大切なのは開き直り - 砂時計の感想

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砂時計

4.004.00
映像
4.00
脚本
3.50
キャスト
4.00
音楽
5.00
演出
4.00
感想数
1
観た人
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大切なのは開き直り

4.04.0
映像
4.0
脚本
3.5
キャスト
4.0
音楽
5.0
演出
4.0

目次

お母さん、貴女はなぜ自殺したの?

離婚して戻ってきたお母さん。娘をつれて、厄介者と思われるのもいやかもしれないけれど、貴女はなぜ自殺したの?お父さんが浮気して他の女の人に略奪されたわけでもなく、経済環境が整うまでの一時的なお別れだったのなら、なぜそうしなければならなかったの?娘が傷つくと思わなかったの?実家に帰って、家賃の心配もなく生活できるのに、迎えを待っている間を食いつなげばよかっただけでしょう?たとえ迎えが来ないかもしれないと思えても、娘がいるのにどうして頑張れないの?貴女はあまりにも弱すぎる。ああ、貴女は病気だったのかも…。うつ病にかかってしまったのかも…。偶然にもこのタイミングで病魔に侵されてしまったのかもしれませんね。そのために娘の杏は、貴女の自殺の原因さえも自分の「頑張って。」という声掛けのせいかと思い込んでしまった。悲しい偶然としか言いようがない。

自然豊かな島根は本当にいい所

海と山の距離が近く、風光明媚な島根は本当にいい所、JR山陰本線に乗って窓から見える風景はとても美しい。杏が子供時代を過ごしたあたりも大森銀山跡など歴史的な街並みが保護されていたり、鳴き砂で有名な琴ヶ浜も白い砂がとてもきれいな場所だ。田舎なので、夜は早く暗くなるし、都会からやってくる人はコンビニもなくてカルチャーショックを受けてしまうかもしれないけれど、こんな場所で子供時代を過ごせたことは幸せなことだと思う。全国的には神無月と呼ばれる10月も出雲だけは神在月と呼ばれる根源の出雲大社もこの島根にある。もちろん縁結びの神だ。杏と大悟もデートで出雲大社を訪れている。また、仁摩サンドミュージアムは一年に一度ひっくり返る1トンの砂が落ちて時を刻む砂時計がある場所。このドラマのタイトル「砂時計」を杏が母に買ってもらう場所だ。この後ずっとお守りのようになる「砂時計」はこのシンプルな作りで過去、現在、未来をすべて網羅するもの、ひいては杏と大悟の人生そのものの象徴になっている。

もう、藤くんでもいいんじゃないの?

杏は、大悟だけでなく、藤からも愛される。杏が、二人から愛される理由は何だろう?カワイイから?もちろん顔も可愛らしいのだろうけれど、やっぱりはかなげな守ってあげたいと思わせるものが杏にあるからだろう。理由の一番は母親の自殺。親の自殺はやはり、子供の心に暗い影を残すと思う。どんなに天真爛漫な子供でも、親が自ら死んでしまったら自分を責めたり、人を責めたり、親を責めたりせずにはいられないだろう。人が信じられずに人に頼ったりできず、かといって自分のことも信じられずにしっかり維持することができない。そのことは時がたってもその子の人格に影響を及ぼし、はかなげな危なっかしい、守ってあげたくなる人になってしまうのだ。人から愛されるだけなら得とも思えるが、その弱さから人に迷惑をかけたり、振り回したりしてしまうめんどくさい人になってしまうかもしれない。

大悟は、単純でまっすぐ、でもやさしいから人を切ることができない。頼って来られれば突き放すことはできない。強がりもそのまんまにしか受け取れずに裏の気持ちに気がつくことができない。でも、藤は自分の出自を疑っていたりしてちょっと屈折しているし、何より頭がいい。器ということを考えれば、多分大悟より大きいんじゃないかな?だから、大悟なんかより、藤くんを選んだ方がずっと幸せで楽しく過ごせるんじゃないの?優しいし、裏の気持ちを考えることもできるし、何より実家がお金持ちだしね。将来のことを考えても、絶対藤くんのほうがおすすめ物件だ。

それでも、大悟の方がいいと思えるのはなぜだろう?得な方を選ばないのは、決めるのは頭ではなく、心ということなのかもしれない。

私が幸せにしてあげる

結局、紆余曲折して最後に大悟と結ばれることができたのは、杏が開き直ることができたからだと思う。

大悟は交通事故にあって歩けなくなってしまったあかねを突き放すことができずに、責任をとって婚約者になっていた。心の中では杏のことが気になっているのに、人道的にあかねを捨てることができなかったのだ。それなのに、あかねは努力して立てるようになり、大悟を開放した。大悟のやさしさにすがりついていたあかねは自分に嫌気がさし、開き直ることにしたのだ。大悟の本当の気持ちは自分に向いているわけではないことが我慢できなかったのかもしれない。女のプライドがあかねを強くしたのだ。つまり、大悟はあかねにも幸せにしてもらったのだ。

そして、雪の朝、これまでのいろいろな思いを捨ててしまおうとしていた杏は大悟の説得になかなか納得できなかった。大悟にはあかねという脚の悪い婚約者がいるのだから当然だ。他の人のことをあれこれ考えて右往左往してしまう杏の性格なら簡単にはうなづけやしないだろう。それでも、最後に納得できたのは、杏が開き直って、大悟に幸せにしてもらうのではなく、自分が大悟を幸せにするんだと思えたことが重要だった。

受動ではなく能動的な自己管理こそが、人生を幸せに導く方法なのだ。人生には開き直りが大切なわけである。


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