ワシのマグカップが!!で爆笑
「新極道の紋章」を視聴した感想です。
色々な意味で、「ヤクザ物の映画はこれでいい」という感じがしました。
私はヤクザ映画は、あまり見たことがありませんでした。
今まで見たのは、北野武監督の「アウトレイジ」シリーズや、園子温監督の「地獄でなぜ悪い」くらいですかね。
ですので、Vシネマはこの作品が初視聴となります。
そんな私が見ていて思ったのは、すごく面白いし、ハマりそうだな、ということです。
ヤクザ役の役者さんはみんなカッコいいですし、ケンカのシーンも迫力があります。
また、ストーリーも単純明快で、作品の上映時間に対して無理のない構成で、見やすかったと思います。
暴力的なのに、所々コミカルなシーンもあって、面白かったですし、不思議な気持ちになりました。
人を殴っているシーンが笑いに変わっているのって、初めて見ました。暴力を振るっているのに、BGMは茶化しているという。
ちょっと不思議な世界ですよね。
テーマもすごくシンプルで、分かりやすく好感が持てました。
この作品の根本にあるのは、「ヤクザとしての矜持」であり、それ以上のものはありません。
奇しくも終盤に頼三が言った、「この世界には下らないものが溢れている」というセリフの通り、この作品には「ヤクザ以外のもの」が全く描かれません。
ヤクザさえいればいい。ヤクザさえいればいいんです。
暴力、金、権力。Vシネマは、この三つさえあればいいという、超シンプルな世界なんだな、と思いました。
それで制作しているスタッフも、出演者も、観客も納得する世界なんですね。
昨今の何でも盛り込みたがる、エンターテイメント作品に、真っ向から対立するようなその姿勢が私も好きです。
その方が筋が通っているというか、ポリシーを感じますよね。
ここで恋愛要素とか、絶対入れてこないじゃないですか。それでいいんですよね。
なんというか、今や映画も小説もマンガも、何かあったらネットで突っ込まれたり、悪口を言われたりする世の中じゃないですか。
そういう物に、絶対に負けないという感じがしますよね。シンプルなものは強いですから。
Vシネマは、そういった「何でも揚げ足を取っていく風潮」に、絶対にツッコミを入れさせない聖域のように見えます。
もう「ツッコむのが野暮」というか、「ツッコんだほうが負け」と思わせるというか。
そういう世界って、今の時代にすごく大事だと思うんですよ。
作り手が観客の意見に左右されないのは、大切な事ですし、今や難しい課題となっていますから。
そこに一本筋を通しているのが、見ていて気持ちが良かったです。
常識で考えるのはやめよう…。
まず、ストーリーの序盤で、倫理観や常識などを「常識で考えるのはやめよう」と思わされました。
出所してきた息子に母が言った一言は、「目立つ為の暴力はおしまい。大人の暴力は、全て金に変えるんだよ」という、「えっ、暴力は振るっていいんですね?!」というとんでもない内容でした。
私はもうここで、普通に考えるのはやめました。
一番衝撃的だったのは、主人公の頼三の「シャブのルートはこっちに回せ。今日からウチでやる」という、まさかの「覚醒剤販売宣言」でした。しかもそれを主人公が言っているという。
もう、絶対にVシネマ以外の作品では出てこないセリフですよね。思わず笑ってしまいました。
多分Vシネマでなかったら、苦情を恐れてこんなセリフは入れないですよね。
そういう「やってはいけないことを、簡単にやってしまう爽快感」が、見ていてすごくありました。
なんだか、よくマンガや映画に出てくるヤクザって、「いいヤクザ」みたいな感じで、シノギでは絶対に薬物を売らない、というパターンが多いのですが…。
もう、そういうベクトルを超えていますよね。
シャブは別に…みたいな。もう白米を食べるのと同じくらい、自然にシャブを売る世界。そこに何の罪悪感も感慨もない。
そうですよね、これがVシネマなんですよね。
Vシネマを見て、アウトレイジを考える
こういう作品を見ていると、やっぱり「アウトレイジ」は異端な作品なんだな、と思います。
話の展開はVシネマ調なのに、ヤクザを持ち上げていないですから。
「極道の紋章」がヤクザを肯定的に捉えているのに対して、「アウトレイジ」はもっと冷めた目線で見ていると思います。
どんなにカッコいいヤクザでも、きちんと悪党として描いているし、最終的に皆その報復も受けています。
Vシネマでは、ヤクザの任侠道みたいな部分を美化して描くのが様式だと思いますし、それはそれでいいと思うんです。
お客さんはそういう「お約束」を求めていると思うので。
ただ、それをぶっ壊したのは結構面白い試みだったのかな、と思います。
同じように任侠道に乗っ取って行動するキャラクターも、アウトレイジにはいますが、作り手はそこを美化しないですからね。
一貫してヤクザを、ただの犯罪者集団として扱っている。その冷ややかな視点が新しかったのかなと思いました。
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