芹沢鴨の父性 - 薄桜鬼 黎明録の感想

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薄桜鬼 黎明録

4.704.70
映像
4.90
ストーリー
4.70
キャラクター
4.50
声優
4.70
音楽
3.80
感想数
1
観た人
1

芹沢鴨の父性

4.74.7
映像
4.9
ストーリー
4.7
キャラクター
4.5
声優
4.7
音楽
3.8

目次

芹沢鴨の父性〜龍之介に対して〜

芹沢鴨は単なる悪人だったのか?私は芹沢鴨の姿にある意味父性を感じます。龍之介に対しての『しつけ』に関しても、新撰組への行いに関しても、芹沢はいつも何か『伝えたい意図』があって行っていたように思います。

まずは龍之介への『しつけ』についてですが、私は父親が自分の子供に行うようなしつけと同様のものだったのではと考えます。

江戸時代では(実際にはそこまで厳しくなかったとは聞きますが)何か武士に対して粗相をすれば切られる時代です。仁義を重んじる精神も強かったですから、父親は息子に対して早いうちから厳しく必要な礼儀や立ち居振る舞いを教えていたでしょう。

また更に10代前半の若者というのは奉公に出るのが当たり前だったと聞きます。その中で奉公先の亭主から辛く当たられるというのも、別段珍しい話ではなかったでしょう。現代とは違い、多くの人が若い頃からそのような理不尽な、辛い経験をして行く中で、世の中を渡り歩く方法を学んでいたのではないかと思います。

芹沢は世間知らずで道理を知らず、後先も考えていない龍之介を見て、このままでは生きていけないだろうと感じ、厳しい『しつけ』を行ったのではないかと考えます。

新撰組への父性と武士の魂

新撰組に対しても芹沢は父性を感じていたのではないでしょうか。やり方は正しくないにしても、近藤や土方に対して、お金の集め方や人の罰し方を身を以て伝えていました。

更に新撰組は、ある意味芹沢を共通の敵とすることで、京都所司代との連携を強めました。芹沢がいなければ繋がることもなかったお偉方とのパイプは、芹沢をスケープゴートにすることで更に強固なものになったのではと思います。意図してはいなかったかもしれませんが、次世代のため身を捧げる自己犠牲の父性を感じます。

また新撰組の内情を誰よりも知っている芹沢が、自分が粛清の対象になり得ることに気がつかなかったとは思えません。行動を改め、大人しくしていれば殺されない可能性もあったかもしれません。

しかしそれでも自分の態度を最後まで貫いたのには、武士としての矜持と、自分を慕って死んで行ったものたちへの弔いの念があったのではと思います。そこで行いを改めて仕舞えばこれまでの自分に嘘をつくことになる。自分の配下で殺されて行った新見も裏切ることになる。それが許せなかったのではないでしょうか。

芹沢鴨という男

芹沢は殺される直前、龍之介に『生きろ』と伝えます。これから自分が殺されることが分かった上で、龍之介にその言葉を伝えたことこそが、芹沢が龍之介に対して父性を感じていた証拠ではないかと思います。

また非情になりきれない土方に対して、自分を殺させることでその課題を克服させようとする姿勢など、最後の最後まで、自分の身で伝えられる教えを伝えようとしています。

しかしなぜそのような思いのある芹沢が、悪役として書かれてしまうのか?

それは物語の視点があくまで『龍之介』にあったからだと思います。

厳しい父性というのは、まだ子供の幼い時には、子供には伝わらないものです。なぜか分からないけれど、父親というのは理不尽に怖いもののように感じてしまうものではないかと思います。

そのような龍之介の視点から書かれたからこそ、芹沢の行いがただ傍若無人に映っているのではと思います。そして後半の芹沢の最期では、龍之介自身が精神的に成長したことで、芹沢の愛情に気がついたのではないでしょうか。

芹沢に同情の余地を残すためか、芹沢は病気であった、という設定が為されていますが、私はその設定は正直書いて欲しくなかったな…と思います。

芹沢鴨は間違いなく新撰組と龍之介に必要な人物だった。このアニメを見て、そのように思いました。

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