秘密、禁断の恋を描いたエム・バタフライ - エム・バタフライの感想

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秘密、禁断の恋を描いたエム・バタフライ

4.54.5
映像
4.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
5.0

目次

全く男に見えない仕草や表情!

主人公ルネがキスをしたり性行為をしようとする際のソンの表情や仕草がとても女らしく、初見ではとても男には見えませんでした。一つ一つの動きに注意している様子が伝わってきて、後半の裁判のシーンでようやく、「ああ、本当に男なんだ」と驚かされるくらいでした。

アジアの女性観について

ルネとソンは劇中何度か性行為を行います。描かれていない部分もあり、おそらく数回は行われているものと推測できます。しかし、行為を行っているにも関わらず、ルネはソンが男であることに全く気付くことがありません。そこには、アジアの女性が持つ「恥じらいの文化」が関係していると考えられます。まず、ルネが服を脱がせようとした際、ソンは「恥ずかしいから」とその手を遮ります。そしてルネもまた、これがアジアの女性の良さなのだと考えその答えに応じ、服を着たまま行為に及びます。ヨーロッパから見たアジアの女性や亜細亜の文化に関する観念が見えてくるようにも感じられました。それを強く感じさせられたシーンが、ルネが別の女性と浮気をする際、ヨーロッパの女性は何も纏わずベットに堂々と寝そべっている所です。ヨーロッパの女性とアジアの女性の観念を対比させ、ルネの思い描くアジアの女性観が強く刻まれたシーンだと言えるでしょう。

ソンの本当の想い

裁判のシーンにて、ソンは自らが男性であり、スパイとしてルネに近づいたことを告げた後、二人が同じ車に乗せられ運ばれるシーンがあります。そこでソンは、ルネにすり寄りもう好きではないのかと震える声で尋ねます。そこから考察するに、ソンははじめスパイとしてルネに近づいていたものの、逢瀬や行為を重ねることで、自らの心が女性寄りになり、結果ルネに本当に恋をしてしまったのだろうと考えられます。実際、車の中で話しかけるソンの言葉遣いは女性のものであり、男同士が話しているというよりは本当に男女が話しているような印象を受けました。

蝶々夫人とエム・バタフライ

タイトルから想像できるように、この作品は有名なオペラである蝶々夫人をテーマとしたものになっている。蝶々夫人において、ヨーロッパの男性がアジアの女性を捨て、ヨーロッパの女性と再婚する描写が描かれているが、このエム・バタフライにも近い描写が見られる。それは、ルネが既にヨーロッパ女性と結婚していることにある。そんな中でソンに恋をし、しかしながら任務完了と共にソンを捨て置き帰国しなくてはいけなくなるというシーンである。だが、このエム・バタフライでは、蝶々夫人を匂わせておきながらのどんでん返しが起こる。帰国したルネはオペラで蝶々夫人を見に通い、ソンへの想いを涙ながらに噛みしめている。しかし、そのソンが実は男であるとしり、強いショックを受ける所にこの映画のポイントがあると考えられる。蝶々夫人でショックを受けるのは女性の方であるが、エム・バタフライで裏切られショックを受けたのはむしろルネの方なのである。この蝶々夫人を題材にしておきながら、でも皮肉とも取れるどんでん返しが非常に面白いと感じられた。

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