視聴者を虜にする魅力のあるドラマ
主人公の雪平を取り巻く環境から考えるアンフェア
まず視聴者を取り込む点として雪平の壮絶な過去が上げられるだろう。
父親が何者かに殺され、しかも犯人は捕まっておらず、一度は結婚出産し幸せを掴むも離婚。自分だったら耐えられるだろうかと考えてしまうその境遇に雪平の強さを感じる。
人一倍責任感が強い故に組織の中では孤立しているわけだが、そこまでアウェイな環境にするほどだろうか?と思う。恐らくそこには検挙率ナンバー1という成績の良さからくる妬みもあるだろう。雪平自身も一匹狼なタイプなため周りを敵に回してしまうのだが、それが原因で事件を引き起こしてしまっているとも言える。
雪平が周囲から白い目で見られる原因の1つに過去に容疑者を射殺したことが上げられる。警察内部だけではなく一般市民からも非難を浴びるわけだが、これはここまで責め立てられることだろうか?射殺してしまったのが未成年だからか?日本は海外に比べて警察でも銃を使用するところをあまり見ないし、ましてや発砲するなどニュースでも聞いたことがほとんどない。一方で海外だと事件を起こした犯人を取り押さえるために射殺した、といったことなどそう珍しくはない。射殺したとして反対デモが起きるわけでもない。日本と海外は別だと言われてしまえばそれまでだが、雪平が取った行動は容疑者の暴走を止めるための最良の判断だったのではと思う。たとえ容疑者が未成年であったとしても、犯罪者であることに変わりはないのだから。
警察の隠蔽工作と出世、面子
ドラマが進んでいくうちに明らかになったのが、過去に起きたひき逃げ事件の隠蔽工作だ。警察が事実を隠蔽するといった行為は刑事ドラマではよくある話で、ドラマだと分かっていても気分が悪いものがある。
ここでは事故を起こした犯人が代議士の息子で、その父親の圧力によって事実がもみ消されてしまったわけだが、それを承諾してしまう警察も呆れてしまう。承諾してしまった原因として個人の出世がかかっていたという。しかし、真実を隠してまで出世を望むことがあるのだろうか?隠蔽工作をするということは、すなわち表には嘘をつくことになる。警察官ともあろう人が絶対にやってはいけないことだ。
さらにこの隠蔽工作を表沙汰にしないようにする場面もあった。警察の面子を守るためにだ。今更自業自得とも言える事態に見ていて歯痒さを感じた。確かに事実と異なることを公表していましたとなれば警察の信頼はガタ落ちだろう。隠蔽しようとした際にこうなるかもしれないと先を読んでいればよかったものの、後の祭りである。現実の警察がこうでないよう願いたいものだ。
アンフェアとストロベリーナイト
個人的にアンフェアとストロベリーナイトは少し似ていると思う。
まず主人公が女刑事であること。性格も男勝りでサバサバしている。しかし、ふとした時に女の一面が見えることもあり、仲間からの信頼は厚い。
そしてどちらの主人公も辛い過去を持っていること。雪平は先ほど記述した通り、ストロベリーナイトの主人公の姫川は学生時代に婦女連続暴行事件の被害者であった過去を持つ。それぞれが過去の傷に苦しみながらも目の前の事件と戦っている姿はよく似ていると思う。
この2つの作品は比較的最近のドラマなのだが、女刑事を主人公にしたのは刑事ドラマの視聴者に新たな年齢層を取り込むためだったのではないかと思う。昔の刑事ドラマは男性が主人公のものが多く、男臭いドラマに興味がない人も多かったのではないだろうか?そもそも昔は刑事イコール男性というイメージが強かったが、今は女性の社会進出もあって女性が刑事というのも珍しくない時代になった。この2つのドラマは主人公が女性であることで視聴者の女性が少しでも親近感を持って観てくれることを狙ったのではと思う。
ドラマから映画へ、そこまで支持された理由とは?
この作品はドラマ放送された後、計3回映画化されている。ドラマだけならまだしも、映画化までされているのは視聴者の反応が良くなければなかなか実現されないことだ。ここまで支持されたのには理由があるのではと思い、いくつか考えてみた。
まず興味を持たれやすい主人公の辛い過去。他人の不幸は蜜の味というように、人は他人の不幸に興味をそそられる心理的なところがある。この少しドロドロしたところが視聴者を釘付けにするポイントだろう。
そして、周囲の好奇の目など気にすることなく自分を貫く雪平を応援したくなるところ。周りに合わせることなく単独行動に走ってしまっても、持ち前の鋭い考察力で犯人を推測していくところは関心してしまうため、さらに視聴者を虜にしてしまうわけだ。
さらになんといっても犯人が最後まで予想がつかない心理戦だろう。味方だと思っていた人物が次々と裏切っていく。騙された人も多いのではないだろうか?そうだったのかという展開が面白くて見入ってしまい、最後まで飽きない作りになっていたと思う。
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