ディスコミュニケーションはサブカルチャーの倉庫 - ディスコミュニケーションの感想

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ディスコミュニケーション

5.005.00
画力
4.50
ストーリー
5.00
キャラクター
4.50
設定
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演出
5.00
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ディスコミュニケーションはサブカルチャーの倉庫

5.05.0
画力
4.5
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
5.0
演出
5.0

目次

男の娘に、ガールズラブ、幼児帰りに、兄弟愛。背景にはオモチャやガラクタがびっちりと埋め尽くされていますね。

1991年に`91前期コミックオープン・ちばてつや賞一般部門大賞を受賞して、デビューしています。ということは、今から約25年前の作品…!? 自分で書いていて驚いてしまいました。

今回はそんなディスコミュニケーションについてレビューしていきます。

あな恐ろしや 植芝理一の想像力

冒頭でお話したように、植芝理一作品では特殊性癖がたびたび登場します。

現代では当たり前となってしまった、男の娘だって、当時ではかなり革新的。もしくは気持ち悪いと呼ばれていたかもしれません。

こんだけごちゃごちゃと哲学や精神・宗教などが入り交ざっているため、テーマを忘れがちですが、テーマは『恋』でしたね。厳密に言えば、戸川さんの「どうしてわたしは松笛くんを好きになったんだろう?」を解決することがテーマです。

恐らく色々な恋の形を提示した植芝理一さんに意図の裏には、この疑問があるのだと思います。

戸川さんはなんだかよく分からず問題に巻き込まれていた内宇宙編でしたが、同時に現代にもっとも近く先進的だった内宇宙編でもありました。あちこちに色んな恋の形はバラ撒かれていましたが、特に密度が濃く感じましたね~。

サブカルチャーの倉庫

当時大学生だったこともあって、初期作品の冥界編では大学編もありましたね。普通の戸川と松笛くんのお話でした。あの頃のめちゃくちゃでがっちゃがちゃの学生生活がよく描かれていて、ノスタルジーに浸れる話でした。

ディスコミュニケーションには、「学生ゆえの学問への興味」や「身近な恋愛」がごちゃごちゃに混ざり合っている作品なのかもしれません。今でいえば原宿系ファッションの夢かわいい感じに近いとも思えるのです。若い人しか理解できない、すべてを混ぜてごった煮している空気が心地いいんです。若い子に人気のヴィレッジヴァンガードというお店は御存知ですか?

基本的には本屋さんなのですが、なんでも有りの本屋さんなので、若い子に人気な雑貨やCD・お菓子なども置いており、若い子の流行の先端を担っているお店です。サブカルチャー販売店と言えば伝わるでしょうか?

ディスコミュニケーションの空気感は、そんなヴィレッジヴァンガードとよく似ています。なんでも若い子の興味を詰め込んだ様なサブカルチャーの倉庫みたいだと感じています。

冥界編は、若い子の共感を得られなかった

これだけ面白い作品であるため、同級生の大学生の女の子に貸してみたのですが、「わかんなーい」と言われてしまいました。(残念!)「え、大学生と言えばディスコミュニケーションだろ!おい!」と掴みかかるわけにもいかず、なぜ女の子たちが投げ出してしまったのか考えてみました。

1.話が哲学じみてる

2.絵が古い

3.登場人物がごちゃごちゃになる(特に後半)

な、なんてことだ…。否定できない。

話が哲学じみてるので、作者もうんうんと頭を唸らせていたみたいですね。「本当にこれは完結するのだろうか…!?」と。読んでる我々も、南国の地に辿りついた戸川さんを見たときには、「あ、もう駄目かも」って思ってしまいましたね。え、私だけですか?

絵が古いと言ってしまうのはそりゃしょうがないですね。何しろ自分たちの生まれる前の作品(今の大学生は大体1992年生まれ~)なので、「古い!」と感じてしまっても仕方が無いと思います。最近の「謎の彼女X」なんかは現代の絵寄りになってますよね。(でもやはり同級生は古いと感じるようです。)

登場人物がごちゃごちゃになってしまうのは、そういう意図もあるのかなぁ~という解釈をすればなんとか否定できます。同じ顔の人間が、ぜんぜん違う人格で怒ったり泣いたりしてると、結構混乱しますけどね(笑)

もしかして植芝理一は1990年代を代表するオタクだったのかもしれない

ディスコミュニケーションを単なる「青春漫画」として解釈するのは、あまりにもナンセンスです。ではどう解釈すればいいのか?歴史漫画として解釈すべきだと考えています。「は?江戸時代でもないのになぜ」と思われるかもしれませんが、今ある言語のなかではこれがしっくりくると思います。ぱっと思い浮かぶなかでは映画になりますが、『ALWAYS 三丁目の夕日』などが挙げられますね。その時代の様子がよくわかる作品になっています。

まさしくディスコミュニケーションはこれなのです。当時のオタク文化がよくわかる作品になっているんです!

新装版の2巻、冥界編Ⅱのp.360の2コマ目では植芝理一の担当N^2Oがなぜか講義をしています。

頭にはUFOキャッチャーでとったセーラー×ーンのようなものを付け、オタカラオケの話をする。いや、これ完全にオタクじゃないですか。こんな風にちょこちょこディスコミュにはオタクネタが潜んでいます。

植芝理一はもともと落書き好きだったから、原稿にも落書きしてるのかしらん?なんて思いながら見つけると楽しいのです。

おわりに

まだまだ細かい点を炙りだせばいくらでも書けてしまう、それがディスコミュニケーションですが、そろそろお時間です。

みなさんの新しい視点のバスガイドさんになれれば幸いです。それでは、また!

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