CGで始まる新たな『星矢』伝説 - 聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARYの感想

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聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY

4.004.00
映像
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ストーリー
3.50
キャラクター
3.50
声優
4.00
音楽
4.00
感想数
1
観た人
1

CGで始まる新たな『星矢』伝説

4.04.0
映像
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
声優
4.0
音楽
4.0

目次

原作ファンも驚くハイクオリティ

さとうけいいち監督のもと、CG作品として蘇った『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY(以下、LOS)』。

原作『聖闘士星矢』にはファンが多く、そのぶん派生作品への評価が厳しいことで知られているが、『LOS』は概ね良い評判に終わった。筆者の知る限り、20回以上(!)映画館で観たというファンもいるぐらいだから、『LOS』は熱心なファンに評価されたと思ってよいだろう。

実際、『星矢』ファンを自称する筆者からみても、『LOS』の出来は非常に良かった。

スタイリッシュなアクション、荘厳なサウンド、原作『星矢』から刷新された新声優陣、一時間半という短い時間にも関わらず黄金十二宮編を消化しきったこと(一部魚座の黄金聖闘士と鳳凰座の青銅聖闘士を除く)、YOSHIKI作曲のエンディングテーマ“hero”、ところどころにちりばめられた原作オマージュ……と全てがハイクオリティだった。

なかでも、アクションシーンに代表される迫力あるコンテ割が素晴らしかったと筆者は思う。星矢をぶっ飛ばす直前のアルデバランのにやっとした笑み、デスマスクをぶっ飛ばす紫龍の廬山昇龍覇は最高にかっこよかった……。

また、声優陣も原作のテイストを保ちつつ、それぞれが良い味を出していた。不安視されたアテナ役のあーりんこと「ももいろクローバーZ」の佐々木彩夏も想像以上に上手く、「芸能人声優は期待できない」というファンの前評判を覆してくれただろう。あーりんのアテナ、すっごい可愛かったです。

さて、次項からは、映画のなかにちりばめられた伏線について考察していきたい。ちなみに、映画『LOS』だけでなく、『聖闘士星矢』原作のネタバレにも言及していくので、映画は観たけど原作は読んでない、という人は留意して頂きたい。

青い蝶=冥界の蝶?

今作における最大の謎は、サガの周囲を漂っていた青い蝶の存在である。

青い蝶は、常にサガの周囲に漂っていた。そして、サガの死を機に消えていってしまう。この動きに役割はなく、本編だけを観ていると、「この蝶はなんなんだ?」と疑問に思ってしまうことだろう。

ここから推測すると、青い蝶はサガとなんらかの関係性があるものの、本作では何の役割を持たないことから、サガの能力の一端ではない、ということにたどり着く(もしサガの能力の一端だったら、ちゃんとその伏線を回収するだろうと思うので)。

ではこの蝶は一体どういった存在なのか? そのヒントは、原作にある。

原作『星矢』で蝶といえば、有名なのがハーデス軍の手先、冥界の蝶フェアリーである。フェアリーは、冥界から蘇った黄金聖闘士三人を監視する役割を担っていた。

ではこのヒントを『LOS』にあてはめ、青い蝶を監視役と考えるとしよう。

そうなれば、今度は一体「誰」からの監視なのかが問題になってくるだろう。

ここから先は筆者の完全な想像になってしまうが、おそらくこれについては次作への伏線である。そして、「誰か」とはハーデスかポセイドン、おそらくハーデスだと筆者は思っている。

理由は蝶の存在から原作に準拠した、ということも一つにある。更に、ポセイドン編の原作における役割が、正直「本当に必要か?」と考えてしまうような内容であるからだ。

原作のポセイドン編のストーリーは、紆余曲折あってアテナが世界中の人々を守るためにピンチになる、青銅聖闘士たちが海闘士たちと戦う、ポセイドンを倒す……と、ほとんど展開が十二宮編と同じなのである。正直、『星矢』という作品全体を見渡したとき、あってもなくてもいいと思えるエピソードなのだ(ポセイドン編ファンの方、すみません)。

こうした理由から、CG版はポセイドン編までシリーズを伸ばすとも思えず、おそらく次回作があるとしたらハーデス編になるだろう。なので、青い蝶もおそらくハーデス編への伏線、という筆者の推理でした。夢がない考察でスミマセン。

実際、『LOS』は日本でもそこそこヒットを飛ばし、ブラジルや中国でかなり興行収入があったそうだから、次回作も決して夢物語ではないだろう。さとうけいいち監督も『GANTZO』の成功で弾みがついたころだし、期待してます!

蟹ミュージカルは本当に不要だったのか?

さて、最後に『LOS』最大の論争、尺(映画の長さ)について議論を移そう。最大の議題は「巨蟹宮突入時のミュージカル、通称蟹ミュージカルは本当に無駄なのか」である。

ア○ゾンやファンの間では散々「時間喰いすぎ」「いらない」「これ削って魚座に時間をくれ」という意見が寄せられたが、筆者は反旗を翻したい。

確かにあのシーンはディ○ニー映画さながらコミカルで、突拍子がなく、必要性がないように感じる。

だが、知ってのとおり原作『聖闘士星矢』はバトル漫画だ。特に十二宮編はコミカルシーンが一切なく、ひたすら戦い続ける。

原作通りにして、そんなシーンばかりを映画の後半60分見せられ続けると、観ている側はぶっちゃけ飽きるのである。

料理のフルコースもしかり、漫画や映画や音楽もしかり、物事には緩急が必要だ。そのために、中盤以降にああいったコミカルな演出を挟むことで、観客の箸休めとしたのではないだろうか。また、デスマスクというキャラクターの特異性(黄金聖闘士のなかでも異質の残虐キャラであり雑魚キャラ)を印象づけるためにも有効な手段である。

こうした面を踏まえ、蟹ミュージカルは、決して無駄ではない演出であると筆者は思っている。あ、魚座好きの皆さまには本当に同情の意を示したいと思います。あれは可哀想です。

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