「母親」の責任を改めて実感したドラマ - 下流の宴の感想

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下流の宴

4.004.00
映像
4.00
脚本
4.50
キャスト
3.50
音楽
3.00
演出
4.00
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「母親」の責任を改めて実感したドラマ

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
3.5
音楽
3.0
演出
4.0

目次

高学歴=優秀、を安易に信じ込む愚かさを教えてくれた「反面教師」母:由美子

由美子は典型的な「教育ママ」。とにかく見栄っ張りで、学歴などのステータスで人を判断し、自分の考えが正しいとしか思わない視野の狭い母親。彼女自身は国立大学出身で、学力はあっても「頭は良くない」のであろうというのが私の見解です。それなりの大学に行けば視野が広がるというのは、結局は人によるようですね。

学歴の高さと経済力は比例するだの、格差社会だの、学歴が低いと人生ハードモードのように言われている昨今ですが、学歴だけしか重視しない母親だけにはなりたくないと教えてくれたようでした。

言動がとにかく底意地悪く、自己中心的な態度は原作では活字オンリーなのもあって、本当に腹立たしいのですが、ドラマでは黒木瞳がはまり役だったのと、どこかカワイイところを演じるのもうまく、コミカルな演出も手伝って、見ていて不快感だけにはならなかったのがよかったです。ドラマの最後では、珠緒のことを認めて元気づけるという温かいシーンも見られました。また、息子の翔が本当に努力が嫌いで無気力な子に育ったのは、自分の育て方のせいだとやっと気付いて、珠緒と「住む世界が違う」という理由で振った時には珠緒一家に頭を下げました。それでも孫の航一(まだ赤ちゃん)に「あのお姉ちゃんのように努力するのよ~」と言い聞かせて、結局は学歴、という認識を深めてしまったようにも見えるのが皮肉が利いていて面白かったです。

プライドの高さと努力が方向音痴になった母:満津枝

そんな由美子を育てた、翔たちの祖母:満津枝。医者の夫亡き後に娘2人を必死で働きながら育てた肝っ玉母さん。しかし、プライドの高さはピカイチでそれが悪い方向にいってしまい、娘たちに凝り固まった価値観を与えてしまいます。彼女が女手一つで子育てをしてきたのは努力家だったから、というのは事実だと思うのですが、努力していい大学に入る=優れた人間になって幸せになる、という安直な価値観を押し付けてしまったのが残念なところ。それが孫の可奈にまで影響しているところをみると、母親の価値観や育て方が重要なのがよくわかります。

しかしドラマの最後では、医大に合格して結果を出した珠緒のことを素直に認めて、祝っているところを見ると「努力した人は認めるべき」という筋は通しているので、ここは由美子よりは好感がもてます。さんざん見下しておいてこれか、という掌返しといえばそうなのですが。由美子が見栄から翔が医学部を目指しているという嘘を可奈の夫にしていたことも、あまりよく思っていなかったようですしね。由美子よりも芯はしっかりしている部分はあるのかなと思いました。

親の良い所に限って、子どもにうまく引き継がれないのかもしれません。悪い所はしっかり引き継がれたけど。

細かいことは気にしないが、大切なことはしっかり見つめている母:洋子

翔の彼女、珠緒の母である洋子。バツイチ、沖縄で居酒屋を経営しているという由美子たちからしたら「下流」もいいところであるステータスな彼女。しかし、この作品では最も温かみのある母親として描かれています。余貴美子もこれまたはまり役でした。

自分とは正反対の価値観を持つ由美子たちであっても、娘が本気で好きになった相手の家族ということから、失礼な態度を取られても謙虚な態度でいたという実はしっかりしている彼女。最後には医大に合格してやっと福原家に認められた珠緒は、翔に振られてしまい落ち込むのですが「これだけ人を本気で好きになった事だけは忘れないで」と笑って励ますシーンは母の偉大な愛を感じました。

珠緒があの学力の低さから、医大に合格してしまうほど努力して物事をやり通すいい意味での「プライドの高さ」はと根性の良さは、洋子の育て方が良かったからかもしれないですね。でもこれだけ珠緒が高い目標をもって結果を出したのは、由美子のおかげでもあるのです。もし由美子たちと出会わなかったら、珠緒も特に目標も持たず、ずっとフリーター生活を送っていたのかもしれません。

上流志向でデキちゃった結婚した母:可奈

翔の姉:可奈。上流志向が高く、高学歴・高所得の相手と結婚することを夢見て男受けのいい名門女子大に大学から入り、合コン三昧だった彼女。いわゆるハイスペック婚を狙っていたわけです。そんな彼女を原作者は「トッピング女子」と名付けました。土台がしっかりしていない(大した教養も魅力もない平凡な女子)にもかかわらず、見栄を張って自分を良く見せようと、トッピングばかり凝っているケーキのような女子ということです。狙い通りに、金融トレーダーの北沢と付き合い、デキちゃった結婚をしますが、しかし、北沢はうつ病になり夫の実家で同居することになります。都落ちした上に、姑と同居する羽目になった可奈は不満たらたら。本当に夫自身を愛していたのではないのだな、というのが浮き彫りになります。結局離婚し、子どもを連れて実家に出戻りします。シングルマザーとなって、その後どのように子育てするようになったのかは描かれていませんが、どうか自らの振る舞いを反省して子育てしてほしいと思います。

母という存在の責任感

このドラマに出る母親たちを見て思うのは、育て方のハウツーもそうなのですが、価値観がそのまま子に影響してしまう可能性があるということ。普段から子どもが見ていないと思っていても、自らも振る舞いには気をつけたいものです。意外と子どもは見ています。

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