漫画「いじめ」裏に隠された社会問題 - いじめの感想

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いじめ

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画力
1.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
3.00
感想数
1
読んだ人
1

漫画「いじめ」裏に隠された社会問題

2.52.5
画力
1.5
ストーリー
2.5
キャラクター
2.5
設定
2.5
演出
3.0

目次

社会的問題提示

題名通り、学校でのいじめを描いた漫画だが、小学生が購買しているちゃおに連載されているという点を考えても子供に向けた今社会問題となっているいじめについての意識を高めるために描かれているのは間違いなかろう。短編で色々な人が色んな理由でいじめられるこの漫画は小さい子がいじめの悪い点を理解するには良い教材だと思う。

だが、雑誌に載っているから、という理由では分かるものの、自分から人がいじめられる漫画を読む人がどれだけいじめを気にしているのか、という問題がある。実際いじめにあっている人は、漫画という現実から逃げることが出来るツールで最後に報われるとはいえ、また胸糞悪い気分になろうと思うことはないだろう。この漫画は問題としていじめがあることを認識させたとしても根本解決にはつながるようなことは何もしていないと言える。

実際こんなことが起こっているのか

ストーリー的にはただ単にスクールカーストが上の者が下の者をいじめるという比較的シンプルなものである。ただ、いじめ方があまりにも凄惨でこれが実際小学校や中学校で起こっているとは考えにくいだろう。これは作者がいじめを強調するあまり、脚色されてしまった部分があると思う。なので、リアリティーは皆無である。

そして、登場人物たち。いじめられる側はよく存在する普通の立場なのに対して、いじめる側はいかにもなお嬢様であったり、現実で出会うようなことがないような人だ。そしてありきたりに彼女の会社が倒産して今度は彼女がいじめられる。はっきり言って分かりやすいレベルのお嬢様であれば、そんなひどいいじめが起こるような治安の悪い学校には行かず、もっとちゃんとしたお嬢様学校に行っているだろう。

個人的にはあまりにもリアリティーがないため、ぞくぞくするような怖さも、不快に思うこともそれほどなく読み進めた。子どもたちにいじめの問題を認識させるために書かれているのにも関わらず、これを読んだいじめっ子たちは別に特に何も思うこともなく、いじめをやめることはないのでは無いだろうかと思う。また、実際はいじめで自殺している子も世の中に入る中、この漫画ではいじめたほうがいじめ返されたり、仲良くなって終わったりと、ハッピーエンドで締められているため、別にいじめをしても大事にはならないというような逆効果を与えているのではないだろうか。

いじめという重い題材なのに子供が読む理由とは?

子供は避けそうな漫画であるのに人気な理由はスカっとするから、というものであろう。ムカつくやつが成敗されて気持ちがいい、そんな気持ちから読んでいる子供が多そうだ。ただ、これは裏を返せば、嫌いなやつが不幸になって嬉しい、という被害者が過去にいじめをしていたという点はあるが根本的にいじめが最初に起こる理由に似通ったものになってしまっている。いじめを無くすために描かれている漫画がいじめ的思考を促していると思うととても皮肉なものだ。

また作者の五十嵐先生はたまにいじめ経験者から気持ちが楽になったという手紙をもらったとも言っている。確かにいじめ被害者からすると自分の体験に重ね合わせて、気持ちを楽にすることが出来るのかもしれない。そういう点ではこの漫画も利点があるようだ。

他の理由には自分がいじめられた時の対処法になるということだが、同じように考えるととても性格の悪い子供であれば、新しいいじめの方法を思いつく教科書にもなるだろう。いじめの問題提起をしているようで、新しいアイデアも与えてしまっているこの漫画、悪用しようと思えばいくらでも可能ではないだろうか。

女子のステレオタイプ

私がこの漫画を読んで思ったのは、あまりにも分かりやすいステレオタイプだな、ということだ。登場人物は基本女性。いじめるのは金持ちだったり、可愛かったり、賢かったりする女。いじめられるのは気の弱い普通の地味な女の子。これはあまりにも固定概念が入ったものなのではないか。この安直すぎる人物設定にはもう少し捻ることはできなかったのかと少し驚いた。これは小学生というまだ影響されやすい年頃の子たちに対して、こういうタイプの子はいじめをする、いじめられやすい、こんな性格だ、といらない固定概念を植え付ける原因になってしまっているのではないかと不安に思う。

あまりにも違和感を覚える絵

初めてこの漫画の絵を見たときに思ったのはあまりにも絵が下手だということだ。作風なのかもしれないが、顔の半分もあるような目になれず、人間の顔を見ている気にもならなかった。ちゃおやなかよしなど低年齢向けの漫画によくあることだが、あまりにもありえない顔のパーツの比率に違和感をどうしても感じてしまう。そしてあまりにも存在感のない眉。顔には目しか無いように思えてしまう。眼力を与えるためとはいってもここまでいくとただの昆虫にしか見えないというのが本音だ。

一個人の意見だが、作者の五十嵐先生はストーリーも絵もリアルに描けるようになればこの作品はもっと良いのではないかと思う。それに比べて、アニメの方は目の大きさが少しマシになっていて観やすかった。

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