お嬢様っぽさがもっとほしい
自由すぎるお嬢様
主人公であるお嬢様、自由すぎます。そりゃーかごの中の鳥で生きてきたのだから、自由を求めるのはわかる。どこかに飛んでいきたい…みたいな気持ち。でも、あまりに元気すぎて、個人的には残念でした。もう少し儚げだったら萌えたなーと思うのです。まだ見ぬ世界への憧れをこう…静かに求めているような感じ。窓からそっと眺めているような雰囲気で、外に連れ出してくれる人を待っている的な。遥とか、他の兄弟の雰囲気に合わせると、もっと知的で無口・静かなほうがイメージに合いました。物語の中で語られる桜姫のお話からしても、本当に個人的な感覚ですが、おしとやかさが欲しかったなと思います。例えばの話ですが、「園芸部に入ってみたい…とかポツリとしゃべったかと思うといつの間にかふらっと畑へ行って作物を大きくさせていた。遥が急いで駆け寄り体調がおかしくなっていないかと詰め寄ると、普段は見られない笑顔がそこにはあった…」なんていうシチュエーションだったら最高。フェロモンももう少し露骨に出ていたら最高でした。そうすれば戌井家のお嬢様一人に踊らされるドキドキ感をもっと感じることができたのではないかなと思います。心優しき一面があるのだから、ただかわいいだけじゃない、女性として・人間としての魅力があれば、もっと応援できたんですが…自由になりたい、遥を大切に想っていることをわかってもらいたい、と押しまくりだと少し萎えます。
戌のちからを受け継ぐ兄弟たちによる逆ハーレム
先祖から受け継いだという戌のたぐいまれなる身体能力。これは単純にかっこよかったです。お嬢様のピンチがどこからともなくわかる。嗅覚・聴覚全部使って、まさに警察犬のように、匂いを追ってどこまでも…それをイケメンがやっているので萌えるのです。追いかけられたいと思ってしまった女の子も多いはず。
ただ、戌のちからを受け継いでいるからって何なんだよ。と言いたくなってしまう私です。そんな色濃く受け継がれていくものなんですかね…何代前の話なんだか、血は薄まっていくような気がしてなりません。ここを言ってしまうと夢を壊してしまうのでこの辺にして、とにかく逆ハーレムは女子の憧れ。他の作品でも幾度となくテーマにされてきた逆ハーレム。どうしてこうも女子はおいしいとこ取りをしたい生き物なのでしょう。つくづく女ってやつは罪ですね!個人的には、隼がよかったような気もするんです。身体能力が一番高いのに、戌である宿命から逃れようとしていた人。それでも花織の匂いにあてられて簡単に本能が揺れ動いてしまう不思議。苦しいのにどうしようもなく欲しいと思ってしまう衝動。一読者である私からすると、はじめから側に仕えて見守ってきた遥よりも断然胸が高鳴る…!愛情の裏返し感が半端なく感じられ、ツンツンしていたのがデレデレに変わる予感…遥では絶対になさそうなシチュエーションも隼ならありだな、と思えるので、そんな展開見てみたかったです。
遥がどこで花織を好きになったのやらわからない
4兄弟とお嬢様の恋物語は、甘い香りの呪縛。もうこれに尽きると思います。先祖代々、その人だけを守るために生きてきた戌井家の者たち。花織から発せられる匂いが魔法のように4兄弟を魅了し、離れたくても離れられない。だから読んでいるこっちからすると花織の良さがわからないんですよね。人としていいところがちょっと少ない気がするから、4兄弟とのエピソードがもっと欲しいです。宿命・仕事として守るのではないと、本心からお嬢様の良いところを見ている。とは言えない気がしてなりません。だから前世どうこうってやつは困るんだよ、花織の何が好きなんだかわからないし、出会うべくして出会う系は少しうさん臭さがどうしても残って消化不良を起こします。
響にいたっては、遥への対抗意識がでかいと思うし、新は違う人も恋愛対象として見ることができるし、隼は免疫がなさすぎるし…これでは逆ハーレム崩壊ですよ!ギャップ萌、ツンデレ、なんでもいいから花織の魅力もっとください(笑)。かわいいだけじゃない、守られてばかりではない、人の強さみたいなところをもっと見せてくれ!そう悶々と思いながら読み進めていたら桜姫憑依が起こりました。恐るべし。やはりこれくらいの気丈さがないとね!そこもう少し遺伝させておこうよ!匂いと癒す力だけなんて悲しいですよ…まぁ過去の呪縛にとらわれすぎた関係性も嫌ですけど。花織が園ちゃんタイプだったらよかったのかもしれない。
もっと早く事情を説明すればよかったのでは…
愛した人の傷を癒して短命に終わるから傷を癒す必要のないように守り、生きていけるように…ってそんなの無理な話でしょうよ。愛を受けて育っていたら、人を愛さないままにいるということには無理があると思うんです。しかも、別に愛した人じゃなくても、その辺の子どもの湿疹も無意識で治しちゃったじゃないか…ちょっと矛盾してない?どんだけコントロールできないんだよ。強く願った時だけとかにしてくれないだろうか。
傷を癒すと早く死んでしまうかもしれないんだ…って告げていた場合、どうなっていたかを想像で考えてみると、もっと慎重に生きていただろうし、もっとドライな人間になっていただろうなと思います。自分は死にたくない。だから力も使わない。守られて生きて当然のかごの鳥。で、そのドライな生き方をしていたのが、初めて人を・大切なものを守りたいと思った時に力を使ってしまって…みたいなパターンだったら断然応援できました。よくやったと褒めてやりたい。生きていることが当たり前じゃない。大切に大切に生きていこうと思う。そんな話だったら個人的には大好物だった…!どんな命も当たり前ではないと思ったとき、お嬢様に仕える戌井家のありがたみも、お互いの大切さも、もっとよくわかって仲が深まっていくんじゃないかなーと考えます。(すべて勝手な妄想と希望にすぎません。)
ラストはまるーくおさまったので、園ちゃんを…!
ラストはめでたく遥と花織が結ばれて、おめでとう!というお話でした。これはこれで、ずっと想いあっていた二人が結ばれたことに関してはよかったと思います。ここまできて別の人…とか、命尽きるフラグとか、悲しすぎですから。終わり方としては、戌以外にもまだまだケモノはいるということで、花織の進む道はいつでもケモノ道。黄色い目のことが解決されたからといって安息の日々はない様子でした。ここまで8巻という長編になっているし、まさかここからそのすべてを解決する域までいこうとしたらとんでもないことになると思うので、ここで終わって、主従関係のような恋人関係が深まっていくことを期待させながら終わったのはちょうどよかったのだろうと思います。遥よ、もっと焦って悶絶する姿がたくさん見たかったよ。
ということで、ちょいちょい中を深めていた園ちゃんと新先生をまとめてほしいものです。園ちゃんの魅力はすごく伝わってくるんですよね~…友達を大切に想う気持ちとか、一生懸命に生きている感じ、好感が持てました。新先生、幸せにしてやってくださいよ…いろんな人生あったっていいじゃないですか。選択肢はいつでも膨大に・無限に存在していて、自分が選んだコースが間違いだったと思わないように生きりゃーいいのです。どんどんチャレンジして生きていくことが大切なのだから!
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