多くを学ぶことのできる深さ - ツバサ-WoRLD CHRoNiCLE-の感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,135件

ツバサ-WoRLD CHRoNiCLE-

4.004.00
画力
4.50
ストーリー
4.00
キャラクター
4.50
設定
4.50
演出
4.00
感想数
1
読んだ人
1

多くを学ぶことのできる深さ

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
4.0

目次

クランプ先生の独自の世界観

私たちが普段目にするマンガはタイトル毎に世界が異なっている。同じ作家さんの場合、宣伝を含めて友情出演することもあるが、本作品のようにレイアースやカードキャプターさくらをはじめ、今までの作品の世界観がそのまま描かれて入っていたり、もうひとつのマンガと完全にリンクしていたりするのは珍しいのではないかと思う。それはやはり、複数で構成されているという先生の特徴や、今までの経歴、経験、そして何より設定の奥深さ、複雑さにあるからなのではないだろうか。HOLICとの完全なコラボレーションは確かに両作品に目を通していないと繋がらないものがあり、純粋に「読みたい!」「知りたい!」という欲求が溢れてくる。

私は、どちらかというと本作品の方が絵が好きだったためHOLICはレンタルで読み、本作品は購入していたが、結局どちらも面白かった。まるで、本当にこの世界にも、どこかと繋がっているパラレルワールドが存在するのではないかと感じ、少し背中が痒くなるような感覚を覚えた。今まであったどのファンタジーよりも、リアルなファンタジーとして、私のなかでのマンガのイメージを変えた作品だったと思っている。

また、面白いのは、違う世界に住まう自分の存在である。作中ではそれらとの出会いを何度か果たしており、性格の似たところと異なるところがてとも面白かった。そして何より、人は育った環境で変わる部分と変わらない部分があることを感じた。

繊細な描写

クランプ先生の特徴の1つは丁寧な描写である。風、水、炎、雷などの自然や、刃などの無機質なもの。それだけではなく、羽根を優しいものや存在感のあるものに書き分けていたり、記憶を羽根にしたりガラスにしたりと形のないものを、感じ取れるように具現化していたりしている。また、笑顔の一つ一つがすごく複雑でさくらをはじめとしたキャラクターの表情一つ一つに意味を感じることができる。それは私たち読者が自由に考察できるという利点がある。

へらへら笑うファイははじめはただの笑顔の優しい人なんだと思っていたが、読んでいくにつれて本当の思いが見えないと感じるようになり、双子であったことやそのために辛い経験をしてきたことを知る。そして、そのなかで再び笑顔のファイをみて、笑顔でいることの大変さ、優しさ、酷さを学ばされた。

小さな表情の違いが、その次の言動により明らかになっていく様は、解説に近いのではないかと感じさせられる。個人的にはファイも好きだが、くろがねのつんとした表情が少しずつ和らいでいくところがとても魅力的で好きである。

死んだ人は甦らない

何度も何度も繰り返し出てくる言葉であり、おそらくクランプ先生の伝えたいことの一部なのだろうと考えている。もちろん、死んだ人は甦らない。それは、当たり前のように感じる。マンガの世界で、あり得ないような剣術や体術、魔法、バンパイアの存在が当たり前のように出てきており、世界を変えるような魔力のある状況であるにも関わらず、人を甦らせることはできないのだ。私はそれを、先生からのメッセージだと思っている。ファンタジーの世界、現実にはあり得ない世界ででも、人を甦らせることはできないのだから、現実のこの世界で人を甦らせることは到底無理な話だと。つまり、甦らない命を大切にするべきだと。ファイの自己犠牲のくろがねは嫌っていたが、それはきっと先生も同じなのだと思う。どんなときでも命を粗末にしてはいけない。後悔することもできないのだから。ファイのシーンでももちろん、その思いは伝わるが、本作品全体からも強く感じるのだ。だからこそ、作中では命を代償にすることはなく、生にしがみつくようにも感じるシーンが様々だ。生にしがみついて生きることの大切さを読者に伝えたいのかもしれない。

そして、すべての願いには代償が必要であるという、無から有は生み出せないという原点も私たちに再認識させてくれる。努力、金、貴重なもの、それらを代償にしなければ叶わない願いは、代償に相応な願いである。私たちの生活する現実でも実は同じように、なにかを代償にしないと目的は達成できないということを、改めて学ばされた。

魅力的なマスコットキャラクター

本作品だけでなく、さまざまな作品で出場する「モコナ」はもはやクランプ先生の代名詞だろう。一人の先生が主に作画しており、白かったり黒かったりしている。可愛いかというと、正直よくわからないのだが、私にはこのモコナの存在が、ある意味色々なマンガの世界を認識的に繋いでいるように思えた。統一した作風だけでなく、この統一したキャラクターが私たちの目に馴染むのはごく当然、然るべきであると感じざるをえない。それを計算に入れているのか、いなかは私たちには分からないが、このツバサでも存在感を大いに発揮し、時には笑顔を与え、時には私たちの思いの代弁してくれている存在なのかもしれないと思う。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

ツバサ-WoRLD CHRoNiCLE-が好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ