花の乱は大河ドラマ最高レベルの名作 - 花の乱の感想

理解が深まるドラマレビューサイト

ドラマレビュー数 1,147件

花の乱は大河ドラマ最高レベルの名作

4.54.5
映像
5.0
脚本
4.0
キャスト
4.8
音楽
5.0
演出
4.0

目次

【名作の理由その1】音楽、映像が素晴らしい

このドラマの時代である室町時代の文化を表すために、音楽と映像にはかなりこだわっていることがうかがえます。私が一番好きなのはオープニングの曲と映像で、三枝成彰氏が手掛けた音楽と、桜や滝など自然を背景に能面をつけた女性が静かに舞う映像です。前半は静かなピアノの独奏と、満開の桜の中で静かに舞うイメージの映像がマッチして室町時代の文化の華やかな部分を想像させます。そして中盤からは、音楽が盛り上がると同時に荒廃した土地に戦で果てた兜が転がる映像など次第に荒々しいイメージで場面が転換し、最後は、また自然の中で女性が舞う映像に戻るのですが、前半とは打って変わって激しくドラマチックな音楽の中で、湖を思わせる水面の上で美しく舞う姿はとても力強さを感じさせこれから始まるドラマへの気持ちを盛り上げてくれます。

もう1つは、室町時代の北山文化を代表する建築物の一つである鹿苑寺金閣で開かれた夜能の映像です。ライトアップされ鈍く怪しい黄金に光る金閣寺をバックにした舞台の上で舞う能の映像と、それを見物する将軍、御台所などの豪華絢爛な衣装のコントラストが印象的で、このシーン1つで室町時代の芸術面での繁栄を感じさせられます。

【名作の理由その2】キャスティングが素晴らしい

このドラマ「花の乱」の主役日野富子を演じたのは、幼少期:村島亜矢香(子役)、少女期:松たか子、そして大人になって以降は三田佳子と3名です。特にこのドラマの主演女優の三田佳子は20歳ぐらいの役を松たか子から引き継ぎ、亡くなるまでの30歳以上の年齢を一人で演じ切っています。現在は息子のスキャンダルなどでほとんどテレビで見かけることが少ないですが、当時は好感度№1で名実ともにトップ女優の地位にありました。このドラマに出演した当時はちょうど50歳ぐらいの年齢だったため、さすがに最初に出てきたときは違和感を感じたが、見ているうちに彼女の演技に引き込まれほとんど違和感を感じなくなったのには恐れ入りました。また、もう1つのキャスティングの特徴としては、なんといっても歌舞伎、狂言など日本の伝統芸能の第一人者たちを集めたそのキャスティングです。主役・日野富子の少女時代を演じた松たか子と、その日野富子の実の父親役を演じた松本幸四郎や、室町幕府8代将軍の青年期時代を演じた当時の市川新之助(現在は市川海老蔵)と、その壮年期を演じた市川団十郎などの実の親子の競演、右京大夫・細川勝元を演じた野村萬斎、日野富子の最大の理解者であり協力者であった山名宗全を演じた萬屋錦之介など伝統芸能界の実力差が脇を固めドラマに重厚感をもたらしています。

【名作の理由その3】登場人物が素晴らしい

私がこのドラマの登場人物で一番好き人物は、日野富子の最大の理解者で協力者であった山名宗全です。応仁の乱における西軍の総大将で、自分の娘ほどの年齢の、将軍御台所である日野富子に絶対の忠誠を尽くす姿は“清々しいの”一言で見ているものの心を熱くさせるものがあります。さらに人望、知略、武力に長け、どんな困難な状況でも常に新しい手を考え解決策を示していく姿は人の上に立つ者の鏡と思えました。日野富子の願いに叶うためには、当の富子自身も欺いてしまうような戦術をとり見ているものを不安にさせながらも、最終的には目的を達成させる行動は痛快そのものでした。

また、この他にも魅力的な登場人物が数多く出てきます。応仁の乱における東軍の実質的な総大将であった細川勝元は、管領として将軍を補佐する側近中の側近で、超エリート役人です。野心の塊で一見利に聡い単なる悪役を思わせますが、ひとたび戦となれば元の武将の血が呼び覚まされ敢然と敵に立ち向かう。また、主人である将軍への忠誠心も厚く、勝元なりの美学で筋の通った生き方は単純にカッコよかったです。

それともう1人は、椿の庄の国人領主の一人である伊吹三郎です。彼は、幼いころの両親に捨てられた日野富子が一休宗純に拾われ、椿の庄の国人領主の元で育たられていた際に、兄妹として育たられ将来を誓い合った仲でしたが、日野家の都合で勝手に富子を連れ去られてしまい離れ離れにされてしまいます。そして長い年月が経ち、将軍御台所と、1人の国人領主として再開した日野富子と伊吹三郎は、お互いへの思いも持ちつつもそれぞれの立場、理想を思い結果としては敵対していく悲しい結果となります。伊吹三郎は国人領主という弱い立場でありながら、当初は富子の立場、自分の立場を思い富子には頼らない態度をとりますが、自らの領地の領民や理想実現の為に止む無く富子の力を借りようとします。しかしながら、領地を管理することにより将軍家の力を保ち、国を統治しようとする将軍家と、百姓が武士から独立しそれぞれで自分たちの自由に領地を運営し領地、領民を栄えさせる理想を持つ国人領主の思いの溝は埋まらず、最後は決別することを選択します。伊吹三郎が、自分たちの理想を守り、将来にわたって日本中の農民が自由に暮らせるようにするために、富子の力に従うこともなく死を覚悟して最後まで戦いぬく姿が印象的でした。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

花の乱が好きな人におすすめのドラマ

ページの先頭へ