見どころは麻雀か美少女か 『咲』考察
可愛い、強い 麻雀バトル漫画『咲』の考察
『咲』のキャラは可愛い。だが、「萌え漫画」だと云われると、それは違う!と声を張り上げたくなる。
『咲』のキャラは確かに可愛いが、決して可愛いだけじゃない。『咲』は麻雀を題材にした、れっきとした美少女バトル漫画なのである。
主人公・咲を筆頭に、「牌に愛された子」と呼ばれる特殊能力を持つ少女たち。そして彼女たちが目指す全国一万人の頂点。立ちはだかる強敵と、仲間との絆で乗り越える勝負。これをバトルものと云わずして何と言おうか。
次項からは、具体的に『咲』について考察していこう。
作中の最強は誰か?『咲』最強キャラと最高の高校を考察
『咲』の主人公である宮永咲は、嶺上開花を得意とする。カン材を集め、嶺上牌が何かもわかるという。このように、『咲』に登場する人物は、麻雀において特殊能力を持つキャラクターが多い。特に全国大会クラスになると、ほとんどが特殊能力を持っている。
そのなかでも作中最強とされるのが、高校生一万人の頂点にして咲の姉、宮永照である。少しずつ打点が上がる連続和了を得意とし、各高校の先鋒はチャンピオン対策が必須といわれる。
ではこのチャンピオンに勝てるキャラクターはいるのか? 勝てるとしたらその戦術は?
この考察こそが、『咲』
のもっとも楽しいところといえるだろう。
これは多くの高校が「先鋒にエースを置く」というセオリーを据えている以上、手痛い結果となりかねない。
何故なら先鋒(エース)でチャンピオンに敵わない以上、その高校はエースで点を稼ぐことが出来なくなり、結果として後続の選手たちが頑張るしかなくなるからだ。全選手が強い、という高校は少なく、おそらく臨海女子が今のところ(2016年2月連載時点で)それに該当するだろうが、その臨海女子も前年度は全国3位である。全国2位の千里山のエース、園城寺怜も宮永照には後塵を拝していることを考えれば、準決勝で圧倒的な強さを見せた辻垣内智葉ですら、宮永照には実力が及ばないといえる。
先鋒戦、チャンピオン宮永照に対し、東風の神・片岡優希と、阿知賀のドラゴンロード松実玄、そして辻垣内智葉はどう対抗するのか?
次鋒戦、突出した実力者のいない勝負を制するのは? 中堅戦、渋谷尭深は江口セーラの警告どおりオーラスの親となって、ハーベストタイムを連続で実らせてしまうのか? 副将戦、唯一の能力者であるメガンダヴァンに対し原村和は勝ち越すことが出来るのか?
運命の大将戦。深山幽谷の化身・高鴨穏乃の能力無効化は、咲、ネリー、淡にどれほどの影響を与えるのか?
そして、優勝するのはどこの高校になるのか?
このように、『咲』 は誰が最強か、どこが優勝するか先の展開を考えるだけで時間が潰せるという魅力がある。単なるバトル漫画、または萌え漫画ではこうは盛り上がれないだろう。能力設定の緻密さ、盤面の正確さ、伏線や点数計算まで、作者小林立はどこまで計算して漫画を描いているのか。全く感服を通り越して恐ろしくなるほどである。
麻雀という舞台において花咲く激闘。それこそが、『咲』最大の 見どころなのである。
(蛇足ではあるが、筆者は先鋒では清澄・片岡、次鋒では臨海女子・郝慧宇、中堅は白糸台・渋谷、副将は白糸台・亦野、大将は阿知賀・高鴨の活躍に期待している。準決勝ではあまり活躍できなかった人に点を稼いでほしい。判官びいきというやつである。)
広がる『咲』 の世界 本編の結末はどこまで?
では、そんな『咲』の結末はどこまで、というのが気になるところだ。
現在、『咲』には外伝的作品が三つほどあり、『咲日和』『咲ー阿知賀編』『シノハユ』がそれに該当する(※『立』は『咲』本編にどれほど関わるか、2016年2月現時点ではまだ不明)。
このうち、気になるのが『シノハユ』の展開。『シノハユ』は『咲』の20年前から物語がスタートし、ストーリーが進むごとに年を追っている。
『咲』の時点でプロになっている雀士たちの幼少期の活躍が見れるのが『シノハユ』の見どころであるが、気になるのが世界王者の話題が少しずつ明らかになっているところだ。
メンバーが4人も外国人選手の臨海女子の会話のなかでも、少しずつ世界レベルの雀士の名前が出されている。『咲』5巻のあたりで選抜(全日本ジュニア)の話が示唆されているあたり、『咲』は将来的に、世界戦も視野に入れているのではないか?と想像してしまうのは考えすぎだろうか。
だが、そうなるとまた例の『咲』考察のネタが増えるのである。全日本代表となると、全国大会の猛者たちが一つのチームになるのか? それともプロも交えるのか? 惜しくも序盤で敗れた沖縄の真嘉比や広島の佐々野のリベンジもありえる? …と、夢は膨らむ一方で、楽しくて仕方がない。
『咲』ファンとしては、全国大会、全国個人戦、国民麻雀大会、世界大会と全てやっていただきたいところだ。小林立はそこまで風呂敷を広げても、きちんと回収できるだけの構成力と才能があると信じている。
…だから、連載スピードをもうちょっと速くしてほしい、というのは贅沢がすぎるだろうか。
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