吹き出し注意!ストレンジ・プラスの面白さとは
個性豊かなキャラクター
連載開始から10年以上たち巻数も10巻以上と、美川べるの先生の代表作でもある「ストレンジ・プラス」
ギャグ満載の本作を支えているのはやはり、個性豊かすぎとも言えるキャラクターを抜いては語れないのではないでしょう?
家出した兄を何年も探し、ようやくスラム街の一角で探偵をしているのを見つけた弟の「恒君」大好きな兄をようやく見つけたと言いながら、札束で兄の顔を叩いてみたり。兄も兄で弟を目の前にしながら部下に向かって「所長は裏口から出掛けましたと言え」と言ってみたり。文章ではなかなか伝わらないでしょうが、読んだことがあるかたならキャラだちのすごさは良くわかるのではないでしょうか。
一人のキャラクターに突出した一つの個性ではなく、いくつもの個性を練り上げて一人のキャラを作るというのは、口で言うほど簡単なことではないと感じます。
もちろん美川先生がそこまで計算されているのかはわかりませんが、計算されていないのであれば、それはもっとすごいことですよね。あれだけ大勢のキャラクターがきちんと一人ずつ魅力あるキャラクターになっているのはストレンジ・プラスの大きな魅力のひとつだと感じます。
もちろん主役級の二人だけではなく、出てくるキャラクターたちはこれでもかと言わんばかりに個性豊か。美川先生が描かれている他作品でも言えることですが、キャラの立たせ方はピカ一だと感じます。
独特の台詞回し
ギャグ漫画なのでそんな馬鹿な!という展開は良くある話ではありますが、美川先生の作品を外で読んでいると吹き出してしまうことが多く、危なくて家でしか読めない、という人が多くいるみたいです。
それはやはり、独特の台詞回しがツボに入ってしまう人が多いからなのではないでしょうか。
漫才などでも突っ込みの台詞やボケの台詞は一辺倒なものではすぐに飽きられてしまうものですが、思っても見なかった方面からの突っ込みやボケというのは記憶に残りやすいのではないかと感じます。
言葉のセンスが絶妙な上に、緩急の付け方もうまいので勢いだけで笑わせている感がなく、一度読んだだけでは終わらずに、何度も同じところで笑うことができるのではないでしょうか。
読み返したくなるギャグ漫画というのはなかなかないですよね。
幼い頃を知られている苦手な先生にお茶を入れる際、「あとは愛情込めて」で投げキッスをしたら不気味な生き物に変化!「愛情込めすぎた!くそぅ、加減が難しい」なんて、どんな生活をしていたら思い付くんでしょうね?
一歩間違えば不条理ギャグになってしまい、人を選んでしまいがちなネタでも、普通に笑えるのは
言葉の選び方が上手いからなのではないかと感じます。
古典的なギャグも満載
元々はアンソロジーから漫画家になられた美川先生ですが、ご本人は古典的なギャグも大好きで、
ストレンジ・プラスでもしばしば足ずっこけ、爆発オチなども。あざとすぎるやり方をすると受け入れられないこともあるギャグですが、美川先生のギャグが多くの方に受けているのはご本人がゲームや漫画、BLなども大好きで日々色んな作品に触れているからではないかと感じます。
自分の気分と頭のなかだけで漫画を作るのではなく、今の流行りや、オタクというものが徐々に受け入れられはじめてから、漫画にもそういった要素をタイムリーに入れることができたというのも大きいのではないでしょうか?
アンテナを大きく張っておられるのでいわゆるニッチと言われるようなものも、作品のなかにどんどん取り入れています。ここで、このギャグ入れてくるんだ!という思いは強烈に心に残るものなのではないでしょうか?
絵の変遷
最初の頃を思うとずいぶん絵柄が変わってきたような気がします。長年か描き続けておられる以上、ある程度の変遷はあるものでしょうが。ゲームのアンソロジーから漫画家になられたと書きましたが、美川先生が愛してやまないのが「メガテン」「ペルソナ」シリーズ。ゲームの絵に多大な影響をうけておられたので、初期は人を選ぶ絵柄でした。
ご本人も自分の絵は怖いといわれる、と悩んでおられたようですね。一時期は萌えキャラを描きたいとも仰っておられましたが、描いておられる漫画との相性は今の絵柄の方がいいような気もします。
絵柄の変わりようと相まって、ギャグの質も少し変わってきたように感じられます。初期の頃の方がもっとギャグに遠慮がなく、ネタを詰められるだけ積めてしまえ!という感じがありましたが近頃ではメタネタが散見されているので、もっと初期の頃のようなある種の攻撃性を忘れないでほしいなぁと感じています。
まあ、今でも面白いことに変わりはありませんが。
最後に
探偵という舞台を選んだだけあって、兄弟の背後にある問題などもたまのシリアス展開で挟まれていますが、とっても小出しなのでまだまだどんな家だったのかはわかりませんね。
いくつもの個性を練り込まれた彼らのまだ知らない面が、これからまだまだ出てくるのかもしれません。ギャグパートの面白さもさることながら、シリアスパートでも続刊が待ち遠しい漫画のひとつですね。
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