新装版「釣りバカ日誌」は疲れた現代人を救うドラマ
ハマちゃんがサラリーマンの疲れを癒す存在に
多くの人に長く愛されている映画「釣りバカ日誌」。ハマちゃん役だった西田敏行がスーさんになりハマちゃん役は濱田岳、みちこちゃん役は広瀬アリスという配役でリニューアルしました。三国連太郎が演じていたスーさんよりズッコケ感はあるけれどこれはこれで味のあるスーさんだなと思います。それだけ西田敏行の作品に対する愛情を感じます。また新しいハマちゃんは今時のゆとり世代の若者像もありつつ、いつも明るく元気で仕事より釣りのことしか考えていない釣りバカという変わらぬキャラクターが元気をくれます。大手ゼネコンに新卒採用されてるのに初日に遅刻という、ありえないけれどなんだか許されてしまうキャラ。スッと人の懐に入るのが上手で、彼女は魚料理の得意な秋田美人ときた。今も昔も、ハマちゃんになりたいなぁと願うストレスだらけのサラリーマンのお父さんたちが、いっぱいいるんじゃないのかと思います。昨今は「悪い上司に土下座させるまで戦う銀行マンドラマ」だったり「絶対に失敗しないスーパー外科医」と熱い職業ものが人気だったりします。現実にも不眠不休で働くプロフェッショナルな方たちもいます。ですがハマちゃんのような、釣りが第一仕事は第二みたいな働き方の人もいていいんじゃないかともドラマを見て思いました。最近は「ブラック企業」「社畜」という言葉も浸透し、一昔前には「24時間戦うのが日本のビジネスマン」と称賛されてきた限度を超えた残業などがやっと社会問題化するようになりました。過労による自殺者も多く出ています。日本人は真面目で、それは素晴らしいことでもあります。ですが仕事を頑張り過ぎて、心身のバランスを崩しそうになっている人はたくさんいるはず。そんな人たちにハマちゃんのように自分の好きなことを大切にして生きてもいいんだよ、自分を一番大切にしよう、というホッとできるメッセージがこのドラマにはあるような気がします。金曜の夜に、リラックスしてビールでも飲みながら見たこのドラマに励まされた人が沢山いたのではないでしょうか。
広瀬アリス演じるみちこちゃんの魅力
ハマちゃんとスーさんが釣ってきた新鮮なお魚を、みちこちゃんがお店で手際よく料理してくれ、ドラマ内で簡単にレシピを教えてくれるので、見ている主婦層は真似したくなってしまいます。鯛やイシモチはあまり普段の夕食に出てこない魚だったのでもう少し手に入りやすいものだとお財布が助かりますが。そしてみちこちゃんは地元の秋田から、売れないバンドマンの彼を追っかけてきました。「このバガッケー!(馬鹿野郎という意味)」と彼をひっぱたくセリフなど、秋田の方言指導がされていますが、やはりどうしても関東以南の生まれの役者さんが言うと違和感があります。(広瀬アリスは静岡の生まれです。)ですが、なんだか抜けない田舎臭さと情深さのある演技はとても好感が持てます。ハマちゃんのことが気になっているけど、認めたくないという所謂ツンデレなキャラクターもぴったり。浅田美代子の演じたみちこちゃんはもう少し温かみのある感じでしたが、この広瀬アリスの肉食系肝っ玉母ちゃんタイプもまた良いですね。男女平等の現代に合わせて女性も強く描かれているのかなと感じます。モテるのは今も昔も清楚でかわいらしいタイプの女の子なのですが、結婚したらみちこちゃんのほうがいい嫁になるのではないでしょうか。ハマちゃんみたいな彼&旦那を持つ人は舵取り法をドラマから学べそうです。
スーさんの老いらくの恋と昨今のゲス不倫疲れ
スーさんは今作でも若く美しい女性に何度も恋をしていますが、それもゲス不倫的ないやらしい感じではなく、小学生の恋みたいに描かれているのが家族で見ても気まずい感じにならなくて良いです。ときめく心は年をとっても誰でも持っていいし、それは気持ちを若返らせるホルモン注射みたいなものだなと思います。スーさんのときめきを見ていたら自分が妻でもその恋を笑って許せそうな気がします。そしてなんだかんだ言っても相思相愛なスーさん夫婦にほっこりさせられます。ハマちゃんのほうは恋より鯉という相変わらずの釣りバカですので心配はないと思いますが、現実世界でも「浮気しなさそうな人が?!」という人が不倫してたりと何があるのかが分からないのが男と女ですよね。芸能人のスクープ記事の載った週刊誌がバンバン売れているし、毎日ニュースにもなっているのでちょっと疲れ気味な世の中です。人の本能的な欲や悪意、殺意などを描いたセンセーショナルなドラマや映画も人気があります。ですが、それに疲れてこうしたほのかなトキメキにみんな癒されたいのかもしれません。寅さんシリーズや、釣りバカシリーズが長く愛されてきたのも、どこか不器用な人たちが集まってそれぞれが気ままに恋したり笑ったりの様子を描いた作品だからでしょう。この新しい釣りバカシリーズも多くの人に愛されてゆくゆくは映画化して長く続いてほしいなあと願っています。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)