ホラーミステリーを小さな神様たちがゆるく取り巻く
そこそこにいいことを言っている
実は神だったロキが、神界を追放されて人間界へやってきた。人間界で悪をがんばって落としていけば、いずれ神界へ戻してくれる。そんな理由から人間界で探偵としていろいろな事件を解決し、悪をさばいていくこの物語。第1話の時点で、ホラー…?っていうくらいの首切断事件が起こっており、どんな感じで解決するのかと思いきや…犯人はストーカーからサイコパスっぽくなってしまった人物で…結局自殺という形で犯人が死ぬという…追い詰めたのはロキだし、悪を落として結果的にこんな感じで死んじゃってセーフなの…??という疑問も出なくはありません。(笑)あまり描写が細かくはないのでそんなに怖くはないのですが、第1巻で解決しなければいけなかった事件はけっこう暗いお話でした。その後は事件解決というよりも、神々の争いみたいになっていくので、話の方向はずれていきます。そんな中でもなぜ読み進めていけたかというと、けっこういい言葉を使っているからですね。
かわいい女のコは神の創りたもーた芸術なの!
ロキの顔でさらっと1コマ言ってるだけのフレーズですが、そういうふうに考えると、女の美しさも捨てたもんじゃないなと思えてきて、前向きな言葉だなーととらえられます。また、
現実でも他人に対してどこかしら演技してるのに人間ておかしな生き物だよねー
ロキは曲がりなりにも神様。神様はそういう人間をみておもしろがっているのか憂いているのか…どちらかというと、ロキはそんな不安定な人間だからこそ創り出せるものを見てくれている気がするので、褒めことばかなーと個人的には考えました。その他、時々いいこと言うんです。
登場する神々は神話好きにはおもしろい
ヘイムダル、フレイヤ、トール、ウルド、ヴェルダンディ、スクルド、フレイ、フェンリル、ヘル…北欧神話の神々がこれでもかというくらい登場します。歴女(世界史バージョン)の人だったらすごい楽しいと思います。もちろんキャラクター設定は全然違うと思いますが、曜日の英語名の由来にもなっている人ばかりが登場してるので、知っているとなんかおもしろいですよね。この漫画の続編になっているラグナロクは、神々が死んでしまった戦いがモチーフになっているし、バルドルが新世界でよみがえるという神話からバルドルがオーディンのなり代わりとして選ばれているんだろうなということが推測できますね。また、ロキはそのラグナロクの最後の闘いでヘイムダルと相打ちになって死ぬ…そういった神話からちょこちょこ関係性のヒントを得たんだろうなと思います。なんでロキは選ばれたのかな?って読み始めは思っていましたが、北欧神話にのっとって考えると全然ずれがないです。ただ、個人的には、オーディンってもっとこう…ミステリアスで騎士!って感じで、最初に出会えるけど最強みたいなイメージなんですよね。スクエニが出しているので書いちゃうけど、かの有名なFFシリーズでも欠かすことのできない神ですから。それがなんかこうさらっと描かれてしまうと納得できないのと、もっと神々しくいてくれないとイメージが崩れるからやめてほしいなって思ってしまいます。
イラストは徐々にうまくなっている
あんまり絵は好きになれなかったですね。ロキのプレイボーイを表現するならもっともっとイケメン要素出しまくってほしかったです。小さくてもフェロモンが出ているとか、もう少し女に興味があってもわかりやすい。逆に言うと、神界にいたときに遊びまくったから、人間界では控えているということなのかもしれませんね。もしくは、神の力を封印されていることによってうまくできないのか…掘り下げるとだいぶ深くまで妄想が膨らみます。覚醒後もさほど変わらず、ほぼ人間だったので、残念でした。ヨルムンガンドもただの蛇じゃね…なんかあるだろうよ!それに、だいたい主要な神様たちが子どもなので…美しさの表現のしようがなかなか難しかったんじゃないかなと思いました。
ただ、神様だからこその自信って、けっこうかっこいいもので、イラストはさほど気に入っていないのにちょっと心躍ります。ロキはいいこと言うしね。はじめ雑だなと思っていたときもありましたが、進むにつれだんだん洗練されてきて、ヒロインもかわいくなってきてるし、いつの間にか慣れている自分がいました(笑)。どう見ても序盤の頭の悪い女がアンニュイな表情を身につけている…ロキもまんざらでもなくなっている…まさかの少女漫画的展開の深まりも予感しましたが、そこはあまり多くを語らずで終わっていきました。うん、これでいいです。
ストーリー展開的には子ども向け
全体のストーリーの進み方は子ども向けかなーと思います。アニメにもなっているし、楽しい目線で進んだほうがよかったのでしょうね。最初の1巻を読んだときに、これは大人なシリアス展開も期待できるなー覚醒後のロキも相当かっこいいかもしれないと思って読み進めたのですが、後半からは神々の争い(子どもの姿)なので、どうも深刻にはなりきらず、日曜日の朝のアニメみたいなノリで進んでいっている感じになってきたので、最終的なゴールがよくわからなかったです。そこが物足りなかったなと思いました。神話をもとにしてることは知っている人じゃないとわからないところなので、個人的には神話を知っているので楽しさもありましたが、大人向けではないなーという印象です。表紙はがっつり大人な雰囲気も出てるんですけどね。シンプルで小説みたいだし。なのに中身が…スクエニが出しているのに…っていう緻密な感じがない残念感も多少感じます。ラグナロク編では別雑誌に移ったらしいけど、それはまあ…大人の事情ってやつがあるとは思います。少しそのあたりの方向性の違いがあるのかしら、なんていう単なる憶測ですけど悪い考えもちらほらと出てきます。
どうにも主人公たちの魅力は少なめ
一番のネックと言えば、主人公たちの魅力がいったい何か?ということですね。ロキの不思議な能力?ヒロインの人間性?ロキは悪を落として自分が神界にかえるという目的の中で行動し、その中で人間を理解したり、楽しんだり、時には助けることもします。神の気まぐれといった感じがしますね。一方のまゆらはオカルト好きなだけでとりえがなく、根性があるのかないのかもよくわからない感じで…そんな彼女との組み合わせはやはりおこちゃまだなと思ってしまいました。1巻の時点でロキなりヨルムンガンドなり、いろんな人の背景はすぐ明かされていくので、もう少し引っ張ってもおもしろかったかもしれませんね。謎解きしながらばれていってくれたほうが気になって先をどんどん読み進めたくなるものなんですが…そういったこともないので。
探偵、警察、学校のクラスメイト、神様、いろいろな登場人物たちがいるので、すべての人物の細かい背景は少なく、あっさりとしているのがいいような悪いような。魔法のすごさももっとあったらうれしいのに、それも封印されちゃってるしなー…イケメンが子どもの姿になっちゃって欲求不満ライフを送っているが、それなりに楽しみながら少しずつ成長(?)していってます、という充実ライフをゆったり眺めるくらいの気持ちで読むとちょうどいいかもしれません。時々ロキの言う確信めいた言葉は、「確かに…」って思えるものなので、そこは楽しめますね。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)