怪談のオムニバス - 七不思議レストランの感想

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七不思議レストラン

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文章力
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キャラクター
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感想数
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読んだ人
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怪談のオムニバス

5.05.0
文章力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

不安を解消してくれる解説

七不思議のフルコースを頼んだはずが、七不思議どころではなく13不思議紹介されています。これは読んだ子どもたちが、「自分もあの世に連れていかれてしまうのでは?」という不安を抱かせないようにするための作者の心づかいなのでしょう。電話での忠告を最後まで聞かず、よくばったおばあさんは「あの世」に連れていかれてしまいましたが、解説まで読んだ人はその不安から解消されたことと思います。どこの学校でも七不思議といわれる類いの怪談が存在しています。そのなかにはこの本にも書かれているように、七不思議全部を知ったら死んでしまうというおまけ付きのものまであるようです。ここに紹介されている七不思議(13不思議)の中にも耳にしたことのある話があったと思います。七不思議全部を知ったら死んでしまうというのは大袈裟ですが、そんな話を七つも聞いたら怖くて一人でいることができなくなってしまいます。七不思議を通り越して13不思議を聞いたので大丈夫というのもおもしろい設定でしょう。解説には13不思議となっていますが、本のところどころで二宮金次郎と学校の七不思議まで紹介されています。すべて読み終わったころには13不思議どころか27不思議になっているので安心ですね。

これこそ本当の魂の声?

オムニバスの中にどうしても孫の顔を見たかったおじいちゃんの話と、自殺を止めてほしかった女の人の話が出てきますが、ここには人間の二つの心理が描かれています。それは表に出ている素直な感情がそのまま幽体となってあらわれているものと、心の底にある本当の思いの方が幽体となってあらわれているものです。

おじいちゃんの方はかわいらしい素直な気持ちがそのままあらわれています。今すぐにでも動いて孫の顔を見に行きたいのに動けない。動けないので孫に来てほしいけどきてくれない。そんなもどかしい思いが体から飛び出し孫のもとへと飛んで行ってしまったのでしょう。滑稽なのが体から抜け出すことができた魂が、たらいは通り抜けられなかったことです。そして自分の自殺を止めた女性ですが、心のどこかで「自殺を止めてくれる人がいたら自分はまだこの世で生きる価値がある人間なんだと思える」という気持ちがあったのでしょう。言い換えれば本当は死にたくない気持ちのほうが強かったのかもしれません。

これはどちらも生霊といわれるものです。人は思いが強いとその思いを伝えようと体から魂が抜けだすことがあります。「虫の知らせ」という言葉がありますがこれもその類で、魂が成仏してしまう前にどうしても会いたい人のところへ魂が訪れると言われています。二人とも瀕死の状態というわけではありませんでしたが、精神的には同じ状態に陥っていたからこそ魂が抜けだしたのかもしれません。

会ってみたい?学校わらし

「ざしきわらし」というのはよく聞きますが、「学校わらし」というものもいるようです。「ざしきわらし」が家を守る神様であれば、「学校わらし」は学校を守る神様のようです。学校に一人でいる時、ふと物音がしたり誰かが通った気がしたりする時があります。たとえ数人といても物音の発生源がわからなければパニックになり、廊下を走って逃げた覚えがある人もいることでしょう。しかし、ここに書かれているようにその原因が「学校わらし」によるものであれば怖くないとはいかないまでも、多少怖さが軽減されるでしょう。

ここでは「学校わらし」がいるかどうか確かめる方法まで書かれています。子どもたちの呼びかけに応じるかのように窓がガタガタいったり、廊下を走る音がしたりしています。ひとりごとを言ったり、ふと何か思いついたりしたときタイミングを見計らったように音が鳴ることがあります。これは「ラップ音」と呼ばれるものですが、これも霊などが返事をしてくれているという考え方もあります。同じ目に見えない存在でも、悪霊ととるか守護霊ととるかでこちらの受け取り方も全く変わってしまうでしょう。

昔ばなしは怪談ばなし?

この「怪談レストラン」のメニューの中には、怖い話というよりは昔ばなしに近いものも含まれています。「江戸ふしぎ話」や「ふしあなの血」「かくされた宝」「水底にうつる妻」がそれにあたります。昔ばなしの中には鬼や妖怪・神や仏といった目に見えない存在が関わっている物語がたくさんあります。現在と違ってむかしの人はそれらの存在を信じ、戒めとして子や孫に伝えていたようです。人は怖いと感じるとき行動を制限したり、慎重になったりします。そのため怖い話というのは人を戒めるのには最適な話なのでしょう。ここでも欲張ったり、でたらめなことを言ったり、人の忠告を聞かなかったり、嫌がらせをしようとした人たちが痛い目にあっています。怖い話の中にもよく考えると、そういった戒めが含まれている話があるのかもしれません。ただ怖がるだけでなく、なぜそうなったのか考えながら聞けばまた違った見方ができるかもしれません。

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