『男坂』と『バオー来訪者』から考える、「打ち切り終了の正解」とは? - 男坂の感想

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男坂

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『男坂』と『バオー来訪者』から考える、「打ち切り終了の正解」とは?

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目次

あまり考えられてこなかった「どういう終了が一番良いのか」

漫画が、商業漫画として他者(出版社など)からお金を出してもらって連載している以上逃れられないリスクの一つが「打ち切り」である。

打ち切りリスクに対する考察は多くあるが、そのほとんどは「どのようにしたら打ち切られないか」という、言わばリスク回避の話である。

それについて考える事も勿論大事なのだが、打ち切りは相対評価で決まる事も多く、そのためそれについていくら考え抜いた所で打ち切りを完全に回避することは出来ない。

打ち切りにはもう1つ考察すべき重要な要素があるのだが、それについて考えられたり、議論されたり、考察の結果が発表されたりする事はあまり無い。

なので今回は打ち切りで考えるべきもう1つの重要な要素「作品の打ち切りが決定した時、どう終了するのが一番良いのか」を『男坂』と『バオー来訪者』の2作品を例に考察していこう。

『男坂』と『バオー来訪者』の「打ち切り終了」

なぜ『男坂』と『バオー来訪者』なのか、それはこの2作品が当然ながら打ち切り作品であり、週刊少年ジャンプ連載で打ち切り漫画の中でもメジャーな方であり、終了の際に全く正反対の方針を取り、それがどちらも良い結果に繋がったからである。

『男坂』の終了は、有名を通り越して最早伝説である。知っている人も多いと思うが一応説明すると、坂を上っているシーンで終了。本当にこれだけ。まとめる気一切ゼロ。ご丁寧に「未完」とまで書いてある。知らなくて気になる人は「男坂 打ち切り」とでも検索すればすぐに見付けることが出来るだろう。

酷い打ち切り終了のように見えるが、と言うか実際酷い打ち切り終了なのだが、これが良くも悪くも話題になり、その結果2014年に30年越しの連載復活を果たした(もちろんそれだけではなく、作者の車田正美氏がヒット作を多く作りだし出版社に貢献した実績の影響も大きいが)。

一方の『バオー来訪者』は、もの凄く綺麗に終わった。それこそ読んだ人が元々短期連載で、予定通りに完結したと勘違いする程に。

連載終了後OVA化したりゲームにプレイアブルキャラクターとして登場したりしたのは、このような綺麗な完結で終了時に評価を落とさず、寧ろ上げたのが理由だろう。

「打ち切り終了の正解」とは?

では、『男坂』のようにブツ切りで終了するのと『バオー来訪者』のように綺麗に完結するののどちらの方が「良い打ち切り終了」なのだろうか。

個人的には、基本的にはブツ切りでも何でも、復活の芽を残しておいた方が良いと考える。

もちろん最終回単体の出来としては『バオー来訪者』の方が良いものだと私自身も思うが、それとは別に多くの打ち切り漫画が倣うべき方針は『男坂』の方ではないかと思っている。

理由の1つは単純にメディア化と復活のハードルの差によるもので、つまりメディア化の壁は高くそれに比べれば復活は簡単であるというだけの話であるが、私がそう考える理由はそれだけではない。

多くの読者は綺麗な完結を望むだろう。読者評価が高まりが次の連載に繋がる可能性もある。が、打ち切りであれ予定通りの短期完結であれ、綺麗に終わった作品にそれが理由で別の新たな展開が生まれるという事はあまり無い。

一方ブツ切りにしてでも描くべき事を残しておいて復活の芽を残しておく方が、商業的に良い方向に転ぶ可能性はまだ高い。が、当然ながら読者の批判にさらされる可能性は高くなるだろう。

この2つの方針は読者評価を取るか今後の展望を取るかの一長一短だが、個人的には「完結方法による評価は次の連載に影響しない」と考えている。

これは個人的な願望も含まれるのだが、結局いくら綺麗に完結させた所で次の企画が面白くなければ連載させて貰えないし、逆にいくら酷い終わり方で読者から批判されようと次に面白い企画を持ってくればまた連載させて貰える。それが事実だし、個人的にもそうあるべきだと考えている。

ならば復活の可能性を残しつつ新しい物にもチャレンジする方が、2つのルートが残る訳で賢いのではないかと思う。

逆に「打ち切り終了の不正解」は?

一番ダメなのは「何となく綺麗に終わる」ことだろう。まだ未解決の問題も多いし、当初の目的は何も果たせていないけど、章の終りに合わせて、決意表明なんかもさせちゃったりして、何となく良い雰囲気で終わる、ジブリ映画なんかでよくある「緑化エンド」(緑が広がる事で問題は解決していないけど何となく良い雰囲気で終わるエンド)のような終わり方が一番ダメだ。

実際には綺麗に終わっている訳ではないので終了時に評価を伸ばす事は出来ず、かといってある程度綺麗に終わってしまっているので復活の芽も摘んでしまっていて、両方の良い所を潰すだけの良い所無しの終わり方である。

ただこのような終わり方を選んでしまう作品がほとんどである。「打ち切りのショックで頭が回らない」というのもあるのかもしれないが、これはあまりに考え無しだと私は思う。

プロとして、生活のためにお金を稼いでいくという気概でやっていくなら「綺麗に終われないなら終わらない」というある種の潔さも必要だと思う。

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