ルパン三世 天使の策略(タクティクス)夢のカケラは殺しの香りについての考察 - ルパン三世 天使の策略(タクティクス) 夢のカケラは殺しの香りの感想

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ルパン三世 天使の策略(タクティクス) 夢のカケラは殺しの香り

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映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
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ルパン三世 天使の策略(タクティクス)夢のカケラは殺しの香りについての考察

3.53.5
映像
2.5
ストーリー
2.5
キャラクター
4.0
声優
3.5
音楽
3.5

目次

ヒロインが野望に溺れる異色

ルパン三世に登場するゲストヒロインと言えば、カリオストロの城・特別編ルパンvsコナンなどでお馴染みの通りである。悲哀の運命に暮れながらも、決して取り巻く闇に溺れることなく、ルパンたちとの出会いをきっかけに大切な何かや邁進する強さを手に入れていく所謂性善説を用いたハッピーエンドが定番と言える。

しかしそんな印象を裏切るようなこの作品、たくさんの美女が登場するが全員が殺し屋。

ヒロインらしき女性は5人ほど登場するが、今回のメインヒロインはルパンを狙う毒の名手ポイズン・ソフィーであると考えられる。反米テロ組織という政治思想の色が強い組織において、明確に組織の一員となった経緯・心情が描かれているのは主力5人中彼女のみである。

もっともそのソフィーもルパンの温かさの折に触れ、最後の最後で人としての道を取り戻そうと一歩踏み出したものの、味方であったボスに口封じで殺害されてしまう死に様は、ヒロインにしてはあまりに呆気なく、哀しき運命の輪から逃れられることのなかった末路は、やはりルパン三世としては異色のものであるだろう。

とはいえ彼女の死に救いようがなかったかと言えばそうではなく、物語の序盤以降幾度となくルパンの抹殺に挑むのだが、最初の奪還および抹殺に失敗した際には、ルパンの用意した仕掛けによって亡くした恋人の思い出に浸っている。以降も殺し屋に向いてないと諭すルパンに対し、深く胸に刻まれたぶつけようのない悲しみと怒りを吐露している姿は胸を痛ませる。

また、中盤まではルパンの飄々とした態度と己の力不足への指摘に亡き彼と重ねて逆上する子供じみた姿があったが、ルパンと触れあうことで過去を打ち明けるなど、物語の進行と並行して成長していく姿は他の作品と同様と言える。

そうした闇に落ちてしまいつつも人間味を醸し出す姿が顕著に描かれており、報われない死に様ではあるものの、立派な一ヒロインの軌跡を構成している。

ストーリーには穴も多い

ヒロインたちが主人公を狙うというスタンスは異色なものの、敵組織の行動原理に関してはストーリーに絡みが少なく、特別視聴者に訴えかけるものではないシンプルなもの。反米などという政治色が強いテーマだと、とかく作者の思想が反映される場合も多いが、この作品に限っては付与された設定にすぎない。

前述のソフィーもそうだが、今作品はボスといい雑兵といい肝心な場面で詰めの甘さが目立つ。殺し屋としての有能さを強調しすぎるとどうしても憎たらしさが生まれ、今作品の敵の持つ人間味という特色が霞むのかもしれない。

が、ボスが組織の象徴である香水を普段から持ち歩いたり、次元でさえ岩場を移動する際に銃弾を紛失するなど、素人が知恵を働かせれば到底やらないような悪手のオンパレードなのは少々お粗末が過ぎる。クーデターなような小規模の民意運動レベルならいざ知らず、インターポールに目をつけられている巨大組織のわりに自覚を欠いている行動の数々はプロの殺人集団として説得力が薄い。

物語の構成からして敵の能力や手際をそれほど重要視するのは野暮かもしれないが、逆に言えばプロの殺し屋同士の戦いという楽しみ方は放棄せざるを得ないとも言える。

辻斬りカオルの存在

その中でひときわ興味を惹き付けたのが敵組織で唯一の邦人らしき辻斬りカオルというキャラクター。彼女のように若い邦人女性が反米組織に身を置くきっかけはあまり見当がつかない。ボスなように金の亡者のような描写もなければ、ソフィーのように大切な物を奪われた描写もない。

そのような全貌が見えないキャラクターで、これだけでは動機がつかめないが、五ェ門との最終局面の手前で真意は明らかになった。

人斬りの浮世離れした道理は、とかく俗世間に疎まれ理解を受けにくい。これは様々な作品において共通する世界観であり、多くは強い孤独に苛まれている。

確かにソフィーたちのようにお涙頂戴のような動機ではないかもしれないが、刀に支配されひたすら血を欲するようになった彼女にとって反米組織という絶好の人狩り場は活路だったのであろう。

そこに現れた同じく人斬りでかつ腕の立つ五ェ門と対峙することは彼女が長年望んできたある種の目標であったのかもしれない。オリジナルメタルなど興味は失せ、五ェ門を斬りたくて仕方ないという言葉に込められている。

あるいは元々これに関係なく反米意識やら資金がほしいやら目的が存在しているのかもしれないが、描かれてない以上こう考える他ない。

もしかしたら刀に対し恋心、あるいは子に向ける親心のような感情を抱いていたのかもしれない。散り際の、自らの血を刀に授けるシーンを見るに、単純に刀に心を支配されていただけとは思えない。まるで籠愛する自らの乳飲み子に乳を差し出しているような情景が溢れだしているように見えた。

全体的な評価

この作品は前述のカリオストロのような作品としてまとまりのあるものに比べて完成度は高くないが、キャラクターの感情表現、戦闘シーンのテンポも丁度いいので印象に残りやすい作品。

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