ハンカチは必ず必要です - 光とともに…の感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,135件

光とともに…

5.005.00
画力
5.00
ストーリー
5.00
キャラクター
4.50
設定
4.00
演出
4.00
感想数
1
読んだ人
1

ハンカチは必ず必要です

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

自閉症に限らず、子育てのバイブル

本書が世に出たころ「自閉症」という障害はまだ理解が広まっておらず、「自分を閉ざした暗い人」「育て方が悪い」など勝手なイメージがついていました。

子供の人生が光り輝くように…そう願いをこめて名付けた「光くん」。

この子は自閉症でした。

乳児検診で子供の発達の遅れが指摘された主人公・幸子は悩みます。しかも初めは「この子、耳が聞こえていないんじゃないの?」と医者に言われてしまいます。自閉症の特徴の一つに「視覚優位」というものがあります。耳から入る情報より目から入る情報のほうが処理しやすいため、医師の質問などに反応せず「聞こえていない」と判断されてしまっていました。今ではありえない!と思ってしまいますが、わが子がこんなことを言われたら…と思うと胸が苦しくなります。

自閉症の特徴が生きたエピソードは本書でたびたび登場します。レントゲン検査を受けることになった場面では、手順をイラストで描いて伝えます。言葉で伝えるよりも光くんにはわかりやすく、落ち着いて検査を受けることができました。このように「自閉症の人にわかりやすく伝える」ための手立ては、障害のない子供にとってもわかりやすいものです。実際に我が家では「1、靴をそろえる 2、手を洗う 3、おやつ」のように手順を書いた紙を玄関に貼ってみました。

すると何も言わなくても、魔法のように紙を見てやるではありませんか!近年ユニバーサルデザインという言葉は浸透しましたが、だれにとっても使いやすいもの、わかりやすい環境ができるといいなと本書を読んで感じました。

成長する子供たちの人間関係

話の中に、「絵里ちゃん」という女の子が登場します。家庭にトラブルがあり、中学受験に対するプレッシャーで失敗し、中学時代はワルイ道へ走ってしまいます。

本書では、障害の有無にかかわらず、子供は悩みを抱えているということを伝えているのだと思います。優秀な女の子ですが、心の中では自信がなく逃げ場を探している。そしてそんな娘を持つ母もまた悩みます。「なんで幸子さんは障害のある子供がいるのに、あんなに明るくふるまえるのだろう」とうらやましく思います。

子育てをしていると、隣の芝生は青く見えるし悩みは尽きません。それは障害に関係なくわが子に対して真剣に向き合い関心を持っているからこそ悩むのだと思います。本書では、絵里ちゃんを助けサポートしてくれるのは小学校時代の保健の先生でした。どんなところでどんな人が助けになるかはわかりませんが、子供の自殺やいじめなどさまざまな問題がある今、子供に関心を持つことが一番の助けになるのではないか…と本書を読んで考えさせられます。

未完の名作

本書は作者が急逝したため未完のまま終わっています。

ですが、将来の光くんはどんなふうに成長したのだろうと想像することが楽しい作品でもあります。障害のある人たちは働く場が足りず、社会問題にもなっています。幼児編最後の場面では、卒園式で光くんの代わりに幸子が「ぼくは大きくなったら働く大人になります」と答えます。

そして初めは育児に関心のなかった父親も、会社を巻き込んで障害者もともに働ける会社づくりを進めていくようになります。きっと光くんは「働く大人」になり、お父さんと一緒に仕事をしてくれるのではないかと期待して本書を読み終えました。読み終えた時には、すっと心がはれ、わが子をぎゅっと抱きしめたくなる名作です。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

光とともに…を読んだ人はこんな漫画も読んでいます

光とともに…が好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ