バカップルに逆ハーレムで忙しい
男の子と言えばサッカー
少女漫画に登場するスポーツマン系男子が所属する部活と言えば、野球、バスケットボール、そしてサッカー。この3つは絶対に外されることのないスポーツです。中でもサッカーは、泥だらけになることもあるし、審判にばれずに相手とのコンタクトプレーによってケガをする・させることができてしまう競技。そして、ボールを使って大切な女をいじめる輩を退治することにも活躍。これはもう少女漫画の中でそのケガを介抱するシーンにうってつけなわけです。だって、バスケットボールで剛速球パスをして危険人物を撃退するとか、ダサいじゃないですか。野球のボールで撃退したら殺人級になるし。サッカーボールってなんでこんなにちょうどいいんだろう。バレーボールで剛速球アタック!とかされても、全然かっこいいってならないのに。サッカーボールは持ち歩いてても違和感がないのに、バレーボールを持ち歩かれるとダサさを感じてしまう…まぁ屋外競技なんだし、しょうがないでしょうけどね(どのスポーツも本当に好きなんですが、少女漫画において彼女を守るために使う手段としては、もしかしたらダサさがあるかも、という程度です)。
この「GET LOVE!!」においても、サッカーという競技をふんだんに活かして美樹と相楽の愛は育まれていますね。足が速く、ビジョンが広く、ボールでドンピシャ攻撃が可能。ケガイベントももはやおいしい要素と化しています。
イケメンで人気者の斉木先輩よりも、一生懸命で相手に負けじと向かっていく強い心を持った相楽を好きになった美樹。え?読み切り作品?と思うほどに速攻でお付き合いが始まりました。これはもともと読み切りの作品だった「GET GOAL!!」をもとにしていたからなんでしょうね。
所々にちりばめられたエロス
池山田先生の作品といえば、ちょっとエロいということ。「好きです鈴木くん!!」や、「うわさの翠くん!!」、「小林が可愛すぎてツライっ!!」とかでもそうでしたが、完全にそのシーンも描き出します。そのため、小学生ながらに多少の興奮はあることでしょう。もしかしたらこれは意味がわからないんじゃないの…?とちょっと心配になる要素もちらほら。女の子だったら一度は妄想してしまうようなエロスを、しっかりと体現してくれている気もします。一つ屋根の下展開、ロッカーに閉じ込められてみたり、大好きな相楽のユニフォームを着てみたり…好きな人を前にしては、変態になることだってあるよね…みたいな。
キスシーンなんかは特にドキドキしますね。ふざけていた絵が一瞬で切り替わり、シーンと静かになって綺麗な線で描かれていく。でもオチでは結局みんなに見られているというおバカ展開が毎回忘れられることなく続きます。あっさり付き合って、あっさりうまく愛を育まれてもつまらないしね。
ちょっと嫌だなーって思うのは、そんな簡単に襲われても…っていうところ。漫画の中でのドキドキ展開の演出では大事かもしれないんですけど、あまりに頻度が多いと飽きてくるんですよね。美樹も全然引きずらないし、むしろ相楽の愛を確かめられた…!って喜ぶだけになっている気がするし。もうマネージャーとかやらせないほうがいいと思うよ。そんなに寛大ではいつか損する気がしてならないよ、相楽くん。
男の園に輝くからモテるだけ?
サッカー部という、男だけのむさくるしい環境。この中でマネージャーで女の子が1人いるだけで、まったく空気感が変わってきます。これは、運動部を経験した人ならすごくわかると思うのですが、男の子のロッカールームトークとか、女子からすれば本当にゲスイものもあるので、女子がいるだけでそのあたりが引き締まるというか。部活に清潔感が漂い出すんですよ。
そして、男の園に一輪咲く花というのは、往々にして狙われる。優しくて、かいがいしくて、健気で、気が利いて、一生懸命だったらもう満点。誰がマネージャーと付き合うかって話になる。そして、付き合ったとしたらずっとネタにされる。部内カップルってやつはそういうものです。
美樹だけの魅力って何だろう?って考えたときに、あんまりいいところが思いつかないんですよね。1つだけ言えるとすれば、相楽をただ一生懸命に好きだってところぐらい。後は、どんな女子でも持ってるんじゃない?って思う。そして、部内一のイケメンではなくて、自分だけの王子様として相楽が好きだと言えるところが、周りから見てれば羨望の的になるのかなと。ただその人だけを見ていますっていう女子の輝きって、異様なほどにまぶしいものがあるから、そういう女を欲しいと思うのが、オスってものなのかもしれないです。
自分を守りたいなら、マネージャーはやめといたほうがいいと思う。完全に逆ハーレム狙っていると思われる気がする…。
カップルになってからの前途多難
相楽と美樹は、少しずつ愛を育んで、お互いを好きな気持ちをどんどん大きくしていきます。初めての感情、今までの景色が違って見える感動。そういったものは、初カップルらしく、かわいらしく、描かれていますね。チームメイトのみんなも、なんだかんだ美樹を大事にしていて、相楽を大事に想っていて、本当に思いやりのあるいいチーム。普段のイジリは愛情表現です。
そのままでも十分よかったと思うんですけど、ついに来ました横恋慕。しかもこんなに大量に…全部美樹狙いで、少々うんざりしてしまいました。穂高といい、相楽の弟ヒカリといい、果ては渋谷、加持などなど…多い。多すぎる。そんなに欲しがられる美樹っていったい何なんだ…?相楽ユウキの苦労は絶えません。気づいたんですけど、美樹以外の女の子が全然登場しない…!ヨーコくらいでしょ?ヨーコと松本の浮いた話ももっと必要でしたよ!美樹とサッカーに関わる男どもだけに焦点が当たっているので、そりゃーはたから見たら美樹が誘惑してイケメンたちを手玉にとっているとみられてもおかしくないですよね。どれほどの小悪魔なんだろうと。そして、美樹に何の疑いもなく、ただ守ろうとする相楽のその純粋さ。隙がありすぎると責めない寛大さ。ちょっとまっすぐすぎるほど。これが男女逆転で、女の子が相楽みたいな思考の持ち主だったら、さらにかわいかった気がします。女の子には女の子らしさを求めてしまうあたり、だいぶ私も古き時代の人になってしまったのだろうか…。
斉木先輩の憂鬱
毎回1つは楽しめる、斉木先輩のお茶目シーン。かなりよかったです。美樹を好きになった理由は、昔飼っていた犬に似ていたから…とか、実はある意味バズーカをお持ちであるとか、酒に酔ったら手が付けられないとか、でも大事なところではちゃんとキャプテンであることとか。女子からの一番人気である男なのに、まじめすぎて天然さんなんて…おいしすぎる男。そんな斉木くんには年上か、精神年齢高めの女子が似合うよな~って妄想が働きました。クリスとアケミも楽しかったですが、斉木先輩の憂鬱(自分では気づいていない)という物語もあったらさらによかったなと。矢吹先輩が医師になって美樹と同じ病院に勤務…とかより、斉木先輩のほうが大事や!
全体としてコミカルに、相楽と美樹が少しずつ愛を深めていく物語でした。美樹については解せないところも少々ありますが、かわいらしいカップルだったと思います。池山田先生の他作品にも継承されている人物もいますし、シリーズで読むとなお楽しいでしょうね。
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