デビュー作としては◎次に期待!
ジャケ買いしちゃう表紙
作品名が気になって手に取り、表紙も綺麗だったのでジャケ買いした短編集。白を基調とした画面に暖色の人物を両端に配置するというデザインが洗練されている感じで素敵に思えた。谷川史子や金田一蓮十郎が好きな人は、おそらく目を留めてしまうのではないだろうか。
しかし、ページを開いた瞬間に、表紙よりは粗めの絵に少しがっかりしてしまった。デビュー作としては上手く、雰囲気もあるのだろうが、表紙に期待しすぎてしまったのかもしれない。
それでもオジさんを書かせたらなかなかの色気で、BL作品を描いているのではないかなと思うほど。同人誌で経験を積んだと言われても納得してしまう。実際はどうか分からないが、素敵なオジさんと目の座った男性はカッコイイ。
きっと作者の好みだな、好みが合うな、と勝手に思っている。
間をつくり、2人の空気を感じさせる
実際に読み進めて見ると、コマ割が面白かった。
2人の掛け合いが仲が良さそうでリアルなのはどの短編にも当てはまるのだが、1作目では、似たような構図のコマを並べて間を設けることで、リアルなリズム感まで生まれているような気がする。
しんみりしそうになる場面では必ず茶化すのも、言葉では表せない複雑な気持ちを、笑顔でのサヨナらにする為のものだったんだな、と後から思うと、ふわりと心が温かくなる演出ではないかなと思う。
もっと感情移入が出来る要素が増えて、物語から抜け出せないほどの感動が与えられる作品を、いつか描いて欲しい。
2人はどんな関係なのか?
短編集はどれも、2人の登場人物の会話がメインで、あとは脇役という分かりやすい構成。映画ではよくある、低予算で登場人物が少なくシーンの切り替わりも少ない作品に似ているので、映像化はしやすそう。
ただ、分かりやすい構成だからといって、冒頭で二人の関係を分かった気で予想で読むとほぼハズレる。会話の中で少しずつ、あれ?なんかおかしいぞ?と思わせておいて、ああそういうことね、とラストで必ずなるのである。それこそが作者の描きたい『面白い漫画』なのではないだろうか。
短編集だからこその会話メインの物語と、読者を思い込ませてからの急展開。デビュー作だからこその粗くて、みずみずしくて、奇抜な設定、ということか。
それがこの本だけのことなのかは、これからの作品を読んでみないと分からない。
出来ればもっと登場人物に感情移入出来る要素が増えて、心を揺さぶられて泣いてしまうような、そんな作品をいつか描いてほしい。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)