前代未聞のTRPGの漫画化
ある意味で奇跡の作品
本作は日本においてマニアックなジャンルであるTRPGの漫画化という奇跡のような作品である。原作になっているソードワールドTRPGは国産TRPGの中ではもっとも有名なものではあるが一般的な知名度はほぼなく実際にプレイしたことがある人はかなり甘く見ても百人に一人もいないだろう。国産ファンタジーの金字塔である「ロードス島戦記」もともとはTRPGで一度書かれたリプレイをもとにして書かれているのだがその事実もほとんど知られていない。実際プレイ人口の少なさからほとんど消滅しかかっていたほどだ。そんな中「へっぽこシリーズ」と題されるTRPGのリプレイ本が発売される。それまでになかった明るい挿絵のキャラクターたちによる軽快な冒険譚は瞬く間に人気となりソードワールドRPGは息を吹き返すこととなる。人気絶頂の中、挿絵の浜田よしかづ氏自らの手で漫画化されたのが本作となる
浜田よしかづ独自のアレンジ
本作は原作にはないオリジナルストーリーである。原作の雰囲気をしっかりと抑えながらも独自の要素も前面に出した浜田よしかづワールドと言える一冊となっている。具体的に言えばあきらかにセクシー描写が多くなっている。カラーページからしてほとんど女性キャラクターの半裸の絵であり本編の内容も半分以上裸の描写のある話になっている。そのために男性キャラクターの女性化や幼児化なども行われているのだがどれも原作のソードワールドRPGにあるマジックアイテムを使っておりよく見つけてきたものだと感心してしまった。原作はそこまでのセクシー路線ではないので原作そのままの漫画化を予想していた分ギャップに多少戸惑ったが、キャラクター達の新たな面が見れたと思えなかなかの良アレンジだったと思う。
TRPG史に残る一冊
本シリーズ以降様々なTRPGのリプレイシリーズが発表され同様に漫画化したシリーズもある。それでも今作ほどの人気を得ることはできなかった。今作を形作るGMの未熟ではあるがキュートなシナリオ、それを全力で楽しみ遊びつくしたプレイヤーたち、楽しんだ空気も余すことなく伝えた挿絵の魅力、すべてがそろっていたからこそ本作のような前代未聞の漫画も刊行されたのだ。ソードワールドRPGはその後新たな作品であるソードワールドRPG2.0が発表されたのだがその原動力になったのは今作の成功があったからであろう。その一翼を担った本作はまさにTRPGの歴史に残る一冊だといえる。
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