とりつくしまの評価
とりつくしまについての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
とりつくしまの感想
せつなくてやさしい魂の話
亡くなった人間が、「とりつくしま係」から、何かにとりつくことができる、何がいいか?とたずねられるところから物語がはじまる、短編連作集。一つ一つの話は独立していて、「何かにとりつく」というテーマだけが共通している。子供の野球の試合を見てあげたかった母親や、あこがれていた書の先生のそばにいたい、と願う女性など、さまざまな「心のこり」から、人の心のあやをときほぐすように、物語が描かれていく。モノにとりつくだけで、言葉を発することも、交流をはかることもできない、けれど、心のこりをどんなふうに「遂げて」いくのか…。幅広い年齢のキャラクターが登場することもあり、大人から子供まで読める、上質の童話風な側面もある小説だ。せつなくてやさしい魂たちの物語が、読後も胸に残る。