名作になる独自の要素を持った仮面ライダー
これまでにない設定の斬新なライダー
イケメン俳優の登竜門といわれ佐藤健さんや福士蒼汰さんのキャリアのスタートとなった平成ライダーシリーズですが平成二期といわれる「仮面ライダーW」以降それまでにない新しいライダーを常に生み出そうとし続けアイディア不足が深刻な問題となっていました。仮面ライダーというくくりの中でヒーローを生み出すのに限界が見えているシリーズですがその時々で工夫しながら作ってきたシリーズでもあります。初代にあった改造人間というくくりは平成シリーズにはなくベルトを使い変身するバイクに乗るなどの一般的なイメージも「仮面ライダー響鬼」というそれまでのシリーズを否定するような変身にベルトを使わずバイクにもあまり乗らず必殺技もキックではないという仮面ライダーが出たことで恒例のものとは言えなくなりました。その他にも主に剣で戦う「仮面ライダーブレイド」、列車に乗る「仮面ライダー電王」など仮面ライダーについて何かイメージを持っている人ほど驚くであろう新たな要素を入れた仮面ライダーが生まれていきました。それらのシリーズは最初に発表されたときは驚かれますがおおむねファンは受け入れてきたからこそここまで長く愛される特撮シリーズとして続いてきました。あるていど受け入れられる土俵ができていたからこそ本作のようなバイクには全く乗らず車に乗る仮面ライダーというものが生まれたのです。
仲間がいらないように感じる
本作は特状課と呼ばれる部署に配属された主人公が刑事としてロイミュードが起こす事件に立ち向かっていくという流れで主にこの特状課のメンバーを中心として話が進みます。ロイミュードが起こす様々な事件を特状課のメンバーたちと協力して解決するというチーム物として描かれており刑事の仮面ライダーが一つのチームとして活動するのは他にない斬新なものでした。しかしチーム物としてはあまりうまく描けていたとは言い難い出来だったと思います。というのも本作の重要なガシェットであるシフトカー、変身に使うだけでなく自立行動し様々な特殊能力を使う非常に強力なものなのですが、強力すぎるので仲間がいなくてもよいのでは?と思ってしまいました。仲間とともに事件の証拠を探していても最後に見つけるのはシフトカー、敵を罠にかける仕掛けをするのもシフトカー、主人公が変身する隙を作るのもシフトカーと本来なら仲間との絆をより強くする展開であったり仲間の特性を表す場面であったりするところをシフトカーで解決してしまうのでどうしても特状課の存在が薄く感じてしまいました。おそらくは発売されるシフトカーのおもちゃを売るため特状課ではなくシフトカーを優先した結果なのではないかと考えられます。商業として売り上げを上げなくてはならない以上仕方のない判断だと思いますが少し悲しくなります。
そのうえ今作では途中参戦のライダーが「仮面ライダーマッハ」と「仮面ライダーチェイス」と二人もおりその二人は当然ストーリーの根幹に強くかかわっているため特状課の面々よりは多く出ることになりその分特状課の出番は少なくなってしまいました。この二人が出る前に特状課の見せ場を作ることができればよかったのですがチーム物としてはバランスが悪いものとなってしまいました。
変身の差文化
ドライブは他の多くの平成ライダーがそうであるように多くのフォームにチェンジします。それまでのフォームチェンジといえば平成初代である「仮面ライダークウガ」のように持っている武器が変わりそれによるアクションの変化が見どころになっていたのがほとんどですがドライブは基本的に持っている武器は変わらず力が増す「タイプワイルド」精密行動をとることができる「タイプテクニック」など変身します。見た目も特性も変わってはいるのですが、剣をふる銃を撃つなどは基本フォームである「タイプスピード」でもあったアクションなので見た目が変わっただけという印象を受けてしまいました。特に「タイプテクニック」は上半身がほとんど固定され頭に大きなパーツがついているのでアクションが非常にとりずらく出番も少ないものでした。
平成ライダーのお約束である最強フォームはとても斬新なもので車そのものと合体するものでした。バイクでなく車というコンセプトを全面に出しトライドロンを身にまとったようなデザインは独自の存在感を持っていました。ただ変身後の特性としてはそれまでの最強フォームと同様にそれまでのすべてのことができるという代わり映えのしないものでもう一つの特性のベルトさんと交代することができるという点もうまく表現できてはいませんでした。なにかベルトさんに交代したから特別なことができるというわけではなくより機械的な的確な攻撃ができるというものですがそれほどの差は感じることができず今まで見た最強フォームと比べて独自性があるとは言えないものでした。
いかしきれないどんより
ロイミュードの力によって起こされる「どんより」この描写はあまりうまく描かれてはいませんでした。周囲のあらゆるものを遅くしその中でロイミュードだけが自由に動けるというのはあまりにも強力でこれほどのちからを持っていてはどんなことでもできてしまうからです。だというのにやっていることはものを盗んだりと極めて限定的なことしかしないため大きな能力の割には小さなことしか起こさないあまり悪い奴ではないのではと思ってしまいました。後半になるとどんよりの描写はほとんどなくなりロイミュードたちの存在意義をかけた戦いとなっていきます。そのことからもほとんどの個体が使えるというものではなく一部の個体しか使えない特殊な力とするのが良かったのではと思ってしまいました。
特製の生かし方
本作の他のシリーズとは違う独自の要素は「主人公が刑事」という点と「乗っているものが車」という点です。このうち刑事という点は父親が死んでしまった事件の真相を解き明かすというエピソードで大きく取り上げられその犯人と対峙する場面は刑事ものの流れをくんだ王道のものとなっておりよく描けていたと思います。それ以外の例えば事件を起こした犯人のロイミュードを倒してしまうのは刑事としてどうなのかとは思いますが、おおむね独自の要素としてうまく盛り込めていたと思います。もう一つの車の要素はあまりうまくいかなかったと思います。そもそも仮面ライダーのバイクはほとんどが移動手段で作品にもよりますが印象的な使い方は一つのシリーズで一つあればいいほうなので独自のアクションはあまり見られないものです。その中で車を使うということは何か独自のカーアクションを見せてくれるのではないかと期待しましたがほとんど見られずやはり移動手段として使うのが主な見せ場となっていました。必殺技が車との連携のによるキックとなっていましたがCGで描かれており印象的な必殺技ではありますがそれ自体の数も少なくあまり目立つものではありませんでした。そのなかで車内から敵に襲われているのを見せるなどよいみせ方もあったので工夫次第では独自のカーアクションヒーローとなる作品だったのではととても惜しい作品だと思いました。総じて言えるのは車と刑事ではなく車ならば車、刑事ならば刑事と独自に打ち出す要素というものを搾りそのアイディアを煮詰めた作品ならばもっとオリジナルティや見せ方がわかりやすく見やすい作品になっていたのではと思います。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)