櫻井吉本の破壊力 - 家族ゲームの感想

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ドラマレビュー数 1,147件

家族ゲーム

4.254.25
映像
3.75
脚本
4.25
キャスト
3.75
音楽
4.25
演出
4.50
感想数
2
観た人
8

櫻井吉本の破壊力

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

 私はアラフォーだから家族ゲームと聞けばやはり思い出すのは長渕剛である。当時小学生だった私は、長渕演じる破天荒なあの家庭教師を目にして衝撃を受けた。親の前だろうが生徒を殴る蹴る、引きずり回す、もはや勉強の範疇を超えてあのアパートの狭い勉強部屋は人間力をためす鍛錬の場と化していた。しかし不思議とこの暴力教師に嫌悪感は感じなかった。おそらく、そこに愛情があったからであろう。長渕版家族ゲームは、最後は非常にやるせない終わりを迎え、良くも悪くも私の中で忘れられない一作品となった。そんな作品を、平成の今、トップアイドル嵐の櫻井翔が演じる、と聞いたときは申し訳ないが鼻で笑ってしまった。あの作品を櫻井くんが…?恐らく無理だろう。そう思った人は多かったのではないだろうか。

 しかし予想は裏切られた。櫻井翔、素晴らしかったのである。異常なる家庭教師、吉本荒野を完全に演じきっていた。そしてこの作品は登場人物1人ひとりが光っていた。自分の出世しか頭にない父親、自分を守ることで精一杯で子供に無関心な母親、優等生のふりをしながら心に狂気を秘める兄、いじめによる不登校に苦しむ弟。彼らの住む豪邸は美しいのだが寒々しく、彼らの関係を象徴するかのようだ。その中に吉本荒野が入って、すべてを壊していく。その壊し方は凄まじく、テレビを見ながら何度も途方にくれた。人間は死を感じた時に初めて生を感じる。彼の言葉だ。吉本は、バーチャルのような今を生きるこの家族を時に死を感じさせながら、生に目覚めさせて行く。

 最後はこの家族たちは豪邸を自ら破壊していく。この行為を経なければ、彼らの家族の再生はなかった。家族の死、そして誕生。長渕吉本は家族の再生までは残念ながらできず、その空しさが私の人生の中で何度も反芻されるのであるが、櫻井吉本はそれを成し遂げだ。とても、清々しい最後であった。良い意味でこの作品を切なく思い出すことはないだろう。

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現代社会や家族のあり方についての問題定義をする作品

この作品の真の目的ドラマでは、吉本が置いていった劇団のチラシによって慎一がたどり着いた真実が果たして本当に真実だったのか、吉本以外誰が本当の真実を知っていて、吉本の行動の理由はなんだったのか、最後の最後でまた新たな謎を提示される終わり方となっていて、想像力を大いに掻き立てられる。私はそのように視聴者に疑問を投げかけ、考えさせることこそがこのドラマの目的なのではないかと考えている。作品は一見、本物の家族の絆というものをフューチャーしているように見えるが、平凡な家族を他人が介入して壊し、無理やり再生させることが本当に正しいやり方なのか、そもそも慎一が校正して家族を再生させたのが偶然で吉本の目的は幸せな家庭を壊すことではなかったのか、吉本はサイコパスなのか、等々、何が真実か分からないにしても、仮面家族・引きこもり・他人への無関心や不介入・精神的異常など現代社会の闇部分にこの作品が迫っているこ...この感想を読む

4.04.0
  • kurumikurumi
  • 269view
  • 1274文字
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