現代社会や家族のあり方についての問題定義をする作品
この作品の真の目的
ドラマでは、吉本が置いていった劇団のチラシによって慎一がたどり着いた真実が果たして本当に真実だったのか、吉本以外誰が本当の真実を知っていて、吉本の行動の理由はなんだったのか、最後の最後でまた新たな謎を提示される終わり方となっていて、想像力を大いに掻き立てられる。私はそのように視聴者に疑問を投げかけ、考えさせることこそがこのドラマの目的なのではないかと考えている。作品は一見、本物の家族の絆というものをフューチャーしているように見えるが、平凡な家族を他人が介入して壊し、無理やり再生させることが本当に正しいやり方なのか、そもそも慎一が校正して家族を再生させたのが偶然で吉本の目的は幸せな家庭を壊すことではなかったのか、吉本はサイコパスなのか、等々、何が真実か分からないにしても、仮面家族・引きこもり・他人への無関心や不介入・精神的異常など現代社会の闇部分にこの作品が迫っていることは事実である。それらの問題をあえて取り上げ、実際には吉本のように無理やり隠れた闇を引き出してどうこうしようという存在は現れないにしても、それを私たちに提示して、普段は蓋をしている問題について考えさせる、というのがこの作品の目的のように思う。
吉本荒野という人物
櫻井翔くんのオーバーな演技はどうかと思ったが、吉本荒野のキャラクターは破天荒で、残酷なまでに冷酷な一面を見せることもあれば、時たま人間らしく温かい面が見えたりもして、どこか憎めない人物像になっている。しかし、気になるのは本物の吉本荒野(忍成修吾)に関しては過去や家族が登場しているのに、吉本荒野になりすましていた田子雄大(そもそもこの設定が真実かどうかも怪しいが)については吉本との関係やある事件について以外、生い立ちや家族関係などの個人情報が一切見せられていない。慎一が知った過去が真実であるならば、田子の目的は果たされ、吉本は許されるのか。もしも沙良が語った過去が真実ではなく、実は田子が本物の吉本荒野であれば、吉本に仕立て上げられた人物(忍成修吾)は誰なのか、吉本が沼田家に近づいた理由は?等々妄想が止まらない・・・。勝手な考察をすると、彼はやはり問題を提起するためだけに現れた偶像なのではないかと思っている。その辺は原作の小説を読めば分かるのだろうか、とも思ったけれど、今は想像しているのが楽しいので、敢えてまだそれはしていない。
現代の家族の形
現代の家族は、核家族や共働き家庭などで以前よりも人との関わりが減り、沼田家のように家族に問題が起こっても見て見ぬ振りをしたり、問題自体に気が付かないこともあるのだろうと思う。そしてその結果、問題が大きくなり、他人を傷つけたり社会問題にまで発展したりすることをこのドラマは示唆しているのではないかと思う。自分自身このドラマを見て社会問題や家族のあり方について考えるきっかけとなったし、同じように考える人がいればうれしいとも思う。また、サスペンスという側面でこのドラマに対して別の見方をする人があれば、それはそれで面白く、意見を聞きたいと思う。
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