感動アニメの代名詞にまでなった要因の検証
現代の感動アニメの代名詞的作品
本作品の感想を聞くとほぼ間違いなく「感動した」という声が聞かれる。今、“感動アニメ”と言えば本作品を挙げる人が多いだろう。“感動アニメ”と呼ばれる作品が数多く存在する中でなぜ本作品が代表格にまでなりえたのか。ここではそれを検証したい。
どんな部類の感動作品なのか
検証を始める前に、本作品がどのような部類の感動作品なのかを考えておきたい。“感動”と一口に言っても、いろいろな要素があるだろう。長い間かかって何かを達成したという達成感や満足感からくる感情もあれば、逆に思うようにことが運ばなかったというやりきれなさや切なさや怒りなどによる感情、新天地への旅立ちや死別などでの別れを悲しむ感情やそこから決意を新たにする強い意思を感じ取ることによる思い、登場人物たちの行動を通して心の強さや優しさを感じ取ることによる思い、など、挙げていけばきりがない。本作品は(長い時間をかけて一つの目的を達成した達成感からくる感動)+(切なさ)という合わせ技になるだろう。全11話とはいえ、そのすべてがヒロインめんまをいかに成仏させるか、ということを描いている。それが達成できた、という達成感が、見る者の心を動かすのである。また、最終回のめんまが消えそうになるところやみんなに手紙を書くところ、そして消えてしまうところはどこも印象的で、物語的にはハッピーエンドに進んでいながらも他に何か手立てはないのかというやりきれない思いが心を揺さぶるのである。
めんまのかわいらしさ
ただし、本作はそれにとどまらない。複合技というのはかなり印象に残るが、それだけではこれほどの代表格にまでなっていない。ではほかにどんな要素があるのだろうか。まずは何と言ってもヒロインめんまのかわいらしさであろう。幽霊という設定ではあるが足はちゃんとあるし全く幽霊らしくない。しかも記憶が亡くなったときの小学校中学年のままであり言動が幼いことも、かわいらしさを増した要因であろう。担当声優の茅野愛衣さんの熱演も忘れてはならない要素だろう。そのかわいいめんまが亡くなってしまって、成仏できずに幽霊としてやってくる。感情移入がしやすくなっているのである。
等身大のキャラクターたち
超平和バスターズの面々それぞれが長所も短所も持ち合わせていてキャラクターが現実の人間らしく感じられる。幽霊のめんまが登場するということはあるものの、それを除けば現実に合ってもいいような内容が繰り広げられていて、それが感情移入しやすい要因となり、感動をより印象強いものにさせていると言える。そのキャラたちがめんまの死を通してそれぞれに違った思いを抱き、それが超平和バスターズの解散につながってしまった。めんまが幽霊の形で出てきたことで、お互いの思いをぶつけ合うという、それまでできなかったことをやっていく中で友情を回復していく。この“友情”や“絆”という要素は我々の一番身近なところに存在するもので、かつ我々が楽しく暮らしていくための一番重要な基盤になるものだから、自分のこととして捉えやすく、物語によって受ける感情もより強いものになるのである。
ラスト
「フランダースの犬」のあの衝撃的なラストを知らない人はいないだろう。もっとも、それは特集番組で散々魅せられているシーンだから、ということもあるだろう。しかし繰り返し特集されるのは、それだけあのシーンが多くの人に衝撃的だと受け取られている証拠でもあるだろう。本作品のラストもそれに劣らず強烈な印象をこのすものである。おそらくは「フランダースの犬」ほど回数を見ていないのに、本作のラストが脳裏に焼き付いているという人も少なくないだろう。もともと死んでいるめんまが本来いるべきところに行くというだけのことなのだが、消えるまでの行動と消え方が強烈な印象を与えている。うっすらと消え始めている状態で、復活した超平和バスターズの面々に手紙を書くめんま。かくれんぼと称して悲壮感を漂わせて叫びながら探す面々。そして再会。仁太以外の4人にとってはやっとのことで見えためんま。一言ずつ言葉を交わしていくみんな。そして。「めんま見いつけた」。「見つかっちゃっ」。というあの場面。これから消えるのにかくれんぼというミスマッチが強い印象になったと考えられる。また、かくれんぼにすることで普段は何気ない「もういいかい」を悲壮的に叫ばせることができ、これも普通のかくれんぼではないことなので強烈に印象付ける要因になった。もちろん声優さんたちの熱演も忘れてはならない重要な要素である。それらがすべて作用して、多くの人に非常に強いインパクトを与えたのだと考える。
まとめ
まとめると、感動の要素が複数あったことと、かわいいヒロインや等身大のキャラクターによって感情移入がより深くできたことに加えて、ラストの展開自体の印象が強くなるように演出されていたことにより、感動の度合いが非常に強くなったことが、この作品が感動もの作品の筆頭にまでなれた要因ではないかと考えられる。
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