単純な物語ですが肉付けが凄い!
作画のクオリティーは低い
自主制作アニメなので、営利目的で制作されたアニメ作品ではありません。個人の趣味で制作された意味合いが強いのでしょう。しかし、個人レベルで、このレベルのアニメ制作ができたことが凄いことではないでしょうか。
しかも、声の吹き込みまで行われており、プロではないのかもしれないですが、声優まで起用されています。ここまでの完成度で仕上げることが可能なのだと、改めて感心させられます。
一般のアニメ作品に比べて、作画が見劣りするのは当然のことだと思います。しかし、他の部分で補うことができている秀作アニメだと感じます。これだけのアニメ制作を個人レベルで行い、どれだけの時間を要すものなのか、聞いてみたい気がします。
また、制作するのに要したコストは回収することができたのでしょうか。機器も購入されているのでしょうし、声の吹き込み作業をするのにスタジオを借りたりされたのでしょう。
それを考えれば、作画のレベルは十分なものだと感じますし、アニメ作品自体の完成度は高いレベルのものだと思います。
眼鏡を賭けた戦い
それだけの話をここまで膨らませたことも素晴らしいことだと思います。ただ、率直な意見ですが、千里サツキは眼鏡が似合わないのではないでしょうか。むしろ、脇役として、カエル兵器を量産していた森山文子の方が、眼鏡の似合うキャラクターだと思います。
眼鏡をかけようとするだけで、そこまでブチ切れるサツキがアニメらしい突飛なアイデアで面白いものだと思います。また、眼鏡をかけることに執着する主人公、銀縁めぐむにおいても凄い発想ではないでしょうか。プロであれば、この内容を発想しないでしょうし、アニメ化されることもないと思います。
まさに自主制作アニメらしい内容だと感心させられます。
学生時代に落書きでつくった漫画のノリで、制作されていることが伺えて懐かしい気分にすらさせられます。
作品タイトルのイメージに反し、バトル展開が多く、サツキの圧倒的な強さは「無敵看板娘」を彷彿とさせます。しかし、「無敵看板娘」の主人公である鬼丸美輝(おにまる みき)より、「眼鏡」のサツキの方が強いのでしょう。それだけに、このアニメ作品におけるインパクトは強いものになっています。
色んな作品からのパクリが!
色んなアニメ・マンガ作品の要素を取り込まれており、その扱い方にもセンスを感じさせます。
サツキがブチ切れて変身するのは、どう考えても「ドラゴンボールZ」のスーパーサイヤ人なのだと思います。髪の色こそ、赤色を基調としていましたが、戦い方などはドラゴンボールを再現されていました。息をつかせぬ連続攻撃など、まさにドラゴンボールの印象を強く受けます。
そして、急に格闘ゲームのノリに展開されるのも、意外な展開であり、意表を突かれました。この部分は笑わせることを狙って、意図的に演出されているのでしょう。超必殺技まで再現されていたのは、さすがに笑いを通り越して凄みを感じました。
そして、カエルの新兵器が次々と登場したのは、ケロロ軍曹をイメージしているように思います。
さらに、サツキと銀縁の空中戦においては、デビルマンレディーを思わせる変身をして、髪の毛が翼になっていました。
一般のアニメ作品では、ここまで堂々と他のアニメ・マンガ作品を扱うことができないでしょう。
そのことから、自主制作アニメならではの強みを存分に発揮していることが伺えます。ただ、面白さを追求する為にやりたい放題の姿勢が感じられ、好感がもてます。
感じられる強いメッセージ性
ひたすら笑いに徹底されているようなアニメ作品ですが、切ないメッセージが込められていたように思います。サツキが眼鏡を嫌う理由は、過去の出来事に起因しており、何気ない言葉・態度に傷ついたことにありました。アニメ作品における展開のひとつと受け取ることもできますが、これは制作された方からのメッセージなのではないでしょうか。
同じようなことが思い当たりませんか?
同じようなことをしていませんか?
傷付けられた方の痛みが分かりませんか?
コミュニケーションは社会生活で、必要不可欠なものだと考えられます。しかし、やってはいけないことがあります。言ってはならない言葉があります。超えてはならない境界線は間違いなく存在すると思うのです。そんなメッセージ性をサツキに重ねることで、観る方に感じてほしかったのだと思えて仕方ありません。
そして、嫌な過去の経験を抱えている人に対しても、メッセージ性を汲み取ることができます。
抱えているばかりではなく乗り越えることをしてみませんか?
乗り越えることができたら、きっと違う世界が広がっていますよ?
そんな制作された方の気持ちを感じられるように思います。きっと制作された方においても、過去に同じような経験をされた方なのか、と推測させられます。そうじゃなければ、こういった物語の展開を思い付かないように思えてなりません。
単純な物語構造に込められた想いの強さ、メッセージ性も含めて素晴らしいものではないでしょうか。
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