恋がしたくなる - 真珠の鎖の感想

王道の少女漫画

何ていうか王道なんだけど、今までのとはちょっと違うというか。少女漫画でも胸キュンだけじゃなくてちょっと大人というか？サッカー部のマネージャーとか設定としてはもってこいのシチュエーションですよね。しかも恋する相手はエースとかもはや夢のような話ですよ。でもやっぱりどこの部活でも先輩マネは嫌味な人っていうか妬みやすいんですね。まぁ、そりゃ自分よりも後輩の方が人気だったらそうなるのも仕方ないんでしょうけどね。しかもその部活の中で三角関係が生まれちゃうし、もう青春中の青春を描いた作品だと思いますよ。

陽沙が健気

家庭の経済状況が良くないから深夜バイトをして家計を助けているっていうのがまた偉い。

というかそういうヒロインってなかなかいなかったと思います。バイトをするっていうのはあったかもしれないけど、そんな中でも深夜バイトですからね。部活が終わってマネージャーとはいえ色々動くから疲れているだろうに夜遅くまでバイトして、次の日にはまた学校に行ってって・・・なんて健気ないい子だと思いましたよ。左恭にバレた時も辞めるわけにはいかないっていう思いがすごく伝わってきたし、事情が事情だからっていうので勘弁してあげてって思いましたね。左恭のことに関しても基本の性格は勝気なんだけど、左恭のことを誰よりも想っている様子がまた健気なんですよね。明るくて天真爛漫なんだけど、乙女らしいところも垣間見えるから好きなタイプの子でしたね。同性の私から見てもこんなにいい子は他にそういないと思います。どんなに言われても自分の考えをしっかりと持てるっていうのはなかなかできることじゃないと思うので、そういうところは尊敬してますね。部活のことにしろバイトのことにしろちゃんと一本筋が通っているというか、大げさに言っちゃえば信念をもっているっていうのがすごく伝わってくるから応援したくなる子でしたね。先輩からの嫌がらせにも負けずに立ち向かうあたりがヒロインとしての強さを物語ってますよね。左恭の助けもあったけど、きっと助けられなくても陽沙ならなんとか乗り越えてくれてたんじゃないかとさえ思っちゃいましたね。そうなると左恭の立場が亡くなっちゃうんですけど(笑)

渓斗が切ない

なんといっても渓斗の立ち位置が一番切なかったですね・・・。中学時代から陽沙に想いを寄せていたのにあっさり左恭にとられちゃったというか陽沙自体が左恭に惹かれたからしょうがないことなんだとは思うけど、にしてもなんというか報われなさすぎですよ。ましてやそんな張本人の左恭から交際を勧められたとなったらたまったもんじゃなかったでしょうね。今まで自分がどんなに想っても気持ちを伝えられずにいたのにまさかのライバルから勧められるとか馬鹿にされてるのかと思ってもしょうがないと思いますよ。それに結局そうやって勧めてきたのに左恭が陽沙と付き合っちゃうんですもん。そりゃ耐えられないですよね。そんな二人が同じ部にいるっていうのもつらい話だから、祝福できないのも無理ないです。それでもやめない二人に対してのやり場のない怒りを暴力で表現するしかないっていうのも青春ならではというか、高校生らしいというか。でもそれくらい陽紗のことが好きだったんだと思うと、ちょっとかわいそうな気もするんですよね。

初めての小コミ作品

水波先生の作品はどれも好きで見てるんですけど、この作品は水波先生にとって初めての小コミでの連載作品だったので、絵も今と違って初々しさを感じられるというかところどころ描写が甘いところとかがあってでもそれがいい味を出しているというか、何度読み返しても感動できるので私自身もすごく思い入れのある作品です。あとは性描写ですね。水波先生のうまい具合の描写でそこまでエッチな感じにもならないというか、いやまあエロいはエロいですよ(笑)でもこうえぐい感じじゃなくて自然な感じで描かれているので、引くとかはなかったですね。後は何よりも激しかった(笑)高校生ってそんなにがつがつしているものなのかって思うほど激しい描写もありましたね。ただメッセージ性はあったと思います。真珠の鎖っていうタイトル通り、真珠みたいな純粋な気持ちが時に鎖のように人を苦しめるって。確かにそういう考えもあるよなって考えさせられましたね。この作品が水波先生の原点と言ってもいいんじゃないかって思うくらい素敵な作品だと思います。

展開が早い

付き合うまで紆余曲折合ったけど、ようやく結ばれたと思ったらその日にエッチしちゃうってどんだけ展開早いんだよって思っちゃいました。しかも外でましてや公園とかロマンチックさとか皆無な感じである意味衝撃受けましたね。今までの少女漫画でここまで展開が早いのもそうないと思いますよ。しかも一回のエッチが激しい、激しい。立てなくなるまでしちゃうとか・・・若いってすごいですね。陽沙も負けず嫌いなところがあるから余計なんだろうけど、左恭の体力もなかなか。さすが運動系の部活に入っているだけはありますね。シチュエーションも様々で、なんというかエッチな部分が多めの作品だと思います。小コミにしては結構思い切ったなって思いましたね。でもこの当時の時代背景を考えると性について色々問題視されていた部分もあったからそういう面で投影されていたんじゃないかなと思います。なんていうかその当時の高校生にありそうなことっていう感じで。にしても性急すぎじゃないかとは思いましたけどね。でもただエッチなだけじゃないからいいんですよね。二人がどれだけお互いを想っているかっていうのも伝わってくるから。いつも陽沙をいじめる左恭だけどちゃんとその後は優しくしてくれるからもう彼氏としては最高ですね。クールで愛想がない奴だと思ってたけど、陽沙と関わることで多少はそれも改善されたんじゃないかと思います。

少女漫画なのに昼ドラのよう

設定そのものは王道なんだけど、展開がまるで昼ドラのようでした。三角関係っていうのはよくありがちな話だし、高校生のものって爽やかさがあるというか青春って感じのものが多かったんですけど、この作品は違いましたね。なんていうかドロドロしたものを感じました。大抵そういうドロドロしている時って男の子を巡ってヒロインとライバルの女の子がバトルみたいな展開がほとんどだと思ってたんですけど、今回はまさかの男の子同士。陽沙を巡っての左恭と渓斗のやりとりとかみてると羨ましいんだけどちょっと現実では起きてほしくないかなーって思いました。渓斗の気持ち考えたら好きな子に振り向いてほしいのは当然ですよね。そのために手段を選んでられないっていうのもわからないではないけど、ちょっとやりすぎた感は否めませんよね。左恭も渓斗を挑発するようなこと言ったりするから余計に話がややこしくなったりして・・・。最後の方も結ばれた二人を見て潔く諦めるかと思いきやそうでもない感じだったし。少女漫画なんだけど、胸キュンよりシリアスな場面が割合的に多かったような気がします。だからこそ大人になって読んでみるとさらに面白いのかもしれませんね。当時高校生の時に読んだときは理解できなかった部分やちょっと引くなーって思っちゃった部分も正直あったんですけど、成人してある程度たってからもう一度読み返してみるとまた違った面白さがあってとてもよかったです。