麻雀レクチャー物語in女子プロ界 - 打姫オバカミーコの感想

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打姫オバカミーコ

5.005.00
画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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麻雀レクチャー物語in女子プロ界

5.05.0
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
4.5
演出
4.5

目次

レクチャー漫画を目指したものは多々あれど

あの煩わしいルールを覚えるという麻雀入門者第一の壁を乗り越えた先には、さあ早く切って!と要求されるようになるまでの猶予期間の間に大体の牌理を覚えるという挑戦がある。ミーコはリャンメン待ちの重要性すら会得しないままビジュアルだけで女子プロになったという、プロ即落ちこぼれというバッドスターターだった。幸せの形、というほんわかした言葉に何かしら片ちんの気合が乗っているように感じられて始まった、一度上り詰めて落ちた者との二人三脚な師弟関係は、片ちんの代表作と言って過言ではない名作になることになる。世に初級者向けを意識してレクチャー気味に描いた麻雀漫画は数あれど、これほど丁寧で工夫が光っていて、信頼感があって本格的なレクチャー漫画は他にない。

激突!男と男、男と女、女と女

片ちんがこれほど女性を描いたのは初めてのはずだ。女子プロの世界の厳しさを描き、その上に我鷹の君臨を描いて軋轢を生み、非我鷹派の波溜とミーコは孤立してささやかに結びつき、熱いバトルに発展することになっていく。師弟間にひびが入ることもあり、人間ドラマとして、片ちんのどの作品よりも人情深い。キャラがそれぞれ、以前より周りが見えたキャラが描けていて、麻雀プロ界という一つの社会を、生き物のように描きこなしているように思えるのは、片ちんの老成だと言うと大げさだろうか。何となく、集団と個人、派閥、対立、と言ったものを多く書いてきた経験が光っている気がするのだ。

絵の完成、可愛い女子プロ

どうしても、留保してしまうことがある。片ちんは絵がゆるい。人に勧める時、一人で没入する時、どこか、絵がぬるいけどね、という留保をしてしまう。もちろん画力というのは上手い下手とはちょっと違っていて、個性がある方がいい時も多いことは知っている。でもこのゆるさは、果たして芸術的なのか。何かのリズム感はあると思う。表情もうまく描けている。非現実的な髪型なども、絵にマッチしていてプラス点だ。さて、問題はミーコが可愛いか、波溜がかっこいいか、である。答は是。ミーコを始め、出てくる女子プロはそれぞれがそれぞれの魅力を持った愛すべき存在で、男たちも、ややもさい感のあるキャラが多いのもあるが、波溜、我鷹あたりは男である。スーパーヅガンの頃の絵はもっとふにゃふにゃしていた。別にふにゃふにゃしていてよかった。明菜ちゃん可愛かったし。そして絵柄はより直線的な感じに変わっていった。背中に定規が入ったような感じというか。往年のタッチもまた見てみたい気がするのは、ファンゆえの贅沢だろう。

打ち手の個性と打牌の個性

女子プロたちは皆それぞれ違う方向に可愛らしいが、性格もまた様々で、でも社会性を持って一つの業界を盛り立てている。そんな彼女らの打ち方には一人一人個性が与えられていて、この書き分けがうまく、ミスチョイスのように見えてさえ、解説で絶妙にフォローしたりする。僕が好きなのは猟子、寧香あたりだが、猟子の女子プロ撲滅戦の、女子プロをバカにすんじゃねえ、の件は心に響くものがあった。寧香の繊細なリアル打ちも大好きだ。最強の座と目されながら常勝でないのもそれらしくてよい。

物足りないまでの現実感

勝者は移り変わっていく。未熟なミーコでさえタイトルを持ち、寧香もミスはないものの常には勝たない。出てくる牌姿は毎回のテーマであるレッスンを踏まえたものが多いが、ドラマティックでもなければうそ臭くもない自然なものである。今までの片ちんのように展開が踊らない。お遊びも控えめだ。そして女子プロの(多分順調で理想的な)日常が描かれ、ミーコは雀荘にゲストに行ったり、大会に出たり、一つの職業を生きる仕事人である。もちろん漫画である以上、色んな出来事が起こる。それでも、どこかいい意味で抑制の利いている、メンピンツモに裏があるかどうかぐらいの現実感が横たわっている。

成長という有効期限

現実感という縛りがあり、レクチャー漫画として息長くやっていくと、いずれミーコが成長して打てるようになり、女子プロとしても先輩となって指導もするようになり、女性には厳しいが、年増の域へと踏み込んでいくことになる。実際、精神的にも成長したミーコは読者にも「強さ」を感じさせるようになり、読者がちゃんと成長して追いついているのかというレクチャー度合いは知らないが、気がつけば平均より上の打ち手(そりゃあプロだから)に育ってしまうことになる。そうなると、レクチャーの終わり、物語のエネルギーは使い果たされ、ベクトルは0になる。あとは最終回、そして世界観を共有する『満潮!ツモクラテス』にちょい役で出るという運びになるのであった。

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