これが日本と中国の文化の差?
中国が舞台で、中国人が多く使われているこの作品ですが、実はこの作品はフランスとカナダの合作です!
しかし監督も脚本も中国人の方なので、これが中国の文化なのかなぁ…と思うような箇所がちらほらありました。
その「ん?」と思った点をいくつかご紹介します。
ミンがびっくりするくらい強情!
まず私が驚いたのは、主人公であるミンの強情さです。
最初から最後まで、教授に従順な姿を見ませんでした。
最初の方のシーンで毒なのに区別がつかないのか!と怒られても、ミンは不貞腐れたような表情をするだけで、特に反省した様子も見せません。
次のシーンでは納得いかないように駅の辺りにいるという…。
日本人の多くは怒られたらすぐに謝っているところではないでしょうか。
最初の方はまだまあ従うメリットは強く当たられないくらいしかなさそうに見えたから良いものの、アンと結ばれてからはもっと教授に従順なふりをした方が、アンと一緒にいるのもさほど責められなかったのではないだろうか…と思いました。
けれどこれも、中国の文化なのかもしれません。
中国では謝るということは、自分に責任があることを認めることとイコールで繋がるという文化があるそうです。
そうなると、あまり従順になるのも、作戦であったとしても受け入れられない面があるのかもしれません。
処女じゃないだけでぶたれる!?
何故処女じゃない!と言いながら、ミンと結婚したタンが、ミンを責めているシーンを覚えていますか?
相手を答えずミンは堪えていましたが、現代社会を生きる日本人女性からしたら、非処女だから何だ!という気持ちになるのではないでしょうか。
非処女だってそんな簡単にわかるもんでもねーよと思ったのは内緒です。
それはさておき、結婚するまであんなに優しく接したのに…とギャップを覚えた人も多いのではないでしょうか。
それにアンやミンが教授の足の爪を切っているシーン。父親だから、義父だからといって、そこまでするか!?と思った人も多いと思います。
「お父さんのと一緒に洗わないで」が多用される日本とは大違いだなぁ…といった感じです。
舞台の時代設定はいまいちわかりづらいところですが、おそらくこの作品が公開された2006年かさほど遠い時代ではないでしょう。
結婚したらもう男のもの、父親に娘が奉仕するのが当たり前、というのが中国では当たり前だったでしょう。
それに抵抗するように生きた2人の中国人少女が主人公というのは、おそらくこういった社会に批判の目が向けられつつあるということを示しているのでしょう。
アナと雪の女王などで描かれた女性独立、男に頼らない女性といったものの先駆けともいえるのではないでしょうか。
勿論、これよりも前に作られた女性独立を謳った作品はいくらでもあります。そして男尊女卑に批判の目を向ける作品も。
しかし男尊女卑にも目を向けた作品としてこの作品を見るのも面白いのではないのでしょうか。
同性愛で死刑判決!?
そして最後に驚いたのがミンとアンに対して下された死刑判決!
そんなことになって驚いた人は私だけではないはずです。
この作品のCMで2人が逮捕されたシーンがあったので、ある程度の覚悟はしていましたが、それでも死刑!?と思いました。
しかし中国本土で同性愛が犯罪ではないとされたのが、なんと1997年!
同性愛によって父親を殺したとして2人は死刑となっていましたが、親殺しと同性愛という罪が重なってこんなにも重くなってしまったということでしょう。
ちなみに日本で尊属殺人重罰規定が違憲であるとされたのも、1950年です。それもこの規定自体は間違いではないが、罰が重すぎるという理由でです。
おそらく儒教の発祥の地である中国でも似たような規定があったのでしょう。
それはさておき、中国での同性愛への視線についてです。
撮影自体も、同性愛を取り扱っていたので、中国ではなくベトナムで行われました。
同性愛が犯罪ではないとされてから10年ほど経った2006年であっても、中国ではこれほど同性愛に批判の目が向けられていたのです。
公開されたのはフランスが最初ですが、そこでも同性愛批判に対しての痛烈な批判として成り立ったのではないでしょうか。
2006年時点でフランスでは同性愛婚は認められていません。2013年に同性愛婚を認める法律が認められました。
彼女たちの美しい同性愛を見て、そしてそこから死刑判決を下される様を見て、「そんなぁ…」と思ったのは私だけではないはずです。
この美しさは、監督の作品独特の映像の美しさも大きく貢献していたと思います。
画面が全体的に煙ったような雰囲気で、2人のあの秘めやかな愛をぼんやりと覆い隠していたような雰囲気がありました。
それを自覚して監督はこのような秘めやかな愛を描いたのではないのかなぁと思います。
音楽も綺麗でしたね。
中国の伝統的な音楽をベースに、西洋の音楽も混ぜ、画面的な美しさのサポートをしていたように感じました。
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