愛し狂う才能
曽田正人の描く孤高の天才、その1は、坂バカめ組の大吾、昴、針の振りきれた天才を描かせて右に出るもののない少年漫画家・曽田正人。彼の初期長編連載となる本作の主人公・テルは「自転車」で「坂をのぼる」、そんな誰しもがもつ体験を原点に、ロードレースの頂点めざして文字どおりのぼりつめてゆく。その男子、無口、無愛想、無比本作の魅力はなんといってもテルの強烈なキャラクターである。イケメンでもやれやれでもオラオラでもなく、アクティブでもクールでも熱血でもなく、やさしくもない。男子性…幼児性の派生語としてむりやりそんな造語をこさえるとして、男子性の塊とでも呼びたいような、憎たらしくも憎めないやつだ。テルが体現する男子性は、やんちゃな腕白小僧タイプのそれではなく、偏執的なまでに一途で、残酷なほど妥協を知らない、昆虫博士や人間時刻表のかもし出すアレの系譜だ。教室のすみで自分の世界に没頭しきって帰ってこない彼ら...この感想を読む
5.05.0
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