンチテーゼ。

更に月日が経ち、この作品の魅力は、自分の成長と合わせて膨らんでいった。

描かれている内容は、宇宙中で起こる、凶悪強烈な生存競争を生き残るために、それぞれ進化した生物たちを一堂に集め、その最たる種を手にすることで、それを兵器化する。という、SFではよくある設定で始まる。

その中にはそれを回収し、その実態を安全に地球まで持ち運ぶために優秀な兵士たちがその回収へと向かっている。

そしてそこに、その実験、「蠱毒(コドク)」の最中に命を奪われた父を持つ息子が乗り込んでいて、彼が主人公となり、危険な生物たちの巣となったシップの中で、人間を加えた、更なる蠱毒を演じなければならなくなる。

というものだ。ここまで書いた概要で収束してしまっては、先に述べた強烈な絵面も宝の持ち腐れになっていただろう。

しかし、この作者はもはや漫画界のSF学博士とも言うべき人間だ。

当然そこには緻密に描かれた設定と、かつ奇抜な化け物が描かれ、その設定を読むたびに、「なんと恐ろしい敵なのだろう!」と胸を震わせた。

事態は進み、最悪の生物の侵入を許したそのシップの中で、人間を取り込むアメーバ状の化け物を退治することに、物語は集中する。

その中で主人公はその生物の攻撃により、化け物化する。

はずだったが、なぜか都合よくその力だけを受け継いで、人間としての理性を保つ。

その実は、その化け物の最初に被害を喰らったのが、主人公の父親だった。

というこれも書いてしまえばまた短絡的に聞こえるだろう。

これも同じく、絵面と設定がきちんと生きてくる。

ここでその化け物が持つ、最も強い武器とは何か?それは繁殖力、生存力であった。

動物が同じ種同士での交尾によって自分の遺伝子を残すために進化を続けているが、この化け物はそんなことをはるかに超越している。

光を浴びせ、その遺伝子を認識させるだけで、その生物を自分の種として取り込めるのだ。

この設定こそ、この作者が語りたかった最たるテーマだ。

人間は武力や社会力、権力知力と、様々なものを物差しにして優劣を付けている。

それは地球上で最も賢い動物の理性としての在り方だと思う。

しかし、生物学的にそれは正しいのか?それがこの作品のテーマであり、それを否定するために生み出されたものこそ、この化け物である。

繁殖を最も重要たる事とし、食べ、育ち、繁殖し、育て、死ぬ。これが生物の基本だ。

なのに人間はどうだろう? 生殖適齢期にはいまだ幼いであったり、環境の変動を怖れそれを逃す。

子供を作らなくても良い。という考えも今では通じる理論である。

自分もそういう考えを安易に否定するほどバカではない。

が、なら生物としてはどうだ?と聞かれると、答えは明白に、「NO」である。

そういった動物からかけ離れていくことへの啓示として、作者はこの作品を描いたのだろう。

そのメッセージ性と迫力のある絵と魅力あるストーリー。

考察を描いていて、すぐにでも読み直したくなる魅力あふれる傑作である。

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