バスケットケースにむけて - バスケット・ケースの感想

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バスケットケースにむけて

3.53.5
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
3.5

目次

バスケットケースの中には

ふらりと大きなバスケットケースを抱えて一人目の主人公、ドゥエインはN.Yのホテルに現れる。ホテルの常連は「?」の様子で彼がお金をきちんと持参しているのを知り主は鍵を渡す。

アメリカの北部からなぜかN.Yへやってきたドゥエインの連れとは統合双生児の片割れで異形のベリアルである。私はまずこの舞台が電話機が旧型でタイプライターという職業が存在していたのを面白いと思った。

ホラーでありながらどこかにコミカルな面白いシチュエーションがあって最初の段階では面白おかしいホラーかと思った。そして謎の異形双生児、ベリアルが姿を現すまで時間がかかる。

「そのバスケットケースに入ってるの何なの?」とは私を始め登場人物たちが皆思ったようだ。そして手をだしてみると空だったりホラー現場の始まりだったりする。

最初の段階で早くもドゥエインの恋人候補が現れて彼女こそが彼らの関係の軋轢の発端となるのだ。何も知らないで最初の復習相手のドクターの病院で受付をしていた女性である。

途中途中、アメリカらしいホラーだと思った。そして女性たちは肉感的だ。ホテルの部屋が近い女性はフレンドになっていく気さくな女性でそちらの方が私は好感を持った。

ホテルの佇まいもあれこれ入り乱れるN.Yらしい風物詩を醸し出しているなあ、いそう、こんな人という感じである。

ことの起こりと惨劇のはじまり

ドゥエインはホテルの女性フレンドと飲みに行ってそこにもベリアルを連れて行く。そしてベリアルがバスケットケースに入っている間、言ってはならない事実を語るのである。

それはドゥエインとベリアルの誕生秘話である。私はここまで来る間に常々思っていたのだが、なぜ「そんな兄弟」の言うことを聞いているのか解せなかった。

ベリアルが異形というより、犯行は殺人だし、「兄さんを殺そうとした」かもしれない医師たちだが「兄さん」は死んではいないわけである。

今、横で生きていてドゥエインを巻き込んで殺しを目論んでいるわけだから。「それを」憎むというならわかる気がするが、この辺りでドゥエインも兄リべアルに対する見方が変わりだしていた時だった。

帰ってきて飲み友の女性の部屋へ入ってパンティを盗んだり、さすがは双子、好みや女性への関心の芽生えまで一緒である。

その昔、二人がまだ北部にいた頃、唯一の二人の理解者であった叔母はこの世でたったひとりベリアルを可愛がった人間だった。

異形のべリアルを膝に抱いて物語を読む姿はなんともファンタジ-メルヘンの世界である。真似のできない愛の深さをホラー映画にかい間見るという感じだった。

そしてベリアルは自分を「人間ではない」といいきった父も手にかけ自分たち双子を象徴するように真っ二つに切り殺してしまう。彼らは裕福な家で母の死産によって誕生したのである。

二人の前に現れる女たち

本来ドゥエインの前に現れる女性はベリアルも深い関心があった。フレンドは助かるのだが、本命の女性であり初恋の相手である人は残忍に殺される。

それは恋の不可能なべリアルとそれが可能なドゥエインの差をべリアルが心底知っていたせいかもしれない。ドゥエインは言っていた。「僕に兄さんが脳から話しかける」と。

私も不思議に思っていたのだが、ドゥエインに声はあってもベリアルに声はない。しかし会話ができる。結合双生児という間に生まれるテレパシーらしいのだ。

しかも本命の女性は初対面からドゥエインにぞっこんである。双子でありながら片方は子としても人間としても認められず、殺されそうになり、忌み嫌われる運命にある。

その姿でドゥエインの恋人の前に現れれば恐怖されるのはわかっていたが、ベリアルはドゥエインと彼女がベットで抱き合おうとした時にバスケットケースから現れて二人の間を裂く。

「その存在」に生まれた悲しさが頂点になったかのように。この物語には女性が多く登場する。まるでベリアルの姿と比べられるように美しく彼女たちは登場してくる。そうでなかったのは叔母だけではなかったろうか。

最初から最後までドゥエインが借りたホテルは重要な舞台として登場するが、ホテルの人間模様もキュートなわんさか街を表現していて見ていて飽きないのは私の個人的補足です。

復習を受けるドクター達

しかしもってこれは本来ホラーであり(そんなジャンル分けはどうでもいいかもしれないけど)こわーい恐怖場面も登場する。

最初の医師は殺されるという見当がついてきてじりじり追い詰められる感じで最後はベリアルに血まみれにされて殺される。

医師は防御に出るがそんな抵抗はまるでなんでもないようにバスケットケースに入る大きさのべリアルが怪死させていく。顔を狙うというのがベリアルのやり方のようである。

そして二番目に医師は獣医なのだが、ベリアルとドゥエインの繋がっていた体にメスを入れた人物である。ここでもドゥエインは患者のふりをして、ベリアルを入れたバスケットケース片手に現れる。しかし女性医師はドゥエインが正体を明かしたぐらいではへこまない。

「若造の恨みなんかくそくらえだわ」と本音をぶちまける。しかしこれくらいの根性でないとN.Yで開業できないかもしれないなあ、と妙な感心をする私。

この人もまたドゥエインの殺戮によって残虐な復習を受けるのである。最後には仕事道具のメスが顔に何か所もさされたまま死んでゆく。果たして残酷なのはベリアルかドクター達か。

ここでも「異形であることが殺されるほど罪か」という影の問題がある。しかしドクター達は手術で切り離したベリアルを弔いもせず黒いビニール袋に入れてゴミ置き場に捨てたのである。

結末は運命を共に

最後の顛末ではベリアルはドゥエインの夢で人間の姿となって現れる。そしてドゥエインの恋人の家へと向かうのである。ベリアルの彼女との仲を裂かれて怒るドゥエイン。

ドゥエインもまたベリアルといることで、そして離れるわけにはいかないことで苦悶を味わされてきたのである。ベリアルさえいなければ二人の恋は美しい恋の花が開いた。

しかし無残に「あのベリアル」が出現したことで破局を迎えたのである。恋するドゥエインは恋に夢中のあまりベリアルの存在を忘れていたというか、兄ベリアルを「物」と思ってしまったのではないかなと。「そこ」に置いておいてもなんでもない「物」。

または自分を裏切るはずがないと信じていたのかもしれない。しかし弟ドゥエインの行動にベリアルは憤然と出てきてしまう。そしてまた弟の最愛の女性を恐怖を与えながら殺していく。

最後にベリアルはおそらく愛していたこの世で唯一無二の弟を手にかける。しかしその「時」は自分も一緒だったのだ。彼らは復讐を決意して宿泊していたホテルで共に命尽きる。

最後の最後はホテルの主や住人、街の人々に死んだ姿をさらしながらも、ここが自分たちの死に場所と知っていたかのように。人々は「何かおかしい」と知っていた。しかしそう感じながらも変わらず暮らすしかなかったのである。

バスケットケースは続編もありますのでお楽しみに。いや、楽しいかどうかはわかりませんが。ホラーでありながらも「怖さ」以外のものも伝えているのではないかと思われるホラーです。しかし怖さも伝えようであるとしみじみ感じました。私だったら、どうしたらバスケットケースと上手く離れるかと考えると思いますが、そういえばドゥエインは若すぎますから純真にまた統合双生児の片側にしかわからない思いでとらえてでもいたのでしょうか。

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