タイタンの妖女が示す生き方
ある男の一生の話
マラカイ・コンスタントという男の人生を通して、生きる意味や愛、戦争、それらの哲学を描くとてもスケールの大きい作品だ。
地球から始まり、火星やタイタン、宇宙を必然のように旅をする羽目になるマラカイ・コンスタント。
彼は運命に翻弄されることで人生を消費していく。
その運命を作り出していると思われる、神のような男がラムファードだ。
ラムファードはすべてを知っているような顔をして、誰も彼もを利用していく。
全能の神のように思われていたラムファードも、実はトラファマドール星人に操られていただけに過ぎなかった。
トラファマドール星人はたったひとつの部品を、仲間に届けるために地球人を翻弄し、すべての運命を操っていたのだ。
確かに、発想としてはとても面白く、この壮大なストーリー、結末のあっけなさが、この作品の魅力であることは間違いない。
利用されるということについての反応
作中、自分が利用されていたことを知ったときの反応が興味深い。
ラムファードの妻、ビクトリアは「自分を利用してくれてありがとう」と述べる。
一方、ラムファードは普段の彼からは想像もつかないほどに怒る。
ラムファードは、冷静で、権力や商用主義に興味がないように見えたし、むしろ、それらをばかげたことだと思っているようにさえ見えた。
しかし、彼は実は、すべてを見透かし運命を手中に捕らえている一種の快感を覚えていたのではないだろうか。
そして、自分は普通の人間とは違う、特別な存在だと思っていたのに、トラファマドール星人にとっては、ほかの人間と同じように、部品を届けるための駒に過ぎなかった。
友人だと思っていた、トラファマドール星人に利用されていたという、裏切られた悲しみも感じたのだろう。
彼も、神ではなかった。ただの人間だったのだ。
生きる目的とは何か。
宇宙旅行や、火星人との戦争など、SF的要素を多く含むこの作品の主題は、生きる目的とはなにかということだ。
タイタンの怪女では、愛や宗教などを生きる意味として提示することはないし、むしろ、人間に生きる意味などないのだと書いているようにも思える。
しかし、この小説は「人間に生きる意味などないのだから考えるだけ無駄だ」といいたいわけではないだろう。
たとえ誰かの運命のための駒として翻弄されていたとしても、自分の中に生きる意味を見出すことはできる。
その意味を誰かを利用することや、誰かに利用されることに見出してはいけない。
そんな人間であるべきだと、述べているように、私は思う。
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