すべての世代に向けられたエール
彼の作品は主人公の雄弁な語りと葛藤が最大の魅力
アメリカ国内では、そこまで人気が出なかったが、主にヨーロッパ各国で絶大な支持と人気を集めて知名度が高まった映画界の巨匠・ウディ・アレン監督。彼の作品で一番の見どころというか、聞きどころと言うのは、毎回主人公の長くて、早口で、独りよがり的なセリフだ。今回の主人公も、孤独で偏屈、世間に最低限はコミットしながらも、順応できず、かといって自分を捨てきれない、そんなみんなが少なからずも持つ人物像をウディ・アレン監督は描いている。辛口で辛辣ながらも、軽快で雄弁な主人公の語りは、思わず映像を止めて読み返してしまうほど。不満や愚痴や不平、と言った類の長々しいセリフながらも、軽快なテンポで語られ、そして踊りだしたくなるような音楽とともに観れば、不思議と嫌味がない。それどころか、自分が言語化できない心の叫びや葛藤を、代弁してくれるような爽快感があり、見ていて気持ちがいい。
みんなが少なからず持っている妄想を形にしてくれる爽快感
今回のウディ・アレン監督作品のポイントは、偏屈で、反社会的なところがある、かといって自分を変える気もさらさらないインテリの孤独な老人が、純真で無垢で、しかも若くて美人な金髪美女にあろうことか惚れられてしまうという、まさかのストーリー。普通ならありえないでしょっと思ってしまうところだが(ウディ・アレン監督の私生活をみれば、あり得るだろうけど)、そんな願望や妄想を人間一度はしたことはないだろうか?そうしたみんなが一度は、こんなことあったら~という妄想や願望を形にした映画だ。男性でも女性でもある日突然、純真無垢な美男美女が目の前に現れて、ありのままのダークな自分を、すごいと尊敬して、慕ってくれたら。。。。そんな妄想のその先まで、コミカルにこの作品は描かれていて。ありえないと思いながらも、最後まで見たいと思わせる作品になっている。
ウディ・アレン監督はもがきながらも自分を生きる人を応援してくれる
ウディ・アレン作品は好みが別れる。どっぷりはまって、大ファンになる人もいれば、反対に小難しくて、インテリ気取り。好きじゃないっという人だ。だけど私は長年彼の作品が大好きだ。と言うのも、彼の作品には一貫して、悩みながら、葛藤し、迷い、時には失敗し、迷走し、それでも懸命に生きている私たちを常に応援してくれる作品だからだ。彼の作品にコメディタッチが多いことや、ジャズに造詣が深い監督が使う作品中のテンポの良い音楽は、そうした私たちが行き詰まりな葛藤を客観化してくれている。この作品をみれば、どの年代の人も行き詰まった気持ちを一度保留にして、明日もまた頑張ろうと思わせてくれること間違いなし。
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