地獄少女プロジェクトの漫画版 - 地獄少女の感想

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地獄少女

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地獄少女プロジェクトの漫画版

3.03.0
画力
2.0
ストーリー
3.0
キャラクター
2.5
設定
3.0
演出
2.5

目次

地獄通信を巡る少女たちの物語

漫画『地獄少女』は、アニメ・漫画同時期に始まった地獄少女プロジェクトによって『なかよし』で連載された漫画作品である。

どちらも人間の業を取り扱った物語であり、恨みを持つ人間の名を地獄通信というサイトに書き込むと、地獄少女が現れ、恨む相手を地獄に流してくれるというスタンスは変わらない。地獄少女こと閻魔あい、三藁こと一目連、輪入道、骨女、そしてきくりも健在である。

ストーリーも若干、アニメと同じ展開の物語があるものの、漫画オリジナルのストーリーも多い。少女漫画誌『なかよし』での連載ということも関係してか、エピソードの主人公(地獄流しを依頼する者)は少女であることがほとんどだ。

また、閻魔あいの地獄流しの段取りや仕置きもソフトに仕上がっており、より主人公のストーリーーーなぜ地獄流しを決意したかに重きを置かれる。

その理由が、彼氏を取られたとかいじめにあったとかいかにも少女漫画らしいものが多いので、アニメの人間模様が好きだった人はとっつきにくいかもしれない。

少女漫画テイストの『地獄少女』は見る人を選ぶ

アニメは三期も続いた人気作であり、ドラマ化、パチンコ・スロットとのタイアップと、『地獄少女』は幅広い展開をしてきた作品だ。特にパチンコ・スロットの遊戯者は年配者から若い男性・女性と非常に幅広く、パチンコで『地獄少女』を知り、アニメや漫画に手を出す人も多い(これは『北斗の拳』コンビニコミックスが、パチンコ・スロットとのタイアップ後、爆発的に売りあげを伸ばしたことからも証明されている)。

だが、その層にこの漫画版『地獄少女』は決してウケないだろう。

まず、目が大きすぎる。少女漫画らしいと言われればそれまでだが、作画の未熟さが少々度を越していて残念だ。毎回変わるはずのヒロインはみんな同じにしか見えず、コミックスを追っていくと「あれ?また同じ話?」と錯覚する。

ヒロインたちの表情、思考回路も全て同じ。笑顔も泣き顔も、顔の向き、大きさまで一緒で仕掛けてくる。”被害者である主人公”を強調したいためか、ほとんどの主人公に悪いところはなく、一様にポジティブシンキングなのもちょっと気持ち悪い、

アニメから引っ張ってきたエピソードは流石にテイストが違うが、漫画オリジナルのエピソードになると途端に作者の未熟さが露呈する。顔が大きく描かれすぎて構図もぐちゃぐちゃになり、叫んでいる口の形はギャグ漫画のようになる。三年にも及ぶ連載の末、少しも作画がレベルアップしなかったのはなぜなのだろうか。

少女漫画なんだからしょうがないという意見もあるかもしれないが、やはり『地獄少女』プロジェクトという看板を背負っているからには、もう少し頑張って欲しかった。タイアップというだけで読んでくれる読者もいるはずなのに、残念ながらその期待にこの漫画作品が応えたとは言いにくい。

改善懲悪ストーリーと少女漫画の狭間で

しかしながら、元は『地獄少女』というだけあって、内容は文句ない。

少女読者に共感しやすい被害者たる主人公に対して、加害者は絶対悪であることが多いから、悪人たちが地獄に流されていくのは爽快だ。”悪人”も”仕置き”も”地獄流し”も画力のせいでいまいちになってしまっているが、それさえ目を瞑れば読んでいける。

また、アニメ『地獄少女』が二期に移行したのに伴い、エピソードのスタンスを変えたことに影響を受けてか、漫画にも少しずつ変化がみられる。

例えば、被害者であることが多かった主人公が悪者だったり、主人公が地獄に流そうとしていた相手が別の人間によって地獄流しされたり…とアニメの展開によって漫画のストーリーにも厚みを増してきた。筆者としては、どんでん返しや人間の業が描かれてこその『地獄少女』だと思っているので、このスタイルチェンジはとてもありがたかった。

しかし…それは大人のエゴというもので、実際漫画版『地獄少女』を読んでいた少女読者たちは、この路線変更をどう思ったであろうか?

悪人は地獄に流すという物語も、どんでん返しが多用される展開も、大人ウケはよかったとしても、『なかよし』の読者は少女たちである。

『なかよし』で連載する以上、彼女たちにウケる漫画でなければならない。『地獄少女』は全9巻となかなか長期に及んで連載していた訳だが、読者層が読者層だけに漫画『地獄少女』に対する評価が聞こえてこないのが少々残念だ。

少女たちはこの漫画をどれほど読み、考え、愛していたのだろう…。

やはり、少女漫画向きではない

噂によれば『地獄少女』はなかなかアニメ企画が通らず、アニメスタッフが知り合いの『なかよし』の編集者に見せたところ連載が決定し、長じてアニメ化も決定したという。

つまり出版社や雑誌を選べた状況ではないということだが、『地獄少女』の『なかよし』での連載はやはりそぐわなかったのではないだろうか?

適材適所という言葉があるとおり、低年齢向けの少女漫画誌では『地獄少女』の長所は伸ばせないだろう。漫画にするなら、メディアとのタイアップが多く、女性読者も多いスクウェア・エニックスかマッグガーデンでの連載がもっとも適していると思われる。

『地獄少女』はパチンコ・スロットの長期稼働もあり、まだまだ伸びしろのあるコンテンツだ。閻魔あいも地獄少女として復帰したことだし、漫画ももう一息頑張って欲しいところである。

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