人を信じなければ信用してはもらえないと教えてくれる
オタクと美少女の不器用恋愛
これは久々に、いい話だったと思います。イケメン&地味女子ではなく、オタク男子&美少女の組み合わせで、でもお互いにかなりの不器用でコミュニケーションスキルの低い二人。その二人が少しずつ少しずつ進んでいくのがいじらしくてニヤニヤが止まりませんでした。オタクだって元来そうだったわけではなくて、人が嫌いになって、辛くて二次元の世界へ行っただけで、悪いやつとかじゃないんですよね。正しいと思うことをがんばっているし、わからないことをわからないと正直に言えて、申し訳ないと思えば謝ることもできる。十分魅力的!好きなものを好きだと言って何が悪い!一方の美少女五十嵐さんのほうは、美しいから男から寄ってくるような人。でも本当の恋は知らなくて、本当に相手を独占したいと思ったりしたことがない。それも病気の手術のこととかがあったからなんですけど、こちらのほうがちょっと重症ですよね。こじらせまくっています。
そんなこじらせまくりの二人が出会い、半年間という期限付きで一生懸命仲を深めていきます。忽然と消えるシリーズはよくありますが、最初から半年間とわかっているパターンはなかなかないですよね。病院通いしている時点でなんか病気持ってるだろーっていうのはわかってましたが、それでもまさか記憶に関わるところとは思わなかったですね。そりゃー人のことを知ろうとは思わないわ。
なんだかんだいって、お互いが大好きだからすれ違うというパターンで続いていきました。三角関係やら家族問題やらありましたが、「ただ好きなだけではだめなの?」ということに、彼らなりに答えを探していく姿は共感を持てます。
少しずつ広がる交友関係
はじめは筒井と伊東氏だけだった空間でした。でも、筒井が五十嵐さんという人と出会って、恋に悩んで、石野さんというアドバイザーも得た。後輩の綾戸さんから慕われるというまさかの展開に、イケメンの恋のライバルにも出会いなぜか仲間に…すごい変わりようです。でもすべての始まりは、ちゃんと筒井自身から始まっているので、全部筒井が自分で見つけて手に入れたものだと言えると思います。きっかけは五十嵐さんだけど、石野さんに声をかけたのも、罠とわかっていても呼び出しに応じたのも、綾戸さんに恋をされたのも、すべて自分でアクションを起こしたからこそです。何もやらなかったら、何も起きなかったし、何も得られなかったと思うから、やっぱり社会で生きていくときに、人と関わりを断つことなんてきっとできないよなって思いました。そして、自分とよく相談して、自分がどうしたいのかって探したら、欲しいものを手に入れようとしてもがいて当たり前だなーと気づく。どんな人でも、みんな何かのためにがんばってるから、それだけ捨てなかったら大丈夫だ!と思わせてくれます。
やっぱり一番よかったのは石野さんですね。正直に言ってくれるけど悪意がなくて、本心だから心に響くし、五十嵐さんにとっても初めての女友達と言える相手で、キューピッドとして良き働きをしてくれていました。彼女なしにはこの二人の関係はありえなかったです。本当にいい人に声をかけたなーと思います。グッジョブ筒井。
全員結局イケメンと素敵少女たちにしか見えない
物語が進んでいくと、ちょっとずつみんな顔つきが変わって、成長しているんですよ。伊東氏なんて…癒し系イケメンへと変貌しているではありませんか…!猫耳なくても十分かわいい!綾戸さんおめでとう!この二人はよかったなーお互いが届かない気持ちってやつをわかっているから、余計につながりは深くなったように思います。
そして筒井は、前髪切ってないだけで相当イケメンですよ。どう見たって最初から十分イケメンだった…主人公ですからね、不細工すぎても悲しくなるでしょうから仕方ないことなんですが…そもそもオタクがイケメンではないという定義はないじゃないですか。すごいイケメンなのにアイドルを本気で追っかけている人もいるのだし、これはこれでアリでしょう。高身長だし優しい奴だし、知れば知るほど好きになる!まさに五十嵐さんのおっしゃる通り!知られたくないよね。独占したいほどに魅力的!最終巻では5年後の姿になっていて、まさかのモテ男へと変貌…やはり、いいもの持っていれば開花するのが遅くたっていつかはわかってもらえるもんよね。
石野さん、こんなにいい子なんだから、いい恋できないわけないよ。わかってくれる人がいるよ!そう思い続けてずーっと読み、幸せな姿をみられて本当に安堵しました。心根の優しい子に辛い思いだけが待っているなんてことはできれば見たくないという平和主義の私です…。
できすぎた弟と見守る母
筒井(弟)は、兄からオタク成分を排除した状態なんですよ。だから、人づきあいのできるバージョンなんですね。そしたらモテて当たり前でしょう。言葉がまっすぐで、正直に愛を口にできる、ほんのりとイケメンな大人しい男の子。それが自分だけに向けられたらこれは好きになってしょうがないです。兄みたいにはならないと思いながら、ちゃんと慕ってもいたのだろうと思いますし、まさにできすぎた弟であると言えると思います。
デキる兄弟がいれば、どちらか一方はひねくれているのがよくある展開です。ひねくれていながらも尊敬や愛情の裏返しだったりするんですよね。家族だからちゃんと見てくれている。肝心な時には力になってくれる。筒井が五十嵐さんがいなくなんって腐ったときには、目を覚まさせてくれたのは母でした。辛くてどうしようもないとき、揺るがないものが自分を支えてくれている。自暴自棄に陥る人ほど、自分には居場所がないと考えているけど、よく周りを見て、今自分があるのは何のおかげ?って考えてみてほしいですね。自分一人きりで生きてこれたなんてことはないわけですから、当たり前のように信頼してきた人とかモノがあるはずです。それを失わないように、がんばっていこうではありませんか!私もね!
ハッピーエンドまでが長かった…
1巻の終わりで、こいつがいなくなるなんて嫌だ、感覚的に何となく言っていたのが、終盤愛が深まって絶対に嫌だなと思えるところまできて、忽然と消える。うわー辛い。こういうの、やめてほしいです。だいたいこういうことする子は、自分大事に守りすぎなんですよ!悲しい思いをするのは自分だけじゃないんだってこと、なんでわかんないかなー…誰のおかげで今までの日々があったと思ってるんだよ、自分だけ消えるとかまじでふざけてる。重荷になりたくないってそんなの話し合って決めやがれ!何かを大切に想う気持ちは、他人には決められないのだから。それでも、手術を受けようと思っただけでも、生きようとしたってことなんでしょうから、プラスととらえてあげたいところです。
どうにかラストに幸せそうな姿が見れて、よかったですね。時間がすごく経ってしまって、もう社会人になっていたけれど、相変わらず筒井は同じ感じ。記憶半分でも、大丈夫、生きているだけでいいんだ!って言ってくれる友達、最高です。自分たちの結婚式中にも関わらず、迷わず駆け寄ってくれる友達。泣けるシーンだと思います。大切な思い出を無くしても、君が君でいてくれる限りは、愛していける。もう一度作っていける。今度は僕が君を助ける、みたいなね。理想的できれいすぎる。でもきれいごとだから憧れずにはいられない、そんなラストでした。
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