ハンカチを必ず用意して、ティッシュは手の届くところへ - あいのうたの感想

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あいのうた

4.004.00
映像
3.50
脚本
4.00
キャスト
4.50
音楽
4.00
演出
4.50
感想数
1
観た人
1

ハンカチを必ず用意して、ティッシュは手の届くところへ

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.5

目次

日常のすべてがあいのうたなのかなあ

玉置浩二さんが俳優で熱演しているドラマがあるなんて知りませんでした。世代でしょうか、歌はとても渋くて味のある声に安定したリズムと音程で、主人が時々家で口ずさんでいるのでなんとなく知っています。演技はどうなんだろうと思って改めて見てみましたが、特段上手い!とか大根というわけではなく、違和感のない程度に馴染んでいるなあというのが感想です。いっつもニコニコしていて、人当たりが良くて、周りのみんなが集まってくるあたたかい人を演じています。子どもたちも三人が三人可愛らしくて、素直でいい子です。末っ子くんのケチャップ攻撃は嫌ですが、怒らずに笑いあえる家族はいいなあと思いました。まあ、食べ物で遊ぶのはいけないと思いますが、こんなことくらいじゃ怒らないよ、というボーダーラインを示したシーンなのかなと思いました。そして、菅野美穂さんが若い!とにかくかわいらしい。服装も一昔前ですと少し野暮ったいなあなんて感じるものなのですが、白のシャツワンピースにジーンズに赤いパンプスでとてもよく似合っているんですね。化粧も濃いメイクではなく、自然な感じで菅野美穂さんの綺麗さが際立っています。そんな玉置浩二さんと菅野美穂さんが恋をするわけですが、最初だけをかじって想像すると不思議な組み合わせで、この二人が恋愛関係になるとどうしても思えないんです。実際に、愛情そのものに触れてこなかった洋子にとって、片岡は子どもたちの親というポジションから入っています。自分を無償で受け入れてくれる対象として片岡を見ています。物語が進んで愛ちゃんが片岡にプロポーズをするのですが、その報告を房子さんにすると、じゃあエッチしないの?と切り込まれます。その想像をせずにプロポーズをするあたり、愛ちゃんが想う片岡への愛情は、恋人が夫婦へ変わるようなものではなく、他人から家族になるという二人の関係性だけの変化ではないようです。伝えるのが難しいですが、ただ単純に一緒にいたい、という一心が愛ちゃんと片岡の間で生まれたという、少し変わった恋愛の形です。幼い子どもと同じような気持ちが徐々に変化していく様子が一話一話はっきり見て取れて、切ないです。

チープな設定

ありきたりです。記憶喪失を装って、ひょんなことから居候生活が始まり、しかし好きになった人はもう命が長くない。そして残される子どもたちの存在がより涙を誘い、生死という出来事が人間の気持ちを大きくします。限られた時間が短いからこそ、ぎゅっと濃い時間をドラマチックに魅せます。設定はとーってもありきたりです。しかし何がこのドラマでいいかというと、まず菅野美穂さんの表情の変化です。最初はつんけんして過去の出来事と現実と理想のギャップに苦悩するのですが、自分のしたことを喜んでくれる相手がいることを知り、それを認めて見守ってくれる存在がいる。子どもたちのお弁当作りの話の時は泣きました。お弁当箱が大きくって残してしまったなんて、量が多いという一言があれば解決する悩みだったのに、何やってるの?ともやっとしたのですが、残されたお弁当を見てもっと頑張ろうとする愛ちゃん自身の努力はすごいですし、その愛ちゃんの努力を見守り、最後は子どもを褒めるように本気で褒めてやる片岡との関係性の進展のために子どもたちはあえて報告しなかったのだと捻くれた考えをこじつけました。子どもたちが不思議がっていた様子も好きでした。無理してお弁当を食べようとしたわけではない様子が、そっけなさがより嬉しさを大きくさせたように思います。幼い頃に親に褒められることも、認められることもなかった愛ちゃんにとって、片岡の存在はとても大きいなあと思いました。すごくありきたりで想像しやすい設定なのに、誘導されるように感動してしまいます。それだけ菅野美穂さんをはじめ、演じている役者さんがいい味出しているんです。子どもたちも多少ぎこちなさはあるにしても、自分立ちの役割を知っています。ミルクはもうちょっと演技を仕込んでもよかったかなあと思いますが。

小日向さんへの雑さ加減

飯塚という役柄で演じています。今に比べると小日向さんの頭部がまだまだハリがあって毛量も多いように思います。作品によっては笑顔が不気味な悪役を演じたり、このドラマのようないじられキャラも演じて、すごい役者さんだなあと思います。飯塚は片岡の親友で、一緒に食事をしたり行事に呼ばれたり、行動を共にすることが多いのですが、いかんせん扱われ方が雑だなあと。この作品のテーマというか、命の重さについて語られることが多いのですが、飯塚さんがいることによってピンと張り詰めた真剣なシーンも抜けが生じます。いい意味で肩の力が抜けるんです。片岡が子どもたちに自分の病気について話すと柳沼と飯塚に伝えるシーンでは、重たい空気を払拭するために腰を痛めます。大丈夫、こういうキャラだからと自分でも認めていますが、彼がいてくれたからコミカルさを携えて、感動もできるし笑えるドラマに仕上がっているなあと思いました。しかし、真面目なシーンもあります。片岡の病気を知ってしまった時、柳沼と房子さんに報告するのですが、本人が隠して笑っているなら、こちらから言わないほうがいいと柳沼を諭します。房子さんにも笑わなきゃダメだよと年長者らしいことも言えるんですね。どんなに邪険に扱われても、忘れられていても、みんなを笑わせて一息つかせてくれる彼の存在は大きいなと思いました。

房子さんの受け皿の深さは未知

房子さんは愛ちゃんが片岡のところへ引き取られてから、気にかけて面倒を見て時々叱って自分を褒めて、周りがちゃんと見えているにだけれど、そこをあえて突っ込まないふんわり相手を包むような存在だなあと思いました。彼女も婦人警官として色々な経験を経て現在に至るので、もしかしたら昔は冷たくて相手が見たくないところをづけづけと土足で踏み込むような人だったかもしれません。でも、それがだんだんと柔らかくなって、きっと相手も土足で踏み込まれてもそんなに気にしないでいられるような、懐に飛び込むのが上手くて、また反対に相手を受止めるのも上手で、コロコロ話が変わるかわいらしい人になったのかもしれません。愛ちゃんの変化を見ると、彼らたち自身が昔は愛ちゃんのような人だったのかもしれませんし、人と出会うことで今のようなやさしい人になれたのかもしれない。まだまだ人間って変われるチャンスがあるなあと思わせてくれる人物のひとりです。最後に飯塚に告白されても保留にするあたり、実は魔性の女なのではとも思いますが。

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