不器用ながらに一途に相手を思い続ける心 - 恋空〜切ナイ恋物語〜の感想

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恋空〜切ナイ恋物語〜

4.504.50
画力
4.25
ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.25
感想数
2
読んだ人
2

不器用ながらに一途に相手を思い続ける心

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.5
設定
4.0
演出
3.5

目次

スケールを感じさせる人生を見上げたくなるタイトル

高校生のなんとも初々しい恋愛模様を背景に、持ちつ持たれつの人間くさいドラマが描かれる。ケータイ小説から始まり、漫画化、映画化、ドラマ化までされている。若い世代の恋愛物語とはいえ、万人の胸をうつストーリーになっているからであろう。空は限りなく続く。そして、晴れた日もあれば曇りの日もあり、時には嵐となって自然界に降り注ぐ。日々その顔色は変化している。それは人間も同じだ。いいこともあれば悪いこともある。見方がいれば敵もいる。もしかしたら敵だった人間がいつか見方に転じるかも分からない。操作できない人間の気持ちを恋愛を使って空のように見立てているように私は感じるタイトルだ。まだあどけなさが残るタッチでかわいらしく描かれた高校生が繰り広げる人間模様は、大きな空の下展開されていく。それぞれの人物がどのように成長していくか、気になって仕方がない漫画だった。

恋愛にみる人間模様の豊かさと成長

ほとんどの人が誰かを好きになったりしたことがあるだろう。それが成就すれば最高の幸せになるし、その逆もある。時には嫉妬する感情が生まれ、妬ましいあまりに苦しむこともあるはずだ。恋愛ひとつで人はさまざまな感情を育てて豊かになる。そして強くなる。主人公美嘉がヒロと付き合った当初の困惑する姿、最初は美嘉に本気でなかったヒロの姿は、恋愛に慣れた者とそうでない者と対照的に感じさせる。なぜ二人は付き合ったのだろう。距離のある両者が足りないものを補おうとしているように思える。でもきっと最初はそれに気づいていない。ただお互いを意識することが感情を育てる第一歩になる。なぜ付き合ったか。二人の周囲に取り巻く人物たちが登場することでそれを問うている。二人を応援する友、激しく嫉妬し憎悪する元カノ。特に元カノの度重なる嫌がらせが二人を強くし、距離を縮め、絆を深めていく。それにしても、高校生でそこまでひどい嫌がらせをするものだろうかと思う。強く突き飛ばされたり、レイプさせるようにたくらんだり。高校生という多感なときだからこそ、歯止めの利かない憎悪を表現したのだろうと思うが、もともとは実話によるものと考えると、おそろしいことを実行してしまう危険を含んでいるものだ。これは見ていて悲しいが、ただなくてはならないスパイスである。突き飛ばされた影響で流産してしまった子供を後生気にかけ、忘れない姿は、命の大切さを問いかけるメッセージにもなるし、次の段階への伏線をはらんでいるように感じられる。

二人の葛藤を描く、大きな転換期

私が最も印象に残っている場面は、ヒロが自分の病気を知り、その病気のせいで美嘉を苦しめることになると判断して美嘉を激しく突き放すところだ。本当だったら一番大切な人に側にいてほしいと思うだろう。少なくとも私だったらそう感じてしまう。それが後ろ髪を引っ張って激しく拒絶することは絶対できないと思う。高校生のヒロが下した決断、そして実行する意志の強さがこの物語の転換期としてより多くの読者をひきつけるのである。美嘉と付き合うことで落ち着いた生活を送るようになったヒロが荒れた生活を繰り返してしまう。それがシンナーや乱交パーティーなどという高校生らしからぬ行動を引き起こす。どんなに拒絶されてもあきらめきれない美嘉、美嘉があきらめない限り狭間で苦しむヒロが本当に相手を思いやる気持ちを苦しみの中で育ててゆく。そして二人の葛藤は終わり、それぞれ別々の人生を歩む中で、恋愛への経験も増やしていく。だけど、その演出がなおさらヒロを、そして美嘉を忘れられないという強い思いを表現しているのだ。ひとつひとつの演出が横に広がっているように見えて実は同じ集結点に結んでいる。幅を広げて帰るべきところを示している。この単純で分かりやすい点が多くの人に共感されるポイントとなっている。ただ、個人的には、美嘉の思いを汲み取り、その思いのままに羽ばたかせることができる二人目の恋人、優の心の大きさも讃えたいところだ。

命もテーマに、二人を強く結びつける

そもそもこの漫画は単純な恋愛漫画ではない。最後まで読み続けると命が大きく組み込まれている。ハッピーエンドでは終わらないラストはなかなか衝撃的だった。自分が高校生のとき、命についてここまで考えさせられることはなかったはずだ。二人の場合は、流産した子供の悲しみからそれが続いている。そしてその子供がまた二人をつなぐ架け橋として描かれる。実は決して軽いテーマではなかったのだという事実が映画、ひいてはドラマにまでなった要因ではないだろうか。抑えてきた二人の感情が、ヒロの入院を美嘉が知ることで爆発、それまでの空白の時間を埋めるようにまたつむぎだしていく。美嘉を突き放したヒロの判断が必ずしも正解だったとは思わない。逆に間違いでもない。だけど、その行いに含む思いは空が見ていて、必ず繋ぎ合わせてくれる、そんな感情を持たずにはいられない。やがてヒロは亡くなるがその子供が美嘉に宿る。希望は忘れるなと空が語りかけてくれる物語である。

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