真実を診ろ。シリーズ最高難易度のミステリー、この二人に解けない謎などない。
9人の不審死、脅迫状、隠蔽…シリーズ最後の難解ミステリー。
東城医大、国、自治体とが三位一体となり取り組む死因究明の大改革、国際Aiセンター設立シンポジウムを十日後に控える中、白鳥さんの唯一の味方であり上司を含めた医療関係者9人が別荘の地下室で死亡するという不審死が起こる。そして田口の元にも「三の月、東城医大とケロベロスの塔を破壊する」という内容の脅迫文が届き二つの事件の真相解明に挑むお馴染み凸凹コンビ。シーズン4から映画へと繋がる今回は白鳥さんの過去まで暴かれたりと復讐劇ともなっている。キャストも豪華で西島秀俊さん演じるジェネラルルージュ・速水先生率いる救命チームがまた出演というところも全シリーズファンとしては嬉しい所。その中で救命救急医になっていた松坂桃李さん演じる滝沢先生はシーズン2の時はただの研修医だったけれど今回は主要キャラ、慢性疼痛の特効薬として認可されたケルトミン。その副作用により薬害の被害に遭った遺族だったが「良い薬が出たら多少のリスクがあっても使う」その言葉に速水先生の下で働き立派な救命医になっていると感じさせられる。自らも医者になって考えが変わった滝沢先生と治験の段階で危険性が指摘されていたにもかかわらず薬害の隠蔽と母の顔を覚えていなかった医者が許せず復讐を考えた桐谷美鈴さん演じる別宮葉子、同じ薬害遺族でも医療現場を知った医者と隠された本当の真実を知った記者とではどうしても考え方が違う。別宮葉子がしたことは許されることではないけれど共感は出来ると思いました。
シリーズ第一作目から死因究明として出ているAiが今回もキーワード。今回は「リヴァイアサン」と呼ばれる大型MRIが活躍。そのおかげですぐに死因は分かったものの個性的キャラを演じさせたら最高の役者さん生瀬勝久さん演じる東堂教授が疑われ…そして今回も勿論所々で出る白鳥さんのアクティブフェーズ、グッチーのパッシブフェーズのやりとり。個人的にとても好きなシーンでもありいかにグッチーが簡単に人の心の隙に入り込むことが上手いのかが毎回よく分かる。そうして毎回人の心の闇に優しく触れ救おうとするグッチーですが片想いを抱いた相手が殺人犯、あまりに残酷な結末でも救おうとする、結局どこまでも光の存在なグッチーが初めて手を上げ声を荒げた「命を捨てるな!」と叫ぶシーンはやっぱりグッチーらしい。
劇場でも鑑賞しその後DVDも購入して地上波で放送される時も観ているほど大好きなバチスタですが、だからこそ映画ではなくケロベロスの肖像もドラマにしてほしかったなと思います。たった二時間だけに収めるには勿体無い…映画では少し駆け足で進んでいるような気がして物足りない。そして今回もAiが取り上げれられているのに島津先生が出て来ないのか、東堂教授は気が合いそうなのに。そこが残念でした。
現役医師によるリアリティー溢れる医療ミステリー、医師ならではの目の付け所。
田口・白鳥シリーズと呼ばれる今作の作者、海棠尊氏は現役の医師。外科医から現在は病理医となっている。第四回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作は「チームバチスタの栄光」それ以来数々の作品を書かれている。神話などがお好きなのか田口・白鳥シリーズとは他のタイトルでも神話などに因んだものが使われている。今作で活躍するMRI「リヴァイアサン」は旧約聖書に出てくる海の怪物の名前。タイトルの「ケロベロス」については映画の中でも説明されているように三つの頭を持つ地獄の番犬。現代社会の医療問題についても触れるように書かれた作品で医療現場の現状など全く知らずとも積極的に最近のことについて書かれている所がリアリティーがあり面白い。小説と映画・ドラマの設定は大きく異なるものの見比べてみるのも一興。
そして今回この「ケロベロスの肖像」が映画・小説共にファイナルとなっていますが、この小説が出版されてから数年後に田口・白鳥シリーズ真の最終章なる小説が出版されました。誤診疑惑の調査から始まるこちらも是非ドラマ化してみたら一層面白いのにと思うストーリー。ここでファイナルにしてしまっては寂しいシリーズ。共演者の方々も「ファイナル詐欺でまた作ってくれたら嬉しい」と仰っているほど、特に白鳥さん役の仲村トオルさんとグッチー役の伊藤淳史さんもとても仲が良いようですし…小説並びにドラマも是非続編をまたお願いします。
出会って六年、正反対の二人だからこそ。
2008年から始まった「チームバスタの栄光」からある意味二人は運命的な出会い(?)だった。人を傷つけ本音を引き出すアクティブフェーズを操る嫌われ者のゴキブリ厚労省と人の心を癒し受動的に話を引き出すパッシブフェーズを操るグッチー。一シーズン1からお互いに事件についての考え方が違いグッチーは追いていけないところが多すぎると悩みながらも白鳥さんの助手として後をついて行き、意見の違いから対立しても事件を解決したい思いは同じで仲直りをし時に弄ぶようにからかわれながらも次第と白鳥さんとの仲は相棒という地位を確立していき、結果としてお互いがいなくては事件解決の糸口は見つからなかった。白鳥さんも「チームバチスタの栄光SPECIAL~新たな迷宮への招待~」ではグッチーを人の良さだけが売りみたいな人だと言った同僚に対し笑って全く分かってないと吐き捨てる。一見ただのお人好きで涙脆く優しいグッチーの無意識の才能を見抜き、態度や言葉に出さずとも評価をしている。シーズン1から既に白鳥さんの鋭い推理とロジカルな思考能力の高さ、グッチーの人を信じる優しさと強さ、二人が絶妙にバランスを保ち合う。そうして他人を全く寄せ付けず信用しない嫌われ者の白鳥さんにとっては唯一信頼を置く相棒になっているということがシーズンを追うごとに明確になっていっている。結局白鳥さんもグッチーの優しさによって無意識のうちに変わっているのでは?と全シリーズを通して観ていると思うのです。一見相容れないような二人の息はまるで初めから決まっていたようにぴったりで最高のコンビとなっていく過程がこの作品の一番の魅了ではないでしょうか。
特に二人の絆が強まっていると知るシーンはやはりシーズン3、グッチーが宇佐見に撃たれてしまったシーンではないでしょうか。自分を庇って撃たれたグッチーに常に冷静な白鳥さんが泣きそうな表情を浮かべて焦り、目が覚めた時には平然としていたと嘯きながらも「うちのグッチーのことをよろしく」と本当に大事に思っているのだと分かる。そして話の終盤には初めて謝った白鳥さんに対し「らしくないな、白鳥さんがそんなちっちゃいことで謝るなんて」と言ったグッチー。このやりとりだけで初めこそお互いは相容れないと思っていた筈が今やお互いどれだけ信頼し合いなくてはならない相棒という存在なのだと強く感じられる。白鳥さんの過去を知って一層彼を支え必要としてくれるなら力になりたいと思っているグッチーの心情には優しさと見た目からは想像出来ない心の強さに白鳥さんも更にグッチーにだけは心を開いていき許している。そんなことが所々で垣間見えて私個人も全シリーズの中ではシーズン3が特に好きです。
そして白鳥さん役の仲村トオルさんとグッチー役の伊藤淳史さんも六年このシリーズで共演しただけに撮影時には全く同じシーンの打ち合わせでこの二人はもうそんなことで意見の対立はしないと言い切ったエピソードをインタビュー記事で見かけました。演じられている演者さんも六年という長い年月でこの二人の相棒としての相性や信頼関係についてそれほど深いものとなっていると分かるエピソード。思い入れ強い作品であると分かりま
二人の強い絆と絶対的は信頼、そして互いに正反対だからこそどちらかは必ず正解に突き当たる。この二人に解けない謎などない、きっと二人は出会った時から相棒。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)