おつまみ感覚の新ジャンル - 女くどき飯の感想

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女くどき飯

4.004.00
映像
3.00
脚本
4.00
キャスト
4.50
音楽
3.00
演出
4.00
感想数
1
観た人
1

おつまみ感覚の新ジャンル

4.04.0
映像
3.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
3.0
演出
4.0

目次

脳と胃袋

つり橋の向こう岸に立っている異性を、好きになってしまう。そういう現象があると聞いたことがあります。恐怖やスリルのドキドキと、恋愛のドキドキを脳が錯覚してしまうからだとか。

おいしいものを食べるときの興奮と、恋愛感情が似ているのならば、食事で女性を口説くのは理に適っているのだと思います。他にも色々な意味で、生理的欲求を満たすとか、養うとか、男性が女性にアピールするのに一番手の出しやすい技(?!)が、食事をおごることなのだと思います。しかも、おいしいものを。

おいしい食事をおごることが、彼の知識やステイタスや思いやりや、なんやかんやと評価につながるのだから、女性を口説くための食事は、ある意味勝負事のようなもの。男女問わず、恋愛の極意は「胃袋をつかめ」なのかもしれません。

おつまみのおいしさ

このドラマの「おいしいお店」は、食事がおいしいだけではなくて、雰囲気や自分の見せ方として、男性にとってオイシイお店の紹介になっています。女性目線で描かれた作品ではありますが、「口説かれる彼女役」のライターが最後に書くのは「男子諸君」から始まる

男性向けの恋愛指南的レポートだし、実際にそういう記事を読むのは、女性を口説くことに興味のある人たちなんだろうなと想像されます。すると、やっぱり女子受けばかりを狙った店選びではなく、男性にとってオイシイことが前提になってきます。

で、このドラマを男性が見るとどんな風に見えるのかな、と考えるのですが、どうしても主人公と自分の性別(女性)の視点をチェンジしてみるのが難しく、いまいちピンときませんでした。男性にとって「勉強になるなあ」という情報番組になっていたのだろうかと、気になるところです。今作は誰に向けて作られた物語なのか、どういう人たちにウケるのかな、と思うのですが、これが案外、万人受けする設定になっているのではないでしょうか。特に狙っていなかったのに、見る人はみんな自分が狙われたように感じる内容だったと思います。自分向けに作られた作品だ、と感じることが出来るというか…。

グルメ好きにもデート好きにも、恋愛に興味がある人も否モテの人もモテモテの人も、大人も小中学生も「なんかおもしろいね」と感じるドラマ。気楽にみられるんですよね。「おつまみ」みたいなドラマです。

男性のメニュー

毎回、主人公がその気にさせられてしまう、というのがパターン化された漫画みたいで面白いのですが、いや、そんなんでは落ちないでしょ、と思いつつ、「取材」という設定でなければ、やっぱり落ちるものなのかなと考えたりして。男性のラインナップの秀逸さに感心しました。周りにいそうな人たち、平均点よりちょっと上の、でも上すぎない、そういうのが絶妙で、男性の種類もこんなにあるんだな、と食事の種類以上に楽しめました。色々な男性によって、主人公もそれとなく合わせるので、一人の人間が相手によって違ってくるのも興味深い。料理の食材の組み合わせが何通りもあるように、人間の関係も組み合わせによって味が変わるものだなと改めて思ったりしました。気に入った人が現れるまで、いろんな人に出会ってみる必要はあるんだろうな。分かっていはいるけれど、そうもいかないので、このドラマを見ると、出会いの疑似体験ができてお得だったように思います。カップルを客観的にみられるというか…、男性側の心の内は表面化されていないのですが、主人公のものの考え方や男性の観察力が冷静なので、勉強になったりもします。(で、冷静かと思いきや、乗せられてしまうところに好感が持てました。)

孤独なのかどうか

自分に置き換えると、好きな人との食事に勝るものはないので、どんなに素敵なお店で素敵なお料理でも、初対面の人とはリラックスできないと思います。それならいっそ、一人で思う存分おいしいものを堪能する方がよくて、今作「女くどき飯」よりも「孤独のグルメ」の方が好きでした。「孤独のグルメ」はまさに、「飯」との出会いを表現し得ていると思うのです。そうすると、「女くどき飯」は「飯」との対峙の仕方に雑味があると言えます。

個人的にタイトルのことを言うと、「女くどき飯」のほうが「グルメ」のイメージ、「孤独のグルメ」のほうが「飯」のイメージですが、そこを取り換えてタイトルにしているのに意図を感じて、なかなかうまくつけられているな、と感じます。グルメを飯と言ってみたり、飯をグルメと言ってみるのは、粋ではないでしょうか。また、「孤独」で言えば、どちらが孤独なのか…なんて思ったり。

実は新ジャンルかもしれないドラマ

どちらの作品も、食事というリアルな現実に「こんなことできたらいいなあ」という夢がのっかっているのが、魅力で、結局人間に生まれたからには、おいしいものが食べたいのだ、そんな本性を丸出しで視聴するに堪えうる内容なのだと感じます。「この人」は何をいつどんな時に食べるのだろう、主人公と自分とのシンクロがある分、出てきた料理を味わっている感覚もリンク出来てよかったりします。

大衆向けの食レポバラエティ番組とは違って、静かに極々、個人的な話に仕上がっています。そうすることで、お店を紹介されて「行きたーい。食べたーい」と欲求が沸くにとどまらず、ほぼ食べたような思い出になってしまうのだと思います。バラエティ番組で紹介されていたお店、に行くのも楽しみですが、「女くどき飯」で食べていたのは、これだったのかーと実際に口にする方が思い入れの強い食事になるような気がします。ドラマに出てくる人物はフィクションなのに、お店や料理は実在するのだから、面白い次元に立たされるんじゃないでしょうか。雑誌とブログの間の子のような…ありそうでなかったこの手のジャンルは、映画にするほどではないけれど、小説や漫画では物足りない、ドラマがちょうどいい、ドラマという映像作品の枠に、丁度ぴったりなジャンルだと思います。このジャンルこれからも増えていくのではないかと、また増えるにしたがって何かもっと新しいものが出来るのではないかと期待してしまいます。

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