強くて、脆くて、美しい
「25時のバカンス」「虫と歌」など数々の短編漫画を描かれている市川春子さんの長編漫画である「宝石の国」。絵柄はかなり独特ですが、ベタ(黒い部分)が多いせいか影と光、静と動が表現されていて、とても不思議な雰囲気が漂う漫画となっています。市川さんの作品は、「意志があるかどうか人間にはわからないものに意志を持たせる」という点において他のファンタジー作品とは違うなと私は思います。宝石というものは外観が美しく、希少で、装飾品として人間が身に着ける鉱物と認識している人がほとんどで、「宝石に意志がある」なんて思う人はいないのではないでしょうか。仮に意志があると思っている人がいたとしても「宝石と私はお話ししました」なんていうことはできません。所詮宝石は石ころなので。でももし仮に宝石にも意志があって、どのように生きて、どのように感じ、どのように死んでいくのか。まず宝石には死という概念があるのかという無機物に対しての市川さんの疑問や想像を漫画として描かれているのではないかと思う作品でした。うまくまとめきれませんでしたが、そんな小難しいことを考えるぐらい深い内容だと思います。そんな思いにさせるのも出てくるキャラクター(宝石)たちがすごく人間味を帯びているからだと思います。自分の可能性とはなんだ、相手を思いやるとはどういうことなんだと人間でもわからなくなる問いに翻弄していく美しい宝石たちのこれからの展開に注目したいです。
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